コラム

 公開日: 2013-09-12  最終更新日: 2014-06-04

十倍返しの気っ風と蓮華の花 ─山口恵以子氏に想う─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 9月8日付の産経新聞へ掲載された「こっちは十倍返しだ!」を読んだ。
 小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した山口恵以子氏(55才)が書いた受賞に関する逸話である。

 賞金500万円をもらった氏は、その金額からしても、受賞作家がベストセラーを連発しているのを見ても、受賞作が相当数、売れるものと思い、「アブク銭」は「後生大事に貯金なんかしたら罰が当たる」とばかり、親しい人やお世話になった人のために大宴会を企画した。
 合い言葉は「半沢直樹が倍返しなら、山口恵以子は十倍返しだ!」である。

 ところが、初版1万5千部と聞いて、一気に青ざめる。
 売れる受賞作は、芥川賞と直木賞だけで、清張賞も普通は初版7千部、新人作家は初版4千部だという。
 ここからが氏の真骨頂である。

「そうだったんですか。
 早まったわ。
 せめて結納と同じ、倍返しにしときゃ良かった。

 しかし、今更後には引けない。
 受賞会見の言葉は選挙公約も同然。反故(ほご)にしたら女が廃る。

 と言うわけで、さしもの500万円も怒濤(どとう)の十倍返し攻撃の前に、断末魔の様相を呈しつつある。

 ざま~見ろ!…って、誰が?

 それにしても、松本清張賞。

 あの賞金500万円は、横山秀夫さんや山本兼一さん、葉室麟さんみたいな立派に育った鶴が、機(はた)を織って恩返ししてくれるのを頼りに、捨てるつもりで20年間も出し続けてくれた金だったとは、夢にも思いませんでしたよ。

 それを思うと文芸春秋の平尾社長の顔が慈母観音に見えてくる。
 ありがたや。
 今度お目にかかったら拝んじゃおっと。

 多分「まだ早いよ!」と仰るだろうけど。」

 自称〈社員食堂のおばちゃん〉の心意気とテンポのよさに圧倒され、初めての書き下ろし時代小説『邪剣始末』(平成19年発行)を読んだ。
 母親を埋葬する薄倖の少女「れん」へ「先生」は言う。

「……れんか。
 いい名だ。
 れんというのは蓮の花だ。
 この生けに咲いている大きな、きれいな花が、みんなお前なのだよ。」
「蓮の花は強くて太い水茎を持ち、泥田の中でもこんなに美しい花を咲かせるのだ。
 ただ美しいだけではない。
 その根はおいしい食べ物になる。
 だからお釈迦様は、その敷物に選ばれて、蓮華の座にお座りになったのだよ。」
「れん。お前は人より辛く哀しい目に遭ってきた。
 だから、人より強く優しくなれるはずだ。
 お前はお釈迦魔に選ばれた、尊い蓮の花なのだよ。」

 蓮の花のいわれについてこれほど心を込めた文章に出会ったことはない。
 自分は、母親と同じく泥まみれでのたれ死にするはずだと思っていた少女の心が一気に転換する。

「その時、れんははっきりと心に誓った。
 この人のために生きよう。
 この人のために死のう。
 あたしは、この人のためならどんなことでもする。」

 こうして、新内流しをしつつ邪剣の始末にかける主人公「おれん」は生まれた。

 氏の心にも、蓮華の花が咲いているのではないか。
 活き活きしたテンポと気っ風は、その強さと優しさに後押しされているのだろう。
 だから、作中人物は、悪党までもが救われる。
 そのうちに『月下上海』も読んでみたい。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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