コラム

 公開日: 2013-08-31  最終更新日: 2014-06-04

「静かなるやまとの人よ世のほまれ」に故開高健を想う

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 平成25年8月1日、宮城県慶長使節船ミュージアムのブログ『サン・ファン館』は以下の記事を載せました。

「先日7月25日、支倉常長の子孫である支倉常隆さん・スペインで俳句の指導も行う俳人の高野ムツオさんが当館を訪問され、スペインから送られた計12句の俳句を当館にご寄贈いただきました。」

 贈り主は、スペイン南部にあるコリア・デル・リオ市です。
 当地は慶長遣欧使節にゆかりが深く、ハポン(日本)姓を名乗る人がたくさんおられます。
 昨年、支倉常隆氏がスペインを訪れた際に、スペイン・コリア市立図書館のフェルナンド・プラテーロ館長をはじめとした3人の作品を託されました。
 帰国後、現地の日本人が翻訳したものを俳人の黛まどか氏が俳句へと仕上げ、高野ムツオ氏と共に色紙へ書きました。
 ブログでは以下の4句が紹介されています。

「地は裂けて 大和のみたま 瀕死なり(コリア市立図書館館長フェルナンド・プラテーロ)
 黒鳥の 日の本(ヒノモト)覆い 夜塞ぐ(コリア市立図書館館長フェルナンド・プラテーロ)
 静かなる やまとの人よ 世のほまれ(コリア市立図書館館長フェルナンド・プラテーロ)
 赤富士の 深きしじまや 黙示録(主婦アラセリ 75歳)」

 特に鮮烈なイメージで魂へぶつかってきたのはこの一句です。

「静かなる やまとの人よ 世のほまれ」

 何があろうと、感情の波がいかに大きく振れようと、すべてを受け止める静かな覚悟を持ち、人間としてのふるまいを外さない大和(ヤマト)人(ビト)の心性をこれほど的確に、そして、譽れを添えて表現してくださったことは、ほとんど奇跡に近いとすら思えます。
 私たちは、異国からこのように見ていただいていることを忘れず、いかなる難局にぶつかっても、思慮深く、冷静で、舞い上がらず、覚悟と節度のあるふるまいをし続けてゆきたいものです。
 
 この〈静けさ〉がはっきり顕れたのは故開高健著『ベトナム戦記』です。
 開高健は、昭和39年11月、相棒の故秋元啓一カメラマンと共にベトナム戦争まっただ中のベトナムへ行き、政府軍に同行して取材しました。
 そして200人いた部隊がわずか16人になった激戦をくぐりぬけ、戦争の真実をつかみました。

「彼らは肩をぬかれ、腿に穴があき、鼻を削られ、尻をそがれ、顎を砕かれていた。
 しかし、誰一人として呻くものもなく、悶えるものもなかった。
 血の池のなかで彼らはたったり、しゃがんだりし、ただびっくりしたようにまじまじと眼をみはって木や空を眺めていた。
 そしてひっそりと死んだ。
 ピンに刺されたイナゴのようにひっそりと死んでいった。」
「いったい彼らの内部の何者がこれほど異様にして強力な自制力を発揮させるのか、いまだに私にはわからない。
 兵士としては地上最低の彼らなのに肉の苦痛に対するこの忍耐力と平静は聖者をもしのぐかと思われた。」
「〝自制〟はたしかにアジアでもっとも発達した感情である。
 それは諦念、謙譲、自己犠牲あんどの形をとってあらわれる。
「貧困のどん底に生まれたベトナムの農民たちはいったいどんな育てられ方をしてこの純粋の真空状態に達するのだろうか。」

「くたびれきった、もつれきった、複雑きわまる、ベトナム人自身がよくわからないと告白するベトナム人の心のなかの、唯一でもっとも発火力のつよい燃料はゼノフォビア(外国人ぎらい)である。
 この火の爆発力をもっともよく察知し、把握したのがベトコンである。
 それはベトコンの血みどろの努力を待つまでもなく、アメリカ自身が日ごと夜ごと拡大し、深化しつつあるものだ。
 中国大陸におけるかつての日本の活動とまったくおなじことをアメリカは前線将兵の感嘆すべき忍耐や善意と無関係に続行しているように私には見える。
 ワシントンは負けることをきらい、無数の言葉を編みだしたあげく、敗北してしまった。
 かつての日本も負けることをきらい、無数の言葉を編みだしたあげく、敗北してしまった。
 敗北してようやく全国民は戦争の惨禍を〝理想〟の膜をやぶって知ることができた。
 アメリカは負けるが勝ちという知恵を身につけるには若すぎるのであろうか。
 負けたことがなく、異民族に踏みにじられたことがなく、戦争があるたびに豊かになった、何一つとして戦争を知らないアメリカは、誇りと偏見のために、ベトナム農民が建国当時のアメリカ人と同根の情熱にかりたてられてアメリカに反逆しているのだというところまで洞察できないのであろうか。」

 開高健も秋元啓一も、まぎれもなく「静かなる やまとの人」です。
 その静けさが生んだこの一冊は、ベトナム戦争を物語る不滅の資料として歴史に残ることでしょう。
 開高健はあとがきに書きました。

「とにかく私たちは見てきた。
 結論は読者におまかせします。」

 彼らはあの世から見ておられます。
 襟を正さずにいられましょうか。
 
 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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