コラム

 公開日: 2013-08-29  最終更新日: 2014-06-04

幻覚症状の中で書かれた『徒然草』

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 別役実氏の『とぜんそう』によれば、吉田兼好は、徒然草(トゼンソウ)という草がもたらす幻覚症状の中で『徒然草(ツレヅレグサ)』を書いたそうです。
 冒頭にある「つれづれなるままに」は、私たちが何となくボーッとしている状態ではありません。
 徒然草は平安・鎌倉・室町あたりまで教養人の書斎で嗜まれ、幻覚作用の影響によって仮名文字の女流文学が発達したと言われています。
 こうした観点から「つれづれなるままに、日くらし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。」を読んで、ようやく「あやしうこそものぐるほしけれ」と書いた状態が理解できました。
 ボンヤリと暇を持てあます状態で、一日中、硯の前に座り、頭に浮かぶとりとめもないことを書いているうちに、妙に気狂いじみた状態になってくるという成り行きが想像できなかったのです。

 ちなみに、第七十一段を読んでみましょう。

「名を聞くより、やがて、面影は推し測らるゝ心地するを、見る時は、また、かねて思ひつるまゝの顔したる人こそなけれ、昔物語を聞きても、比の人の家のそこほどにてぞありけんと覚え、人も、今見る人の中に思ひよそへらるゝは、誰もかく覚ゆるにや。
 また、如何なる折ぞ、たゞ今、人の言ふ事も、目に見ゆる物も、我が心の中に、かゝる事のいつぞやありしかと覚えて、いつとは思ひ出でねども、まさしくありし心地のするは、我ばかりかく思ふにや。」

(会ったことのない人の名前を聞いただけで、何となく顔つきが想像できるものだが、実際に会うとそのとおりだったためしはない。
 昔の話を聴く時は、話に登場する家も、人も、具体的に想像しているものだが、それは、私だけではないだろう。
 また、どうかしたおりに、今そこで人が話す内容も、そこで目にするものも、自分の心中では、いつか過去の日にもあったような気持がして、いつとは定かでないものの、あったことだけは確かだと思うのは私だけだろうか)
 この文章などは、「どうしてこんなことをわざわざ書き残すのだろう」と思ってしまいますが、幻覚症状における既視感ととらえれば、とても納得できます。
 それにしても、流れるような仮名文字にせよ、女流文学にせよ、徒然草をくゆらせながら訪ねてくる男を待っている才智に優れた女性たちにせよ、文化の根を考えさせられてしまいます。

 ところで、こんな現代句があります。

「天空と交信したり女郎蜘蛛」(白鳥光代)

 高い樹にキラキラと光る蜘蛛の巣を張り、獲物を待つ女郎蜘蛛の向こうには真っ青な空が広がっていたのでしょう。
 透徹した明晰さが幻想を飛翔させました。
 こうした句を読むと、対照的にうねる『徒然草』の世界が、より、ありありとつかめます。

 心と文字、文章について、腕組みをさせられた一件です。
 
 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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