コラム

 公開日: 2013-08-27  最終更新日: 2014-06-04

霧をかかげて光を見ましょう ─9月の聖語─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 お大師様の言葉です。

「霧をかかげて光を見るに無盡の宝あり」(弘法大師)

(学び実践して迷いの霧をとり除けば、心いっぱいに光があふれ、そこに無限の宝ものが見いだせる)

 私たちの目も、耳も、鼻も、舌も、皮膚も、気持も、常に〈快〉を求めています。
 生きものはすべて、自分が生きることを最優先し、アメーバですら、食べものでないものはきちんと忌避し、食べものはしっかり摂り込み、生きます。
 生きられる方向に〈快〉があり、死ぬ方向に〈不快〉があります。
 それは、新鮮な食べものと腐った食べものが目の前にある場面を想像してみれば、すぐにわかります。

 人間だけが他の生きものたちと違うのは、〈快〉に限度がないという点です。
 よく引き合いに出されるとおり、飢えたライオンはウサギを見逃しませんが、満腹の場合は知らん顔をします。
 しかし、人間だけは違います。
 それは、イメージを持ち、膨らませられることに関係があるのかも知れません。
 一つの生命体として限られた肉体しか持っていないのに、イメージでは世界の王にもなれるのです。

 そこに冒頭の〈霧〉が生じます。
 〈快〉が自己増殖的に求められる「もっと、もっと」という煩悩(ボンノウ)は、見るものにも、聞くものにも、嗅ぐものにも、味わうものにも、触れるものにも、想起するものにも、執着心というフィルターをかけてしか対応させません。
 このフィルターこそが〈霧〉の正体です。
 濃い〈霧〉がかかった目に映る美しい桜の枝は折られ、可愛い女の子は連れ去られます。

 お大師様は、幕をかかげて隠されているものを見るように、フィルターを外してこの世を見れば、まったく違う光景が見えると説かれました。
 対象はすべて真実世界の光を放ち、自分の心にも光が溢れ、この世は宝ものに満ちた極楽になると説かれました。
 
 しかし、フィルターはなかなか外せません。
 過去に歩いた道は、実際にそうやっていのちをつないできたので、無意識のうちに、この先もこの道を歩めば「これからもこれで生きられる」という思いがあるからです。
 何かのおりに「これではまずい」と感じても、苦もあったけれど楽もあったし、「これでいいや」と思ってしまうのです。
 そこに落とし穴があります。
 8月25日、横浜国立大学名誉教授広瀬靖雄氏(70歳)は、妻の恵美子容疑者(61歳)に殴り殺されました。
 報道によれば、妻が夫の酒と女の問題に逆上して事件は起こりました。
 悲しいことに、お釈迦様が説かれた五蘊盛苦(ゴウンジョウク)と怨憎会苦(オンゾウエク)の典型的な表れです。
 夫は、70歳になっても枯れきっていない盛んな肉体を持っているがゆえに、ままならない状況に陥りました。
 妻は、怨み憎む相手から離れられないがゆえに、ままならない苦が生じ、それを整理しきれない状況に陥りました。
 私たちの「これでいいや」は地雷原を歩いているようなものであることを忘れないようにしつつ、被害者へも加害者へも合掌しましょう。

 さて、〈霧〉をかかげ、地雷原から脱し、光の世界に生きるには、当然、トレーニングが必要です。
 経典や真言を読誦することも、お盆やお彼岸の法会に参加することも、例祭にでかけることも、すべてトレーニングです。
 トレーニングというと、大変だと及び腰になるかも知れませんが、ウオーキングやリハビリや減量のための食事制限にかける熱心さがあれば、充分、心も変えられるのです。
 肉体を保つ方法はあらゆるメデイアを通じて岐(チマタ)に溢れ、心を掃除する方法は隅に追いやられているやに見受けられます。
 これで、私たち一人一人も、日本も大丈夫でしょうか?

 さっそく〈霧〉をかかげまようではありませんか。
 お大師様の御宝号(ゴホウゴウ)を念じて。
「南無大師遍照金剛(ナムダイシヘンジョウコンゴウ)」

 最後に『父母恩重経(ブモオンジュウキョウ)』の一部を意訳して記します。
 お釈迦様は、いかなる親孝行をしようと、仏法を伝えなければ真の親孝行にはならないと説かれました。
 その理由は、酒色に溺れるなどの煩悩がある限り、人いつ破滅的状況に陥っても不思議はないからです。
「よく聴いて欲しい。
 父母へ贅沢な暮らしをさせればそれで親孝行なのではない。
 もしも、仏法僧の三宝を信じてもらえなければ、まだ、親不孝というべきである。
 いかに、思いやりの心で施し、礼儀正しくふるまい、柔和な心で恥をしのび、積極的に徳を積み、心を平静に保ち、学問に励む人でも、一旦、酒に溺れれば、悪魔が忍び込み、放蕩、姦淫、忿怒、怠惰、乱心などに陥り、智慧ははたらかず、けだもののようになってしまう場合がある。
 皆さん、昔から、こうした成り行きによって、我が身を滅ぼし、家を滅ぼし、主君を危うくし、親を辱めてしまうのである。
(だから、煩悩を抑えて身を律することの大切さをくり返し伝えねば、本当の親孝行ではない)」

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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