コラム

 公開日: 2013-09-21  最終更新日: 2014-06-04

認知症の妻を殺した夫のこと

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 9月20付の産経新聞によれば、平成25年2月15日、山形県鶴岡市の自宅で介護していた認知症の妻(79才)を絞殺し、自分も自殺しようとした河崎直記被告(81才)の裁判が山形地裁で行われ、矢数昌雄裁判長は懲役3年、執行猶予5年の判決を言い渡した。

 娘夫婦らと8人暮らしをしていた被告は、体調不良となって食事を摂れなり、犯行に及んだ。
 判決文である。
「自分も介護が必要になれば、家族に迷惑が掛かると思い込んで自殺を決意し、妻を道連れに使用と考えた」
「介護の大変さを知るがゆえの思いがあり、一定程度同情できる面がある」
「家族や地域社会が被告を受け入れる意向を示している」
 裁判長の説諭である。
「殺害は許されることではないが、久子さんの分までひ孫の成長を見守り、供養してください」

 近隣住民たちが減刑を求める嘆願書を寄せていたという。
 被告は毅然とした人物に相違ない。

 彼にこうした日は訪れるのだろうか。
 76才になった故吉野せいの『私の一九七五年』である。

「歩き通したと思い込んでいる住み古した村の道でも、どこかにまだ自分の足跡のしるさない未知の細道にふと出くわすものだ。
 私は霜じめりした山のはざまの細径が好き。
 楢や山もみじや松葉や萩の落葉が重なり合って吹き寄せられていたり、下積みは黒っぽく腐りかけていたり、その上にどこから降り落ちてきたか、まだ色あせぬ山どうだんのこまかい紅のちぎれ葉が、まぶしく散らした紅しょうがのように、ぱっと眼を射られたときなど、なんとはなく生きていると思う。
 生きているとは、こんなひそやかなことなのだと思う。
 そんなときに限って見上げる空が、不気味なほど冴えているのも不思議なことだ。
 胸の張るうれしいことだ。

 むかし私が手作りの梨を背負って売り歩いた炭住地はすぐ眼の前、だがその上り坂は今日はもうない。
 形はあるが道はない。
 何百棟の犇(ヒシ)めいた長屋も、一気に圧(オ)しならされた茫漠(ボウバク)たる方形の一大造成地帯と変わり、まるで他国で見た岩石層の異形な侘びしい丘陵に向かってたたされたようだ。
 その横腹に生きていた芒(ススキ)の一株が何に向かってのたうつのか、銀茫を振り立て、枯骨のような白い金茎をゆさぶり続けて、見た目に妖しくたくましい。

 今年の過ぎた三百余日をふり返ってなどとよく問いかけられるが、私は唯途方に暮れて薄笑いに心の乱れをごまかすより外にない。
 過去生きてきた二万余日のくらしの中からは凡(オヨ)そ思いもかけぬ、一点の赤い焚き火のまろみを夜の林間に垣間見た思い、とそれだけで私の全身の吐息はどんなに大きくゆらぎ、荒らぎ、しわんだ眼が久しぶりに輝いて、涸れていた涙にうるおうた。
 しかしそれは唯一瞬。
 浦島太郎が一匹の亀に逢うて味おうた、三百年の歓喜の夢の成れの果ての凄まじさに私はおびえたくない。

 自分が無心に投じた一塊の小石の波紋の消えるのを唯待っている現在なのだ。
 私は老いている。
 歩き忘れたほそ道の落葉の踏み心地に酔って、この無心を乱してほしくない。
 このひっそりした有頂天をゆるして欲しい。」

 彼にこうした日が訪れるよう、祈りたい。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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