コラム

 公開日: 2013-09-11  最終更新日: 2014-06-04

寺子屋の教え『実語教・童子教』を考える(その59)─枯れ木に花を咲かせ、古い骨に油をさして動かす

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。







 江戸時代まで寺子屋などで用いられていた『実語教・童子教』を読んでいます。

「縦(タト)え簺(サイ)を磨き筒を振るとも
 口には恒(ツネ)に経論(キョウロン)を誦(ジュ)し
 又弓を削(ケズ)り矢を矧(ハ)ぐとも
 腰には常に文書を挿(サシハサ)め」

(たとえ札を用い、筒を振る博徒稼業であろうと、
 いつも経文や教えを口にし、
 また、弓を作り、矢羽根をつけて矢を作る弓師であろうと、
 腰には学問の教材を帯びて学びなさい)

 簺(サイ)は、博打(バクチ)で用いる札であり、それを「磨く」とは、札捌きの腕を上げることです。
 筒もまた、博打でサイコロを入れて振る道具です。
 こうしたご法度の世界で生きる博打打ちであろうとも、学問は欠かさぬようにと説いています。
 また、弓矢を作る職人は、武器を通じて人の殺し合いにかかわっています。
 そうした生業(ナリワイ)に生きている人であっても、人の道を学ぶ意識は保つようにと説いています。

 学ぶ志さえあれば、いかなる環境にあっても、何をもって生きていても、必ず学び、それを自分の血肉とすることができます。
 そして、人の道を考えながら生きている人は、知らず知らずのうちに、周囲の人々へよき影響を与えもします。
 お釈迦様はそれを「お香の香りが移る」と説かれました。

「張儀(チョウギ)は新古(シンコ)を誦(ジュ)して
 枯木(カレキ)に菓(コノミ)を結ぶ  
 亀耄(キモウ)は史記(シキ)を誦(ジュ)して
 古骨(ココツ)に膏(アブラ)を得たり」

 魏の張儀(チョウギ)は、鬼谷先生に師事して深く学術をおさめ、ついには、諸侯へ軍法を説くまでになりました。
 ある時、楚の国の王様へ道を説いていました。
 折あしく宰相の璧(タマ)が見えなくなり、他国からやってきた張儀は犯人の嫌疑で数百回もムチで打たれました。
 璧とは、中央に孔のある円形板状の玉器です。
 やがて無実と認められ家に帰ったところ、妻に指摘されました。
「あなたは、なまじ学問などやって出歩くからこんな目に遭うんです。
 なぜ、こんな恥をかかされてまで、歩いているんですか?」
 張儀(チョウギ)は口を開けて妻へ見せ、私の舌はついているかと問います。
 妻はありますよと言って笑います。
 そこで、張儀(チョウギ)は一言、応えます。
「舌あらばたんぬせり」
「たんぬ」とは、足りるという意味であり、舌さえあれば世のため人のために役立てるから、それでいいのだと言ったのです。
「新古」の「新」は近代の新書であり、「古」は古い時代の古書です。
 流行の思想を語っただけでなく、古典について語っただけでないからこそ、張儀(チョウギ)の言葉には時代を動かす説得力があり、諸侯は耳を傾けたのでしょう。
「枯木(カレキ)に菓(コノミ)を結ぶ」とは、張儀(チョウギ)の目から入った文章が頭の中でさまざまに広がり、豊かな言葉となって口から出た様子を指しています。
 周囲の人々には、まるで枯れた樹木に花が咲き乱れ、たくさんの実をつけるように感じとられたのです。

 張儀(チョウギ)の活躍ぶりは、「英雄の弁舌、枯れたるを栄(サヤカ)し、一朝(イッチョウ)あってよく時の厄を救う」とされました。
 オリンピック東京招致委最終プレゼンにおける佐藤真海氏のスピーチも、それに先立つ高円宮妃久子様のご挨拶も、「英雄の弁舌」に類するのではないでしょうか。

 この張儀(チョウギ)の故事も、続く亀耄(キモウ)の話も、24才のお大師様が書いた日本初の比較思想論『三教指帰(サンゴウシイキ)』に掲載されています。

「亀耄(キモウ)は史記(シキ)を誦(ジュ)して
 古骨(ココツ)に膏(アブラ)を得たり」

 亀耄(キモウ)とは現実の人間ではなく、亀に毛がないことをもって儒学を学ぶ学者を指しています。
 お大師様は、儒者の徳を讃え、史記などの古典をよく学んだ人は、古くて動かなくなった骨が油をさされて動き出すように、人々の心を動かし、導くと書かれました。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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