コラム

 公開日: 2013-09-05  最終更新日: 2014-06-04

寺子屋の教え『実語教・童子教』を考える(その58)─文(フミ)に意(ココロ)を入れる─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 江戸時代まで、寺子屋などにおいて庶民の教科書だった『童子教』を読んでいます。

「休穆(キュウボク)は文(フミ)に意(ココロ)を入れて
 冠(カンブリ)の落つるを知らず」

 昔、中国の宣帝の時代、河陽県に休穆(キュウボク)という人がいました。
 字(アザナ…昔の中国で用いられた実名以外の名)は周和(シュウカ)です。
 幼い頃から学文を好み、成人して帝に仕える身となりました。
 常々、歩きながらも書物を手放しません。
 ある時、強い風が吹いて頭に載せておいた冠が落ちました。
 でも、書物に集中していたので、それに気づかなかったとされています。

 何かに熱中していて時が経つのを忘れることなどは、誰にでも経験のあることでしょうが、かぶり物が風に飛ばされても気づかないほど自分を打ち込んでいるとは、やはり尋常ではありません。
 文中にある「文(フミ)に意(ココロ)を入れて」は、ほとんど没我(ボツガ)の状態だったのでしょう。
 今の日本では、こんなことをしていたら周囲に迷惑がられたり、交通事故に遭ったりするのがおちでしょうが、書物を手から話さないという精進ぶりと、集中力は、いつの世も手本になります。
  
「高鳳(コウホウ)は文(フミ)に意(ココロ)を入れて
 麦の流るゝを知らず」

 昔の中国、南陽葉(ナンヨウシュウ)に、高鳳(コウホウ)という人がいました。
 字は文通です。
 家業は農業だったのですが、昼夜を問わず読書に余念がありませんでした。
 ある時、妻が、田んぼの端へ刈り取った麦を干し、鶏に食われないよう高鳳へ見張りを頼みました。
 突然、雨が降り出し、麦が次々と流されていっても気づかず、読書を終えて帰宅しました。 
 妻に「麦はどうしたの」と問われ、ようやく見張りを頼まれていたことを思い出しましたが、後の祭となりました。
 やがて、勉学への思い入れが実り、名儒(メイジュ…秀でた学者)と呼ばれる名誉を得るほどになりました。
 
 ここでも、「文(フミ)に意(ココロ)を入れて」とされています。
 関心の対象へ自分の魂を移し込んでしまっているのです。
 これなら、対象はひとりでにこちらへ染み込んできます。
 たとえば、ある英単語を〈覚えよう〉とするのではなく、単語と一体になってしまえば、覚えたか覚えなかったかという問題はありません。
 そうなれば、きっと、単語にいのちが与えられ、単語はいつか、生きて使われる場面を得ることでしょう。
 大学受験の頃、私や仲間たちは、通称「豆単」と言われた小さな単語集を一ページづつ丸暗記しようとしましたが、A君だけは、丸善書店から取り寄せた洋書の評論集などを悠然と読んでいました。
 しかも、頻繁に辞書を引いている様子がなく、私などは舌を巻いていました。
 今になって思えば、彼は、文章へ入り、文意をつかむ力が抜群だったのでしょう。
 連なっている単語の一つ一つを調べて尺取り虫のように日本語として組み立てなおすのではなく、じっと眺めるているうちに、知っている単語と単語の中間が推察され、同じ単語が別の場面で用いられていることにより、今まで知らなかった単語の意味もどんどん見えてきていたのでしょう。

 それにしても、没我的集中を説く「文(フミ)に意(ココロ)を入れて」は、実に味わい深い一節です。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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