コラム

 公開日: 2013-10-06  最終更新日: 2014-06-04

第十回法楽塾 ─『ダライ・ラマ法王の仏教哲学講義』を読む(11)四つの真実への誤解(1)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 塾のテキストです。

【ダライ・ラマ法王の仏教哲学講義】       

第二章 輪廻における生存の状況─真の苦しみ

 第一節 四つの聖なる真実についての16の性質

 お釈迦様が説かれた「四つの聖なる真実」を再度、掲載しておきます。

1 苦諦(クタイ)……真の苦しみ
 輪廻(リンネ)の世界におけるわれわれの実情を、真の苦しみとして捉えたもの。   
2 集諦(ジッタイ)…苦しみの真の起源
 苦しみの生存の真の起源・原因が執着や欲望であると理解すること。
3 滅諦(メッタイ)…苦しみの真の消滅
 苦しみが真に消滅した状態についての教え。
4 道諦(ドウタイ)…苦しみの消滅への真の道
 真の消滅を実現するための修行方法の教え。

 これは動かしがたい真実ですが、私たちは、それぞれに対して誤解をしがちです。
 一つの項目に対して4つづつ、合計16の典型的な誤解を解くのがこの一節です。

1 苦諦(クタイ)に対する誤解

「第一の真実、真の苦しみ(苦諦)に関する四つの性質とは、(1)無常(非常)、(2)苦しみ、(3)空、(4)無我(非我)です。
 この四つの性質を知ることによって、苦しく悲惨なはずの現実を好ましく望ましいと考えているわたしたちの四つの誤解に対抗できるようになります。」

 しかし、私たちはこうなり、誤解しがちです。

「本当は苦しみであるこの現実を(1)清浄で純粋なものであると考え、(2)幸福なものと考え、(3)ずっとこのまま続くと考え、(4)実体のあるものと考える」

(1)の誤解について

「私たちの心身を構成している複合体は常に変異する性質のものである、という事実から、それらは「無常なものである」と論証することができます。」

 ここでの〈複合体〉とは、般若心経に出てくる「五蘊(ゴウン)…心身を構成する5つの要素」のことです。

・物質…色(シキ)
・感受作用…受(ジュ)
・識別作用…想(ソウ)
・意志作用…行(ギョウ)
・認識作用…識(シキ)

 たとえば、いかに清らかで美しい人であっても、〈色〉である肉体は事故や加齢などで変異し、いかに意志の堅固な人であっても、〈行〉である意志作用は認知症などになれば変異してしまいます。
 ままならず、苦なのです。

(2)の誤解について

「心身を構成している五つの要素は別の力、すなわち煩悩(ボンノウ)と、煩悩によって引き起こされた行為の支配下にあるため、それらは苦しみの実体そのものであると言えます。
 すなわち『苦しみ』 という語の意味はここでは真実とは逆のものの支配下にある、ということなのです。」
 
 私たちの身体と心の全体は、いつも煩悩の支配下にあるので、身体は煩悩によって動き、識別作用などもまた、煩悩に染められながらはたらきます。
 それは、『般若心経』の説く空(クウ)や、『理趣経百字偈』の説く大欲(タイヨク)から離れがちです。
 だから、現実はまぎれもなく、苦なのです。

(3)の誤解について

「心身を構成する五つの複合体ならなるわたしたちには、その諸要素とは別の実体としての『自我』は存在しないので、わたしたちは消滅することのない永続的実体としての『自我』を持たないことが論証されます。」

 身体もかりそめのもの、感受作用も、認識作用もそうです。
 今、たまたま、5つの要素がバランスよく和合しているから、こうしていられるだけであり、その〈時〉は今のみでしかありません。
 無意識のうちに、今日と同じく明日も来ると思っていますが、そんな保証はどこにもありません。
 あてにならず、苦なのです。

(4)の誤解について

「心身を構成する五つの複合体が生まれたり、消滅したりするに従って、わたしたちの自我も生滅しているのです。
 それが真の苦しみについての『無我』という性質です。
 また、わたしたちには永続する自我がないばかりでなく、それ自体の力で存在する独立した自我も存在しないのです。」

 自我の実体はどこを探してもなく、肉体というかりそめの器にまといついているだけです。
 烈しく執着する自我が実は見つからない、とは、苦というしかありません。

※自我のレベルについて

「一部の仏教徒を除いて全ての仏教徒は、真の苦しみについての、この四つの性質(非常、苦、空、無我)を承認しています。
 しかし、ここで言及されている無我(非我)は、単に心身の構成要素から独立した自我が存在しないということだけであって、より上位の学派、たとえば中観帰謬論証派(チュウガンキビュウロンショウハ)が主張している精妙なレヴェルの無我のことではなく、粗雑なレヴェルの無我や空である、ということに注意しておいてください。」

 私たちの日常的意識における自我には固定された実体がないけれど、高度な意識のレベルにおいては〈自分〉というものが別の次元で立ち上がってくるといいます。
 その世界が「精妙なレヴェル」です。
 最後に「真の解脱のためには精妙なレヴェルの空性を悟ることが是非とも必要」とされていますが、この先へは軽々に言及できません。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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