コラム

 公開日: 2013-09-03  最終更新日: 2014-06-04

寺子屋の教え『実語教・童子教』を考える(その57)─蛍の光と窓の雪─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 江戸時代まで寺子屋などにおいて庶民の教科書だった『童子教』を読んでいます。

「俊敬(シュンケイ)は学文の為に
 縄を頸(クビ)に懸(カ)けて眠らず」

 俊敬(シュンケイ)という人は主たる書物に見あたらず、ブログ「寺子屋の教え『実語教・童子教』を考える(その54)」に書いた孫敬(ソンケイ)であろうとされています。
 ともあれ、その故事です。

 俊敬は、眠くなってカクンと首を垂れてしまわないよう、絞首刑のように鴨居からヒモをぶら下げ、眠りに対抗しながら学問に励んだとされています。

「車胤(シャイン)は夜学を好んで
 蛍を聚(アツ)めて燈(トモシビ)とす」

 南平の住人車胤は家が貧しいために灯火に用いる油を買えず、夏の夜は、薄い布袋の中へ集めた蛍を入れて本を照らし、学問に励みました。
 その博学ぶりは広く知られるところとなり、ついには高級官僚に取りたてられるまでになりました。 

「宣士(センシ)は夜学を好んで
 雪を積んで燈(トモシビ)とす」

 会稽の住人宣士は代々、農業の家に生まれ、貧しいために灯火を用意できず、冬から春になけては、雪を集めて雪明かりをたよりに勉学に励みました。
 後に、車胤と同じく、高級官僚となりました。

 団塊の世代にとっては、『仰げば尊し』と共に、『蛍の光』ほど子供の頃から長く親しんだ歌はありません。
 明治10年代初頭の頃、スコットランド民謡だった曲に稲垣千頴が作詞し、『小学唱歌集初編』に載せられました。
 戦後世代は二番の歌詞までしか教えられませんが、本当は4番までありました。 

「ほたるの光、窓の雪。
 書(フミ)よむ月日、重ねつつ。
 いつしか年も、すぎの戸を、
 明けてぞ、けさは、別れゆく。

 とまるも行くも、限りとて、
 かたみに思う、ちよろずの、
 心のはしを、一言(ヒトコト)に、
 さきくとばかり、歌うなり。

 筑紫(ツクシ)のきわみ、みちのおく、
 海山(ウミヤマ)とおく、へだつとも、
 その真心(マゴコロ)は、へだてなく、
 ひとつに尽くせ、国のため。

 千島のおくも、沖縄も、
 八洲(ヤシマ)のうちの、守りなり。
 至らんくにに、いさおしく。
 つとめよ わがせ、つつがなく。」

 日本が太平洋戦争に敗れてから、なぜ、三番と四番が禁止されたのかはわかりますが、ここでの問題は、「蛍の光、窓の雪」とは、まさに、車胤と宣士の故事による歌詞であるという点にあります。
 いかに貧しくとも、志さえあれば必ず勉学は続けられるという不屈の魂の物語は、敗戦と外国軍による占領、そしてウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(日本人の心へ戦争についての一方的な罪悪感を植えつけるための宣伝計画)の浸透にもかかわらず、子供たちを鼓舞してきました。
 地道な勉学とたゆまぬ勤労は日本人の心性そのものとなっており、敗戦からの奇跡的復興をもたらしました。
 子供の頃になじんだ『蛍の光』は、大人になればパチンコ屋や飲み屋の終了を告げる音楽として耳に入り、歓楽が終わるそこはかとない侘びしさを伴いつつ席を立たせ、区切の帰途へつかせます。
 永遠に続くはずがないつかの間の時間にきっぱりと区切をつけるべき時、これ以上ふさわしい音楽はないはずです。
 外国ではどうなっているか知りませんが、ここにも日本人の潔さや智慧などを感じてしまいます。
 これからも、車胤、宣士の物語と『蛍の光』が伝えられてゆきますよう。
 ──子供たちへ、そして、大人になってからも。

 今日の守本尊大日如来薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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