コラム

 公開日: 2013-10-03  最終更新日: 2014-06-04

呉地正行先生に聴く(その2) ─スモールイズビューティフル・一人の百歩より百人の一歩

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈ミンダナオ島(フィリピン)に暮らす先住民族ティボリの『ティナラク織』をいただきました〉


〈『河北ウィークリー』さんでご紹介いただきました〉

 9月30日夕刻、「日本雁を保護する会」会長呉地正行先生と10月12日のシンポジウムについて、打ち合わせを行いました。
 そのおりのメモです。

○単調な環境は好ましくなく、乾田を否定し、すべてをふゆみずたんぼにせよというのではない
 例えば赤とんぼが世代交代するためには、乾く時期が必要である

 先生は、日本中の田んぼをすべて「ふゆみずたんぼ」にしたいとは言われませんでした。
 理由を尋ねたところ、「単調な環境は好ましくない」との答が返り、深く納得できました。
 宗教が文明のゆくえにかかわる多様な活動を行っている現状も同じです。
 従来のお墓に安心できる方々も、共同墓や自然墓を求める方々も、四国霊場巡りに期待する方々も、自然農法やビオトープといった環境づくりと心身づくりを連動させる方法に共鳴する方々も、宗教原理や瞑想に関心を持たれる方々も、あるいは隠形流(オンギョウリュウ)居合の稽古を行う方々もおられ、単調でない人間模様があってこそ、健全で発展性のある宗教組織であると考えております。
 そうした、いわば〈楕円の緩やかな重なり合い〉により、皆さんが寺院との活き活きした関係を保たれ、当山にエネルギーを与えていただいていると感じています。
 さる科学者の方から、当山の活動について「全体主義的でない、とても健全な運営」とご指摘いただいたことは、「ゆかりびとの会」の役員さん方にとって、勇気づけられたできごとでした。
 環境問題や田んぼづくりについても、お互いが持つ理想への多様なアプローチを尊重しつつ、全体としてよい方向へ進むことが肝要ではないでしょうか。

○湿地の80パーセントから90パーセントが乾田となり、暗渠排水にされたことが問題である
 今、最も欠けているのが〈冬の水〉である

○田んぼを中心とした水辺環境をつくり、多様な生きものたちを子供たちが観察するようにしたい
 定期的に生きもの調査をしたり、観察会を行ったりしたい
 多様な生きものたちがいて、いのちが多様に豊かに息づいていることに感動できる場をつくりたい

○田んぼには、稲作により生きものたちが集まる
 東南アジアでは「水に魚あり、田に米あり」と言い、川と田んぼでは水も生きものも行き来し、主食もおかずも手に入れられる

○ふゆみずたんぼを中心とした水辺環境は、他の農地と違う複合生産の場となる
 ここだけで生きて行ける場をつくり、小さな地域内でご飯もおかずも安全で確実に確保できることが理想である

 何でもグローバリズムに乗ってやろうとするのには無理があります。
 お金さえあれば世界中から食糧も武器も何でも買えると考えるのは危険です。
 少なくとも、生きものとして、食べるものは自分たちで確実かつ安全に確保したいものです。
 その方法が公開され共有され、食べられない地域へ真の援助が行われ、世界中が食べられるようになれば、経済格差も戦争も相当、減るのではないでしょうか。
 先進国では食糧の膨大な無駄が発生し、一方では子供たちが餓死したり栄養失調に苦しんだりするなどの状況は、人間にとって最も大切な食糧の取扱いについて、大いなる勘違いがあるせいではないでしょうか。

○何十年も何百年も使える環境をつくろう
 人間も他の生きものたちも共に生き続けられる循環型になるのが理想である
 田んぼで、今日獲れたものをおかずとして食べられれば生きられ、田んぼがなりわいとなれば理想である
 小さいことのよさが生きる

 そこで生きている生きものには、そこで生きる理由があり、それは、人間の差配力を超えています。
 だから、食文化は世界中で異なります。
 世界中の人々が同じシチューや同じパンを食べねば生きられない理由はありません。
 食べ物の繊細な多様性は、言葉の多様性とどこかでつながっているという気がしています。
 人間が皆、同じ食べ物を食べ、同じ言葉で話させられるならば、同じ電気で同じ動きをするロボットに似てくるのではないでしょうか。
 呉地正行先生が「単調な環境は好ましくない」と指摘されるように、単調な文明という想像には〈人間が人間たり得るか〉という恐ろしいものが含まれています。
 グローバリズムという幻想が私たちへ何をもたらしているか、よく考えてみたいものです。

○生きものとしての人間が最後まで切り捨てられないものがたべものである
 食べ物が何百年も何千年も確保し続けられるならば、これこそが当に持続可能な社会であり、心の安らぎも確保できる

○田んぼには底力がある
 アジアには何千年も続いている農業文化がある
 歴史によって証明されているやり方を古人から学びたい

 現に、古来の農法を守り、平和に暮らしている人々がいます。
 呉地正行先生は、それを「証明されている」と言われました。
 
○中国の雲南省や四川省など、あるいはカンボジアやラオスといった地域には、「ここで生きていてよかったなあ」と思える文化が残されている
 後漢時代のお墓から出土した「田んぼ模型」には、田んぼとそれにかかわる生きものたちが描かれている
 約2000年前から続く農法は信頼できる

 シンポジウムにおいて、「田んぼ模型」の写真をお見せいただけるそうです。
 2000年前の人々が田んぼと生きものたちをどうとらえ、どう表現していたか、大変、期待しています。

○「早く」だけでは長持ちしない文明になりかねず、ゆったりとした長続きする方向性が必要である
 科学合理性だけを信じ、際限なく早さを求める方向を止めるのは社会全体の力である

 物理学を目ざした呉地正行先生の言葉だけに説得力があります。
 そもそも、ネコやカエルと同じく、皮膚で覆われた肉体をより所としている人間だけが、自分の都合だけによって他の生きものたちをどこまでも自由に操るなど、許されることなのでしょうか。
 多様な生きものたちがより所としている環境世界を、自分の都合だけによってどこまでも造りかえるなど、許されることなのでしょうか。
 限度があるはずだ、と畏れる謙虚さが失われれば、摂理内に生きる生きものとして生存を許されない段階がやってくるのではないでしょうか。
 医学においても、交通手段においても、情報交換においても、私たちの文明は、リミットに対する挑戦の成果として長寿や高速移動や膨大な情報の共有などの恩恵を得てきました。
 しかし、あまりにも早く進み過ぎていはしないでしょうか?
 クローンヤギをつくり、クローン人間もつくられかねない状況はだいじょうぶでしょうか。
 とてつもなく速い交通手段に、とてつもない事故につながらないという保証はあるのでしょうか。
 私たちの脳は、情報の真偽や正邪などを正確に判断し、洪水のように流れる中から本当に必要なものを選び取る能力があるのでしょうか。
 原発事故も、異常気象も、人間へ恐ろしいリミットを告げる警鐘ではなかろうかと疑われてなりません。
 警鐘と感じとる人々しか「止める」ことができないのではないでしょうか。

○原発事故のような警鐘も、直接的被害者以外の人々の記憶からすぐに薄れて行きがちだが、危険なものはたとえ忘れてしまっても危険なのである

 失恋や受験の失敗など、忘却は救いをもたらす場合があります。
 しかし、戦争などの愚行もまた、忘却がもたらすことは確かです。
 私たちが皆、殺し、殺される戦争の記憶をとどめることができたならば、過去のどこかで、戦争は人間の歴史から消えていたはずですが、〈忘れた〉ために、戦争で殺される家族や、傷ついた友人や、殺し殺される自分などを想像する力も弱まり、戦争は繰り返されてきました。
 しかも、今は、人間が隠れたまま、ミサイルやロボットで敵陣を破戒し、敵を殺す時代になってきました。
 殺し、殺されるという想像力がこれまでになく弱まっているからこそ、戦争を避けるためには〈忘れない〉努力が必要なのではないでしょうか。
 まさに、「危険なものはたとえ忘れてしまっても危険」なのです。

○EUでは、ミツバチの大量死などにつながると推測されるネオニコチノイド系農薬を禁止したが、黒であることが証明されていないものへの対応に文化の問題が顕れている
 日本でもグレーであることは明白なのに放置され、大量に用いられ続けている

 この件については、ブログ「蜜蜂に教えられる真実 ─蜜蜂の大量死・予防原則・原発─」に書きました。

○戦後の成り行きが示すとおり、きちんと白黒をつけずに過ごす曖昧さは日本人の精神風土としてあるのではないか
 また、善くも悪しくも〈皆と同じようにやる〉ことによって安心を得るという傾向が、強いのではないか
 よほど明確な農業哲学や技術を持たないと、〈これまで〉や〈皆〉と違うことができない

○東日本大震災から受けた教訓の一つとして「絆はいざという時に役立つ」ということを知った
 都会にも田舎にも、それぞれ、よい面も、よくない面もある
 悪い面を攻撃するよりは、よい面を生かすことである
 そのために、〈全体を観る目〉を養いたい
 田舎特有の絆は地域力である

○東日本大震災で失ったものも得たものもある
 得たものを生かすのが生きている人間の務めである

○人間は食べなければ生きて行けず、生きて行く上の本質にかかわる部分については〈線引き〉が必要である
 すべてのものごとに経済原則をあてはめてはいけない

 当山はこれまで、教育や医療や福祉などの分野までも、テレビや車をつくる商売と同じく資本主義の競争原理にさらしてはならないと考え、訴えてきました。
 大学が集めた入学金で儲けようと莫大な投資をして数十億円もの損失を出したり、病院が患者の囲い込みや薬漬けまがいのことを行ったり、福祉施設が儲かるシステムとして転売されたりする社会は、まっとうな社会と言えるでしょうか。
 人間づくりも、病気を治すのも、他人の手を借りなければ生きられない人へ手を差し伸べるのも〈儲け〉とは無関係であり、それは宗教と共通しています。
 もしも、〈線引き〉をしなければ、教師も医師も介護士も良心の呵責に耐えられなくなるか、あるいは、呵責を感じなくなるか──。
 いずれにしても、〈儲け〉に走る宗教者や宗教団体と同じところへ堕ちてゆきかねません。

○韓国生協の倫理的消費者というポリシーなどに学びたい

 韓国生協の倫理的消費に関する文章です。
「消費は経済においての投票行為とも言えます。
 我々の財布の中にある現金やクレジットカードが投票用紙になるのです。
 その票を誰に、どこに入れたら良いのでしょう。
 子どもの労働を搾取して生産したチョコレートを買う消費者の行動は、そのような企業の行為を黙認し、もっと多くの富や力をあたえることにもつながりかねません。
 今私たちの目にすぐには見えなくても、生きものと地球環境に配慮し、正直な生産に取り組む生産者や労働者の権利を尊重する企業、動物福祉を考え、生産方法を革新してゆく倫理的生産を支え合うことは私たちの消費を通して可能なことなのです。
 倫理的消費は、持続可能な社会を創ってゆく上で私たち消費者にできる小さくても手ごろに実践であり、『美しき消費』でもあります。」
 私も必ず、店と商品を多少は〈倫理的に〉選択しているので、よく理解できます。
 自然と生きものを生かす美しき商品は、美しき消費者に選択されるのではないでしょうか。

○日本の企業は、CSR(企業の社会的責任)をもっと自覚せねばならない

○それぞれの田んぼを生かして行くことは、スモールイズビューティフルであり、小回りの利く柔軟な対応ができる
 一人の百歩より百人の一歩で進めば大きなうねりとなる
 過去に学びながら未来へ向けた田んぼづくりをやりたい

 よく学び、生きものの多様性と心の多様性を皆さんと共によく考え、『法楽農園』で何ができるかを模索しつつ、一歩一歩と進んでゆきたいと思います。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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