コラム

 公開日: 2013-09-13  最終更新日: 2014-06-04

戒名料やご葬儀料の決め方 ─〈相場〉へ逃げず、人生の大事については自分で考え判断しましょう─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 Aさんが人生相談にご来山されました。

「親族が亡くなり、一緒にお寺へでかけたら、すぐに戒名料の話になりました。
 私は、人が亡くなれば先祖代々のお寺へ頼み、お寺から言われるとおりにするものだと思っていましたが、住職からお金が請求される様子と、その金額に驚きました。
 また、帰り道で、親族から、こんなにとられる戒名って何なんだという話が出て、そう言えば何なんだろうと始めて疑問を感じました。
 私は定年までもう少しのサラリーマンですが、これまで、同僚の誰とも、戒名の意味について話題になったことがありません。
 妻が重い病気に罹っていることもあり、思い切ってご相談にでかけてきました。
 戒名をつけて人を送るとはどういうことなんでしょうか?」」

 まず、戒名とは、戒律と共に授かる名前であり、それは、この世に生まれた時に親が名前をつけてくれるように、あの世の旅人になる時に、親であるみ仏がつけてくださる名前であることをお伝えしました。
 だから、一介の行者である僧侶などが決められるはずはなく、祈るご本尊様から降りたものをお伝えするという戒名の決まり方についてもお伝えしました。
 こうして授かる戒名の意義からしても、あくまでも自発的でなければならない布施の本義からしても、当然、戒名料の決めようなどはありません。
 親が我が子の未来に幸せあれと願って名前を考え抜き、与えてくれる恩義をお金に換算することはできません。
 同様に、み仏から降りる戒名をお金に換算するなど、冒涜と言うべきです。
 戒名を受けた方のご家族が、その意義と価値を皆さんでよく考え、疑問があればそれに携わるプロである住職へ質問し、財布の状況なども考慮してご本尊様へお納めくだされればよいのです。
 
 Aさん。

「意味はわかりましたが、金額はあまりに漠然としていて、考えようがありません」

 お寺が請求するものではありませんと申しあげると、よく、でも、わかりませんので……、と言われます。
 わかりにくいのは当然です。
 なぜなら、生まれるのも死ぬのも一生に一度なので、それにかかわることごとは、私たちの日常生活とかけ離れているからです。
 車を一台買うのなら、あるいは家を一棟建てるのならば、その金額については、さまざまな面から比較して「これくらいにしておこう」という感覚がはたらいても、名前を決めたり、戒名をもらったりする行為には比較するものがなく、感覚がはたらきにくいのです。
 だから、戒名料や葬儀代について考えるヒントとして、〈意識して日常的なものと比べてみる〉ことをお勧めしています。
 たとえば、自分にたった一つの名前をつけ、育ててくれた親の恩を思い死後の安心を願う時、み仏へ託するにふさわしいお布施は、自分にとってテレビ一台分なのか、給料一ヶ月分なのか、あるいは車一台分なのか、と考えてみることです。
 親の恩に報いるのは育てられた自分です。
 考えて判断できないはずはありません。
 もしも軽々に周囲へ世間の相場を訊いて終わりにするならば、親の恩を軽々に扱っているのかも知れません。
 そもそも、上記の本意からすれば、戒名やご葬儀のお布施に〈相場〉などありはしないです。 

 Aさん。

「よくわかりました。
 こうしたことを考えたことがないのは恥ずかしいと思います。
 でも、仕事に追われているだけの毎日ですから……」

 それはそれで結構であると申しあげました。
 死後の心配などせず、まっとうな仕事に就き、夢中ではたらける国に生まれたのはありがたいことです。
 何も、皆さんが皆、朝から般若心経を唱えなくても大丈夫です。
 ただし、家族や親しい人、あるいは大切なペットなどとの別れは誰一人、避けられません。
 自分の〈その時〉がいつ訪れるかもまた、誰にもわかりません。
 だから、自分や家族などが大病に罹ったり、死を身近に感じたりした時は、そこで日常生活の疾走を弛め、おちついて人生をふり返り、死と向かい合う必要があります。
 もしも何も考えないままにサラッと流してしまえば、結局、心の準備もなく〈その時〉を迎え、自分があたふたするだけでなく、周囲もまた、あたふたとことをはこぶしかなくなります。
 これでは、真剣に生きたとはいえない人生になりかねません。

 Aさん。

「あのBさんが、お寺の選び方について書いていました。
 こちらの娑婆から、あの世行きの船に乗る時、どの船を選んでも結局、着くところは同じお釈迦様の世界だから、宗派やお寺は気にしなくてよいそうですね」

 とんでもありません。
 どこの船着き場から、いかなる船に乗ってどういう航路をたどるか、また、向こう岸がどうなっているかは千差万別だからこそ、さまざまな宗派があり、お寺があります。
 徒歩か自転車かバイクか車か電車か飛行機か、交通手段はさまざまです。
 また、運転手や操縦士もさまざまです。
 この世もあの世も多様です。
 有名人が書いているからと鵜呑みするのはいかがなものでしょうか。
 そもそも私たちの脳は多様性の中でしかはたらくことができません。
 赤い花も白い花も青い花もあり、その多様性を区別するところから私たちの感覚世界も、思考世界もはたらき出すのであって、のっぺらぼうのイメージは何も想像させず、何も創造できません。
 こうした「どうせ皆、同じ」という議論ほど、私たちから好奇心や興味や研究心を奪い、人生の発展や深化の機会を奪うものはありません。
 私たちはラーメン一杯、食べようとする時でさえ「どこへ行こうか?」「あいつからC店が旨いと聞いたことがある」「やはり、あそこがいいか」などと知識や記憶を総動員して考えるではありませんか。
 人生の大事についてだけ思考停止した方がよい理由はまったくありません。
 船を調べ、船頭を調べ、船着き場や航路を調べ、向こう岸はどうなのかと想像をはたらかせ、できれば確信を持ちたいものです。

 企業戦士として戦い抜き、あまりに早い死を迎えたDさんと対話したことがあります。

「私はろくでもない人生を送ってきました。
 どうせ、地獄へ行くのでしょう。
 でも、今となれば、周囲へは何もかも感謝ばかりです」

「仏法によれば、私たちのあの世がどうなるかは、前世からの因縁と、この世で積んだ善業(ゼンゴウ)や悪業(アクゴウ)とによって決まります。
 ただし、ダライ・ラマ法王は、最も強い影響を及ぼすのは、より、死へ近い時期の業であると説かれています。
 また、より、強く意識することが、より強い影響を及ぼすそうです。
 だから、Dさんの心が今、感謝に満ちている以上、安心へ向かっているのは間違いないと思います。
 また、過去を懺悔しておられれば、悪業の悪影響を抑えられるはずです。
 私たちは、パソコンで上書きするように過去をなかったことにできはしませんが、心がけ次第で業の影響力はコントロールできるのです。
 私もかなり悪業を積みましたが、Dさんと同じく日々、懺悔と感謝ばかりです。
 だから自分の行く先については、何の心配もしていません。
 心にかかるのは唯一、子供たちと日本の未来です。
 そのために、遺すべきものを遺す準備を進めています」

「──そうですか……」

 Dさんのお顔に穏やかな光がさしました。

 自分で考え、よく学び、納得を得ること。
 安心は必ずその先に待っています。

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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