コラム

 公開日: 2013-08-25  最終更新日: 2014-06-04

この世に彼岸を ─問題は何か、どこを目ざすか─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 9月はお彼岸を迎えますが、彼方にある岸とは、この世の苦を超えた安心の世界です。
 安心の薄くなった今の時代にあって、どなたも忙しく日常生活を送っておられることでしょうが、こうした時期には少々、立ち止まり、この世のと自分のありようをふり返ってみたいものです。

 お釈迦様は端的に説かれました。
「この世はお互いにままならない苦の世界であり、そうなっている原因は煩悩(ボンノウ)にある。
 病気を喜ぶ人はいないのと同じく、苦をもたらす煩悩は取り除かれるべきであり、その方法は明確である」

 私たちには、宿命としての四苦八苦(シクハック)があります。
 生まれる苦、老いる苦、病気になる苦、死ぬ苦、愛するものと別れる苦、憎いものと出会う苦、求め尽くせない苦、肉体や情報などを制御しきれない苦です。

 こうした〈ままならない苦〉の世界へ生まれたのは、過去の生き方に原因があったからであり、今の世で積んだ善業(ゼンゴウ)も悪業(アクゴウ)も決して消えることなく、次の生まれ方に深くかかわります。
 これが、因果応報(インガオウホウ)の原理です。
 だから、仏教は、「私がこう生まれたのは親のせいだ」とか「どうせ、死んだらそれまで」といった考え方とは無縁です。
 原因と結果のつながりには始まりもなく、終わりもありません。
 また、この世がままらなないのは、お互いが生きものとして、自分が生きることを最優先する〈生への渇き〉があるせいです。
 その顕れとして、もっともっと、と貪ったり、意志を邪魔するものへ怒ったり、身勝手で愚かしい考えを持ったりします。
 これが煩悩です。

 渇いた者同士がぶつかり合い、奪い合うことは誰にとっても嬉しくはなく、それは、病気になって嬉しい人がいないのと同じです。
 だから、お互いに安心を得るためには、渇きが克服されねばなりません。

 克服する方法として説かれたものをまとめたのが八つの正しい道である『八正道(ハッショウドウ)』や、六つの修行道である『六波羅蜜(ロッパラミツ)』などです。
 特に後者は、菩薩として生きるための方法として大乗仏教の根幹となっています。
 彼の岸へ渡る船には六本のオールがついており、それが、布施や持戒などの実践です。

 さて、今の世における苦の表れにはいかなる特徴があるでしょうか?
 一つには、人間の孤立化です。自由が最優先され、生活が便利になった結果、人は単独で生きられるという幻想が広がり、自分という城の城壁も門扉もどんどん頑丈になりつつあります。
 また、すべてを金銭に換算する資本主義が進み、人間同士の間でやりとりされるものが、どんどん商品化され、お金さえあれば何でも買える一方、システム化されずお金に換算されない人情や、ご近所さん同士の助け合いなどは消え去りつつあります。
 もう一つは、人間そのものの商品化であり道具化です。
 人間はどれだけの利を生み出すかという観点から価値判断をくだされて、交換可能な歯車となり、社会の中を浮遊するようになりました。
 労働は、生きつつ自分を成長させ、人間関係を深める全人格的ないとなみではなく、単に生きるための糧を得る手段となり、職場は生き生きした人間関係をもたらさず、人生をかけられる場ではなくなりました。
 また、あくなき資本主義は、子供までも〈欲望を引き出す対象〉としてお金を使わせようと躍起になっています。
 目や耳や鼻や舌や肌などの感覚をいかに刺激して欲望を起こさせるか、また、いかに感覚を慣れさせて依存させるかが競われ、人間はそうしてもよおさせられた過剰な欲をまかなうために、子供の頃から、より、お金を必要としています。

 こうした行きすぎた個人主義と資本主義の克服こそが現代における苦の克服であろうと考えています。
 それには何よりも〈左右されず、流されない人間〉になることです。
 そして、誰とどう交わりつつ生きるかという〈人と人との生きた関係〉にこそ、人間としての成長も、生きがいも、安心もあることを忘れないようにしたいものです。
『八正道(ハッショウドウ)』と『六波羅蜜(ロッパラミツ)』の教えは、必ずやそうした真の自己改革に大きな示唆を与えることでしょう。
 たとえば、「『四苦八苦』の一つである愛別離苦(アイベツリク…愛するものと別れる苦)に陥ったならば、『八正道』の一つである正命(ショウミョウ…規則正しい生活で正しいなりわいに生きること)を旨とせよ」という教えは、いかに人を立ち直らせ、救ってきたか、人生相談とご祈祷の現場にいる者にとっては、目の当たりにしてきた真実なのです。

 お彼岸には安心の世界へ渡る船についている6本のオールについて簡単な法話を行います。
 また、供養会に引き続いて「フォルクローレの会」を催す『法楽農園』においては、守本尊様へお詣りし、自他共に四苦八苦から救われるよう祈っていただきたいと願っています。
 一年にたった二回の大切な機会を生かし、御霊の供養と人生修行をされてはいかがでしょうか。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
村上春樹氏の「影と生きる」に想う ─影が反逆し始めた世界─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ