コラム

 公開日: 2013-09-27  最終更新日: 2014-06-04

あいてくて ─工藤直子氏が示した人生の実りとは─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈『法楽農園』の虚空蔵菩薩様〉

 季節に春夏秋冬があるように、人生にも四季があります。
 志を立てる青少年時代、懸命に励む中年時代、人生を悟る壮年時代、そして、生き死にを超える老年時代。
 仏法では、そうした修行の階梯を発心(ホッシン)・修行(シュギョウ)・菩提(ボダイ)・涅槃(ネハン)に分けます。
 一日も同じです。
 朝は、今日の目標を持ってスタートします。
 昼は成就を目ざして努力します。
 夕刻には一日を生きた実感がご褒美となります。
 そして夜は明日のための眠りに就きます。
 稲刈りが進み、晩秋となった今の時期は、四季における菩提の時期です。
 では、何が心の実りなのか?

 工藤直子氏が平成3年、56才で発表した詩集に『あいたくて』があります。

「だれかに あいたくて
 なにかに あいたくて
 生まれてきた──
 そんな気がするのだけれど

 それが だれなのか なになのか
 あえるのは いつなのか──
 おつかいの とちゅうで
 迷ってしまった子どもみたい
 とほうに くれている

 それでも 手のなかに
 みえないことづけを
 にぎりしめているような気がするから
 それを手わたさなくちゃ
 だから

 あいたくて」

 まさに壮年となった氏が、まるで少女のように無垢な言葉で〈生きた実感〉を綴りました。

 まず、生まれてきたのは、誰かに会いたいからだと言います。
 普通は、自分が、自分のために、自分の人生を、自分で生きると考えます。
 せいぜいが、そこに「お互いに助け合いながら」がつけ加えられる程度でしょう。
 しかし、氏にとっては、会いたい、つまり〈通じ合いたい〉という強い思いを成就させることが最大の関心事になっています。
 人生のこの時期に、こう述べるのは、氏自身が、誰かと、あるいは何かと会い、通じ合った魂の震えをこそ、人生最大の宝ものとして生きてこられたことを意味しているのではないでしょうか。

 次に、会いたいと熱望する相手は、「誰なのか、何なのか、会えるのはいつなのか」わからず、ここまで生きてきてなお、「途方に暮れる」思いであると率直に吐露しています。
 長年生きていると、何でもわかったようなつもりになりますが、たとえば散歩していて、目の前の四つ辻の左手から、あるいは右手から、あるいは正面から現れるのがどういう人なのかすら、わかりません。
 それは、子どもも大人も変わりはないのです。
 何かというと、すぐに、自分の体験から生じた人生論を語りたくなる人々と違い、氏はそのことを忘れてはいません。

 そして、迷子のように惑いながらもなお、手にある「言づて」は離しません。
 書かれた内容が何であるかわからないながら、持っている以上、手渡したいという正直な思いは消えません。
 この「手わたさなくちゃ」が氏の人生を支えているのではないでしょうか。
 これがあるからこそ、惑いの中で生きていられるのかも知れません。

 最後に「会いたくて」と呟かれますが、その熱さと誠実さには参ってしまいます。

 ところで、氏の作品『てつがくのライオン』に、かたつむりから、「ライオンというのは、獣の王で哲学的な様子をしているものだ」と教えられたライオンが、「でれり」としないように座る姿勢を整え、秋風に揺られる梢の葉を眺めている場面があります。
 たったそれだけなのですが、かたつむりは「あんたの哲学は、とても美しくてとても立派」と誉め、ライオンは、「肩こりもお腹すきも忘れて」じっと佇むのです。
 氏はきっと、ライオンのように、でれりとすることなく生きてこられたのでしょう。
 でれりと逃げてしまわない人々と感応し合い、交流しながら生きてきた姿勢が、この実りをもたらしたのではないでしょうか。

 氏の〈菩提の時期〉にもたらされた〈実り〉とは、誠実さです。
 魂の震えを尊び、いいかげんな時間を厭い、「手わたさなくちゃ」と生きてきた氏は、誠実さそのものになり切っておられます。
 氏は、まぎれもなく、一つの実りを示されたのです。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA



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