コラム

 公開日: 2013-09-09  最終更新日: 2014-06-04

寺子屋の教え『実語教・童子教』を考える(その59)─志は環境を克服する─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。









〈『法楽農園』では「神様」と呼ばれる方が井戸を掘っておられます〉

 江戸時代まで、寺子屋などにおいて庶民の教科書だった『童子教』を読んでいます。

「劉寔(リュウショク)は衣(コロモ)を織り乍(ナガ)ら
 口に書を誦(ジュ)して息(イコ)わず」

 昔、中国の晋に劉寔(リュウショク)という人がいました。
 字は子眞です。
 貧しい家に生まれたので、牛の皮で衣服を作り、稼業としていました。
 それでも学問への志が強く、手では織物をしながら、口では読んだ本を暗唱しているほどでした。
 やがて博学ぶりが認められ、志空という役職に就くことができました。
 世間の風俗に警鐘を鳴らす『崇譲論(ソウジョウロン)』を主張し、92才の長寿をまっとうしました。

「倪寛(ゲイカン)は耕作し乍(ナガ)ら
 腰に文(フミ)を帯(オ)びて捨てず」

 昔、中国の前漢の頃、千乗に生まれた倪寛(ゲイカン)は、孔安国という学者に仕えました。
 いつも耕作にかり出されましたが、作業中も経文を腰につけて離さず、いつも「これが私の鋤(スキ)である」と言っていました。

「此等(コレラ)の人は皆
 昼夜(チュウヤ)学文を好んで  
 文操(ブンソウ)国家に満(ミ)つ」
 遂(ツイ)に碩学(セキガク)の位に致る」

 ここまでとりあげた人々は皆、昼夜を問わず学問に励み、その志が広く世間に知られることとなって碩学(セキガク…広く深く学問を修めた人)と認められるまでになりました。

 劉寔(リュウショク)が主張した『崇譲論(ソウジョウロン)』がいかなるものであるかはわかりません。
 ただ文献には、この論をもって「世上の風俗を矯(タ)むる」とあります。
 矯という字は「矯正」の矯で、曲がっているものを真っ直ぐにすることと、わざと押し曲げることと、反対の意味を持っています。
 よく知られているのが「矯めるなら若木のうち」という言葉で「鉄は熱いうちに打て」と同じく、子供をまっすぐに成長させたいなら、まだどちらにでも曲がる若いうちであるという意味です。
 劉寔(リュウショク)は、きっと、牛を殺して剥いだ皮で人々の衣服を作るという作業を続け、そこで得たお金で暮らすという生の現実を伴った思索のうちに、浮薄な世間で曲がりっぱなしになっているものがよく観えたのでしょう。

 今年の松本清張賞(日本文学振興会主催)に輝いた山口恵以子氏は、早稲田大学文学部を卒業していながら有為転変の結果、食堂のおばさんとなり、ついに受賞作『月下上海(ゲッカシャンハイ)』を書き上げました。
 その弁です。

「大好きな料理の仕事に就き、身分と収入が安定して心に余裕が生まれた」
 そして、作家生活と食堂の仕事は今後も両立させるそうです。
「みんなが『おいしかった』と言ってくれるのが、何よりうれしいんです」

 ダライ・ラマ法王は、こう断言しておられます。

「仏教では、何かを正しいと確認するときに照らし合わせるのは、第一が経験、次が道理で、経典は最後です」

 ここでの「経験」は、劉寔(リュウショク)や倪寛(ゲイカン)や山口恵以子氏と同じく、自分で汗を流しながら〈生きる〉というナマの現実であるに違いありません。
 そこから、まっすぐな志が生まれ、現実によって志が鍛えられ、やがては現実をもまっすぐにする力を持つのでしょう。
 子供の頃は環境をいいわけにせず無心に学び、社会人となってからも学ぶ意志を持ち続けたいものです。
 まっすぐに、まっとうに生きるために。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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