コラム

 公開日: 2013-09-08  最終更新日: 2014-06-04

自然農法の『法楽農園』における宗教と科学

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 当山の『法楽農園』活動に関して、「反科学は非現実的ではないか?お寺がなぜ、農園をやるのか?」というご意見が寄せられたので、当山が考える宗教と科学について少々、述べておきます。

 当山は宗教的信念に基づいて運営されています。
 農園は自然農法によって動かされます。
 だからといって、決して反科学を標榜するものではなく、むしろ、宗教と科学は交わらない二本のレールだけれども、互いをよく学びながら〈人類の運命〉という乗り物を安全によりよき世界へ運ぶ義務があると考えています。
 ダライ・ラマ法王は説かれました。

「厳密に言えば、仏教には、論理と敬虔に基づく理解より経典の権威のほうが重要だということはありえません」
「仏教では、何かを正しいと確認するときに照らし合わせるのは、第一が経験、次が道理で、経典は最後です」
「仏教は事実を受け入れなければなりません」
「どのようにしたら、科学の進歩による恩恵を、人間やその他の生きとし生けるものの真の要求に利他的な思いやりをもって奉仕できるものにできるか」

 私は仏教の一行者として、法王の見解にまったく同意しています。
 だから、宗教的視界をより深めるためにも、宗教活動を維持するためにも、そして何よりも、なかなか現実の壁を乗り越えられず当山へ足をはこばれる方々の疑問や望みへ的確にお応えするためにも、科学的成果と科学の眼がとらえる現実世界をよく観る必要があると考えています。

 当山が『法楽農園』という空間を創って行こうとしているのは、農薬や化学肥料から離れた世界で生きている生きものたちを眺め、気配を感じ、そこで採れたものを口にして、人間が自然そのものであるという実感やイメージを持っていただきたいと願っているからです。
 そして、私たちが常に守本尊様方に守られていることもまた、眼で見て、感じていただきたいと願っているからです。
 守本尊様方は、自然の移行に感得できる時間の変化に伴い、私たちの方位感覚と行動に伴い、いのちと心をお支えくださっています。
 自然と、その一部である私たちと、守本尊様方は一体なのです。
 こうした実感を持つことは、科学を冷静に観る眼を養わせるきっかけになります。
 日常生活の喧騒から離れてみると、科学の恩恵は何か、科学の危険性はどこにあるか、より客観的に観えてくるのではないでしょうか。

 この夏、当山の錦鯉たちが害虫にやられ危機に瀕しました。
 彼らを救ったのはプロの判断に基づく薬品の施与です。
 100キロの塩と二種類の薬品により、一晩にして彼らは地獄から極楽へと栖を変えました。
 秋に入り、腰を傷めた私は知らん顔して法務を行っていましたがついに安眠が破られ、旧知の医師の元へ駆け込みました。
 念入りに調べて注射をうち、湿布を施し、薬を与えていただいたおかげで、一日にして窮地を脱しました。
 もしも科学の力を借りなければ、鯉たちは全滅し、ご寄進くださった方へ顔向けできなくなったことでしょう。
 もしも科学の力を借りなければ、私の引退が早まったけも知れないし、松葉杖が手放せなくなったかも知れません。
 科学の力は実に、実に偉大です。
 ダライ・ラマ法王は、ご自身が病気になったおりに優れた病院で治療を受けられることが嬉しかったと率直に述べられただけでなく、亡命後30ほど経ったあたりではこうした確信も持たれるに至りました。

「科学が現代の世界を基本的に支配するのは必然です。
 そう知り、科学を求める動機が単なる好奇心から緊急を要する取り組みに変わりました。
 強い力である科学に取り組むことが、宗教上の使命にもなりました。」

 その使命は、科学の強い力を生きとし生けるもののために真に役立つ方向へ向けることにあります。

 6月8日付の朝日新聞は、認可されていない遺伝子組み換え(GM)小麦が米オレゴン州で発見され、日本や韓国やEUなどが米国産小麦の一部輸入停止へ踏み切ったと報道しました。
 米農務省の発表によると、除草剤に耐性を持つこの小麦はかつて米農業大手モンサント社が試験栽培したものの、消費者団体や輸出業者らの反対で認可が下りず、平成17年に開発を中止していました。
 GM小麦は「世界中のどこでも認可されておらず、一般的には種子の入手すら困難なはず」なのに、農場で自生し始めているとは恐ろしい事態です。
 いったい、どうやってGM小麦は発見されたのか?
 今、その農場や周囲にある農場の検査や行政的処置はどうなっているのか?
 日本では輸入した小麦の遺伝子検査をどうやって行い、国民の安全を確保しているのか?
 こうした情報公開が一日も早く行われねばなりません。
 福島の原発事故のみに世界の注目が集まっていますが、この問題もまた、決して目を背けられない世界的事件であり、人類を危機に落としかねない事態であると認識する必要があるのではないでしょうか。

 また、8月1日の朝日新聞は、アメリカ中西部のコーンベルトで遺伝子組み換え(GM)トウモロコシに耐性を持つ害虫の被害が広まっていると報じました。
 ネキリムシの駆除効果を持ったGMトウモロコシ(主に飼料やバイオ燃料、食品材料として用いられる)が、99年間は虫に負けないはずだったのに、10年も経たないうちにまたやられ始め、今では、約半数の農家が「安い保険」と考えて殺虫剤を散布するようになりました。
 殺虫剤の危険から離れようと人工的につくられたトウモロコシへさらに殺虫剤をかけるようになったとは、恐ろしいことです。
 虫に負けない生きものとしてのトウモロコシを人工的につくり、それでも虫がさらに強くなったからと、もっと遺伝子を組み替えるならば、私たちの住む世界はどんどん〈自然〉から離れて行きます。
 そこで、自然の一部である人間だけが、いつまでも変わらず、心身を健全に保ちながら生き続けられるとは到底思えません。
 99年の予定が10分の1に縮まった最大の原因は、耐性虫の出現を抑えるために通常のトウモロコシを2割栽培するという義務が守られなかったこと。
 あるいは、面積の2割以上、通常のトウモロコシを栽培すれば大丈夫であるという科学的判断に誤りがあったかも知れないこと。
 そして、GMトウモロコシがモンサント社から売り出されるまでは、大豆とトウモロコシを一年おきに栽培して虫の被害を防いできた農家が、「中国への輸出増加やバイオ燃料への転用で価格が上昇」したため、儲かるトウモロコシだけをつくるようになったことが指摘されています。

 経済優先思想とグローバル主義に導かれ、個人は輪作の智慧を捨て、企業は自然界にない生きものをつくって倫理の橋渡りを行い、上記の事件が起こりました。
 その根っこには、私たちが持つ〈人間の食糧を人間と同じく食べようとする虫たちの存在を許さず、人間だけが自然の恩恵にあずかろうとする〉心があります。
 私たちはこうした心のままで、この先も進むべきでしょうか?

 ダライ・ラマ法王は述べられました。

「皆さんは、私が科学のほかに園芸にも心惹かれていることをご存じかも知れません。
 園芸は、実際におこないと結果がわからず、また、うまくいかないことも多い作業です。
 入念に土を準備し、丁寧に種をまき、気を配り、苗に水をやる。
 どんなに時間をかけて世話をしても、どうしようもない他の事情から──とくに私が暮らすダラムサラでは極端に高い気温や湿度、大雨などがときどきありますので──すっかり無駄になってしまうことがあります。
 ですが、そうであるがゆえに、ほかの園芸をたしなまれる皆さんもおっしゃるように、自分の手で育てた植物が芽を出し、花開くことから得られる喜びには格別なものがあるのです」

 そして、科学者との対話による新たな発見にも同じような期待をしておられます。

 宗教的知性と感性も、科学的知性と感性も、私たちがまっとうに生き、まっとうな世界を創ってゆくために不可欠です。
 皆さんが『法楽農園』でひとときを過ごされ、結果的にそうしたものが生き生きと動き出すならば、これ以上ありがたいことはありません。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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