コラム

 公開日: 2013-09-30  最終更新日: 2014-06-04

福祉を〈商売〉にできる〈制度〉は社会正義にかなっているか?

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 これから述べる意図は、福祉や投資をビジネスとしている方々への非難にはない。
 深刻な問題を発生させてしまう国家のあり方や私たちの社会感覚に問題がありはしないかと、一宗教者として疑問を呈するのみである。

 9月29日付の朝日新聞は「介護バブル群がるファンド」を掲載した。

 まず、「有料老人ホームなど約30の施設を運営する生活科学運営(東京)の買い手を決める交渉」が紹介される。
 企業統合(M&A)の現場である。
 企業と一緒に買収をはかる金融機関の担当者は、「二次入札に残った会は、100億円前後を提示したはず」と言う。

「入札は、投資家から募ったお金を元手に投資する『ファンド』のジェイ・ウィル・パートナーズ(東京)が実施した。
 1年前に別のファンドから引き継ぐ形で生活科学運営の経営権を握り、財務を立て直して今回、売りに出した。」

 普通の企業に投資して利益の出る体質にし、売却して利益を得る商行為が、福祉を業務とする企業が対象であっても、ごく普通に行われる。

 そもそも、福祉を目的としてはたらく人々の組織が、利益を出すことを目的としてよいのか?
 福祉施設の経営者の頭に、まず、利益があってよいのか?
 そうした組織へ出資する人々は、他への出資と同じように利益を目的としてよいのか?
 そして、〈救いを求めている人へ救う人が直接手をかける〉福祉の現場から利益を絞り出すとは、具体的にどういうことなのか?

 これは、〈普通の〉疑問ではなかろうか。

「買収が加熱しているのは、介護の需要は増える一方なのに、介護保険から給付されるお金を使って運営する有料老人ホームなどの施設が増えすぎないように、国や自治体が新設の認可数を抑えているからだ。
 落札するために、本来の価格に上乗せする『のれん代(ぷれみあむ)』の相場は、『年間のもうけの5~6年分』かさ最近では『10年分』とうなぎ登りだ。」

 凄まじい「『老人ホームころがし』のような例」もある。

「東京徒渋谷区の有料老人ホーム『トラストガーデン南平台』などの4施設は、介護会社が破綻した後の08年以降、ジェイ・ウィルなどによって少なくとも4回、転売された。
 なぜ転売が繰り返されるのか。
 経営の裏側を、あるファンドのマネージャーが明かしてくれた。
 入居の際に家賃を一括して預かる『一時金』を、施設側は入居から一般的には5年間、毎年分割して取り崩し(償却)、『家賃収入』として懐に入れる。
 6年目からはそれがなくなるので、償却期間を過ぎても入居が続く老人からは、介護費などしか徴収できない──。
『長生きすればするほど施設側は収益が出にくくなる。』」

 これは〈利益〉を目的とせずに福祉活動をする人々と組織を前提とした制度であり、組織が利益を目的とされれば、入居者は、実質的に早く死ぬことが求められる。
 表面では人を生かそうとする組織が、裏面では人に死んでもらって利益を上げたいという目的を持つとは、恐ろしい話ではないか。
 しかも、裏面がビジネスとして合法的に行われれば、この恐ろしさは気づかれない。

 だから「なるべく『償却切れ老人』を減らし、家賃収入が計算できる新しい入居者に入れ替えて収益力を上げ、早めに売ろうとする」ようになる。
 誰が?
 福祉施設の経営者が!
 福祉施設への出資者が!

 そのためには当然、早く死にそうな老人が競って集められ、一旦一時金を払った老人は早く死ぬことを求められる。
 施設長の話である。

「けがや病気をきっかけに、『償却切れ老人』を『医療が必要になったのでうちではもうお世話できる力がない』と体よく追い出す施設が増えているという。
 収益力を高めれば、また買い手がつく。」

 シンガポールに拠点を置く「パークウェイ・ライフ・リート」は日本国内で最大の介護施設のオーナーである。

「これまで総額800億円で計44件の介護施設や病院を買収してきたが、このうち日本国内の施設が40件を占める。」

 経営者の言葉である。

「これから団塊世代が後期高齢者になって、介護や関連の市場も成長が見込める。
 優良な投資先としては世界屈指。
 日本は買いだ。」

 何が買われるのか?
 団塊世代が汗水垂らしてはたらき、溜めた日本最後の資産が、いのちを人質にして、である。

 日本を支えるという気概を持ち、仕事の虫としてはたらきづめだった同世代の人々よ。
 このまま、唯々諾々と死んでいってよいのだろうか?
 そのことは、後に続く世代のためにいかなる意味を持つのだろうか?

 記事は現場の実態も生々しく報告している。
「ワタミの介護」が経営する神奈川県内の老人ホームで、報告書の書き換えが行われたという。
 引き継ぎ会議において、ベッドから老人が落ちた事件につき、ルールどおり看護師へ連絡せず、様子見をしたという報告書がケアワーカーから読み上げられた時、ホーム長が「自宅待機の看護師に報告した」と書き替えさせたのである。


「入居者への薬の飲ませ忘れや取り違えも数え切れなかった。
 誤って薬を飲ませれば重大事故につながる可能性もある。
 配薬ミスを聞いた主治医が『いい加減にしろよ』と怒鳴ることもしばしばだったという。」
「経営効率を優先するから、人員は最低限。
 だから入浴や排泄の介助が重なると、誰もいないことも多かった。
 便で汚れたまま放置された老人もいた。」

 ワタミグループは「事故隠しの事実はない。人手不足でサービスが低下している認識もない」という。
 ならば、堂々と朝日新聞を告訴したらどうか。

 まず、利益を出して高く売れる組織にするための手段として、入居者の入れ替えを早めようとしていることはよく理解でき、視点は、効率優先の現場ではたらく人々へ移る。
 厚生労働省が発表した平成24年の賃金構造である。(非正規社員も含んでいる)

・医師         879300円
・システムエンジニア  370100円
・看護師        326900円
・民間事業者平均    297700円
・タクシー運転手    234400円
・警備員        219600円
・福祉施設介護員    218400円
・スーパー店チェッカー 189400円

 医療法人「徳州会」グループの介護関連会社「ケアネット徳州会鹿児島」のケースである。

「訪問介護を担当する介護職員たちは、月に訪問する利用客数の目標値を会社から突きつけられる。
『月140件はこなしてもらいたい。
 あなたの給料分は稼いでもらわないと。
 このままだとパートになってもらうか、辞めるしかない』。
 複数の社員はこの夏、社長に呼ばれ、こう告げられた。
 徳州会が07年、撤退したコムスンから事業を引き継いだ時のノルマは90件弱だったが、その後、どんどん増えた。
 関東で病院や介護施設を幅広く運営する医療法人で働く30代の看護師は、『就かれて休日は身体が動かないから、ずっと寝ている。消耗品のようだ』と話す。」

 これらの例における「稼ぐ」と「消耗品」が現実を語っている。
 経営のトップが、はたらく人へ臆面もなく「商売である」と言っている。
 何をかいわんや、福祉の理念はどこへ行ったのか。
 はたらく人は、人間扱いされていないと実感している。
 資本主義の非人間性ここに極まれり、ではないか。

 人間の心と身体へ直接手をかけ、弱者を救うはずの現場の実態は恐ろしい。
 利益という強風にさらされ、モラルの灯は危うい。
 入居者も気の毒だが、はたらく人々や、理想を持って経営に携わる人々の心はだいじょうぶだろうか?
 この恐ろしさに気づかない、あるいは見過ごす私たちの社会はだいじょうぶだろうか?

 早死にしなければ一人残らず老人になり、自分一人では生きられなくなって必ず、誰かの手を借りるようになる。
 これは、日本に住む全員の問題である。
 よく考え、早く、制度を何とかせねばならない。
 何とかして、介護の分野は〈利益〉から解放したい。
 利益を得ようとする勢力から守りたい。
 ぜひ、医療や教育の分野も──。
 そうしなければ、個々人のモラルも、国家としてのモラルも崩壊するのではなかろうか?
 そもそも、福祉の世界を「成長分野」と括ってしまう感覚そのものに問題がありはしないだろうか?

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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