コラム

 公開日: 2013-10-05  最終更新日: 2014-06-04

風の音に如来の説法を聴く(因果応報は信じられるか?) ─10月の聖語─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 お大師様の言葉です。

「如来の説法は必ず文字による。文字の所在は六塵(ロクジン)その体なり」

 如来の説法は、必ず文字(言葉)によって行われています。
 だからこそ、私たち万人へ通じます。
 ただし、言葉といっても、日本語や英語といった特定の言葉ではありません。
 目や鼻や耳や舌や皮膚や心など、六つの器官のどこへ届くものであっても、すべてが説法であり得るのです。
 姿や香りや音や味や感触や心に浮かぶ思いなどに〈み仏の言葉〉を感じとれるかどうかは、私たちの五官六根のアンテナが、我欲などによって錆びついていないかどうかにかかっています。

「仏教では、因果応報と考えるのですか?」

 真剣に生きつつも苦境にあるAさんから、静かな声でご質問がありました。
 歌手が喉を傷めるように、志を実現するために最も使う身体の一部に重大な問題が発生したのです。
 しかも、ようやく勤め上げ、いくらかはゆっくりできると考えていた矢先の親御さんも又、思いも寄らぬ大病に罹ってしまいました。

 因果応報であるならば、Aさんには、志の遂行を実現させないほどの、いかなる悪行があったのか?
 懸命にはたらき抜いた親御さんには、人生の休息を許さないほどの、いかなる悪行があったのか?

 半沢直樹ではありませんが、理不尽な扱いを受けた方々や、突発事故に見舞われた方々や、難病を抱えて生まれたなどの方々や、政治の動きに強い疑問を感じる方々などが感じる〈不条理〉を解けるのかという問題です。

 お答えしました。
「お釈迦様が説かれた因果応報は、ものの道理からしても、体験上も、真理であると感じ、考え、信じています。
 ただし、大きな問題があります。
 現在の人間の能力では、原因と結果の糸のすべてを見ることも、理解することもできないのです。
 たとえば、酔って人を殴れば殴り返されたり、逮捕されたりするので、その現象における因果応報はわかります。
 しかし、他人に後ろ指をさされるようなあこぎな商売をしてのし上がる人もいれば、まじめにはたらいていながら世間の荒波でもがき続ける人もいます。
 また、津波で亡くなった方々と、助かった方々の間には、いかなる〈原因〉の違いがあったのか?
 いくら考えても、なかなか答は出ません。
 人生には、神も仏もないものか、と断腸の思いに呻吟し、慨嘆したり、『心臓をむしり取ってしまいたい』(「ドイツ戦没学生の手紙」より)衝動に襲われたりする時期があるのは避けられないものです。
 とは言え、過去の善行が思いもよらぬ形ですばらしい人間関係や成果をもたらしたり、隠しおおせたはずの遠い過去の悪行が、埋もれ火が燃え上がるように破滅へ導く恐ろしい事態もまた、体験するだけでなく、少なからず目にし、耳にするものです。
 そして、自分自身の過去を省みれば、はっきりしている因果の糸も、朧気な因果の糸も、無数にあったことは否めません。
 こうした体験を全体的に眺めてみれば、やはり、〈因果応報は確かであるが、仏神ならぬ愚かな自分には全体像をつかむ能力が具わっていない〉と考えるしかないのです」

 Aさんが帰られてから、二つのポイントを申しあげなかったことに気づきました。

 一つは、人間の存在には物理的身体的な面と、精神的な面とがあり、両面は複雑に絡み合いながら一人の人間の人生となって現象しているが、それぞれの間における因果関係と、両者が絡み合う因果関係とがあり、私たちが因果の糸を理解し切れないのは当然であるということです。
 Aさんのケガも親御さんの病気も物理的な問題であり、それが発生する過程へ心がどう関係していたかはわかりません。
 こうしなければ、こうならなかったのか、といくらかは思えても、では、そうしなければ、そうならなかったのかと考えてみても、答は出ません。
 身体に起こることが心へ影響を与え、心に起こることが身体へ影響を与えることはわかっても、いきなり〈そうなっていた〉という事実に直面し、オタオタなければならないのが私たちの日常です。
 そこから教訓を得られる場合もあれば、不条理の感覚しか起こらない場合もあるのです。

 もう一つには、そこから導き出される結論ですが、すべてを正邪善悪という倫理的価値観でとらえることはできないという点です。
 大事故に遭ったから、あるいは大病に罹ったから、そうなるべき〈悪行〉があったと考えるのは、考え過ぎというものです。
 私たちが「なぜ、よりによって自分がこんな目に遭うのか?」と思う時、たとえ微かではあっても必ず善悪の感覚が伴い、時には後悔の念が高まり、腹の底から苦に染められますが、認識できる〈悪行〉はなくても、物理的世界の因果応報により、災難は起こってしまいます。
 その典型が死です。
 いかなる善行を重ねた人にも、いかなる悪行にまみれた人にも、必ず、等しく死が訪れるのは、生きものとして逃れられない因果関係によるものであり、それをいかなる苦と感じるかという問題とは、冷酷に切り離されています。

 私たちは、たとえ因と果の糸がすべては見えなくても、謙虚に因果応報を信じて倫理的基盤を失わぬようにしたいものです。
 同時に、因と果のつながりは物理的に起こり、精神的に起こり、両者はレールのように平行しているのではなく、ジグザグに交差しながら人生を形づくっているいうイメージも持ちたいものです。
 そして、自分自身の生き方を倫理的に厳しく省みる一方で、物理的な面においては、何もかもが一時的に現象しているという空(クウ)の実相を観てオタオタせず、生きたいものです。
 見えるものも、聞こえるものも、すべてが、こうした真実を孕んで私たちの周囲に起こり、滅して行きます。
 そこに如来の説法を感じとるかどうかは、私たちの心次第です。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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