コラム

 公開日: 2013-10-09  最終更新日: 2014-06-04

東日本大震災 ─東北関東大震災・被災の記(第142回)「仮設住宅では死にたくない」─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 原発事故によって故郷を追われた福島県富岡町民の現実が語られ始めた。
 10月7日夜、福島県郡山市において、福島県富岡町の社会福祉協議会が運営する生活復興支援センター『おだがいさまセンター』から来られた青木氏のお話を聴講させていただいた。
 センターは郡山市富田町仮設住宅のど真ん中にあり、「全国に散らばった町民の新たな絆をつくる」ことが目標である。
 青木氏は語り始める。
「富岡町は全町民が避難となり、全員が、すぐに帰れると思っていたので、この2年半はとても辛いものだった。」

 仮設住宅の典型的なモデルは、約9坪(2DK)である。
 震災前の住宅のほとんどは2~3世代が同居しており、9坪に複数の世代が同居することは、事実上、できない。
 若い世代は仮設住宅から出て行き、入居者はすべて中高年者である。
 孫がいなくなった淋しさから「仮設住宅は姥捨て山か!」と怒り、嘆く祖父母もいる。
 別居した子育て中の世代が親から離れて自由を満喫する気分になるのは最初だけである。
 やがて、親からめをかけられ、親の手を借りていたありがたさを思い出すようになる。
 若い世代へ対する最大の心配は、親や祖父母など、相談できる相手が身近にいない点である。

 富岡町には、古木が空を埋め尽くす桜の名所がある。
 今は、桜街道のほとんどが立ち入り禁止のエリアに含まれ、入り口から覘くことしか許されてはいない。

 3月11日は、震度6強が2分続いた。
 波は20メートルを超え、波そのものの高さでは地域最大だったが、奧まで侵入してこなかったので、南三陸などのような膨大な被害にはならなかった。
 しかし、原発が爆発し、町民は帰れない人々になった。
 富岡町は、第一原発と第二原発にはさまれた地域であり、原発から20キロ圏内にあるため避難命令が出た。
 誰かが「死の町」という表現を用いたために大問題となったが、街並みがそのままで人間がそっくりいなくなった光景は、事実、そうした感じである。

 歴史的に津波の被害がほとんどなかった地域なので、地震と津波には驚き、恐怖で皆、避難していた。
 しかし、原発についての〈安全教育〉は徹底されていたので、事故の翌朝、避難命令が出ても、1万5千人の町民は「すぐに帰れるだろう」と思い、通帳も実印もお位牌も皆、置いたままで車に飛び乗った。
 20キロ圏外にある隣の川内村へ向かったのである。
 道路は大渋滞となり、いつもは所要時間30分のところへ着くのに5時間から9時間かかった。
 誰一人「このまま帰れない」とは思わずにいたが、その後、誰一人、家に入れなくなった。

 町民の不安が一気に高まったのは、混雑する道路の交通整理に当たっていた警察官がガスマスクをつけ、白い防護服をまとっているのを目にした時だろう。
 警察官は厳重に防備しているのに、町民は放射能の危険に対して丸裸同然である。
 このままでは、ガス欠になると思った町民が反対側の斜線を走って戻ろうとしたところ、厳しく叱責された。
「死んでもいいのかよ!」
 町民はようやく、ことの重大さに気づいた。
 それほどまでに原発の〈安全教育〉は徹底していたのである。

 3月12日、人口2800人の川内村へ避難しようとした富岡町民は1万5千人、車で埋まる磐越道は新潟までつながってしまった。
 今の日本では「突発的な災害が起こっても2日間耐えればだいじょうぶ」とされているが、川内村には、2日経っても、物資はまったく届かなかった。
 運送業界だけでなく、あらゆる人々が、原発事故による被曝を怖れたからである。
 3月16日、30キロ圏内まで避難命令が出て、今度は郡山市にあるビッグパレットに3000人が移動した。
 どうやら横にはなれたが、赤の他人同士がごろ寝する状況にあって、女性や若者は、とても眠れなかった。
 段ボールなどでプライバシーがある程度保護されるよう工夫され、8月にビッグパレットが閉所される頃には、かなり改善されていた。
 そんな中、同施設で、富岡町と川内村の社会福祉協議会が『おだがいさまセンター』を立ち上げた。
 施設にいる町民全員が弱者である。
 ひとしく、「お互いさま」と支え合って生きるしかない。
 物資が届くようになってからは、整理や配分に苦労した。
 配分における考え方には、行政が抱える問題を痛感させられたこともある。
 人数分より少ないパンや牛乳などは、不公平を生じさせないために、工夫して分け合うといった機転をきかせることなく放置し、結果的に廃棄したケースもあった。

 まもなく、阪神淡路大震災の災害に立ち向かった方々などが駆けつけてくれた。
 大がかりな助っ人第一号は山口県からやってきた。
 会津を筆頭にして、今なお、「戦後」は「太平洋戦争終了後」ではなく「戊辰戦争の後」と感じている福島県民は少なくない。
 だから、長州(山口県)の職員30名の手助けは大いなる感激だった。
 そうした外部の方々から、真っ先に指摘された。
「女性専用スペースが確保されていない」
 アドバイスは、風呂に入れず、着替えもできず、授乳もままならず、生理用品の受け取りにも気後れする女性たちを一気に救った。
 それまでは、女性だからと差別されたくない、とか、女性だから我がままを言うと非難されたくないといった複雑な気持に日夜、苛まれつつ暮らしていたが、男性にはなかなか理解しがたい女性ならではの辛さから大きく解放されたのは、画期的なできごとだった。
 6月には、さるNPO法人からワコールのブラジャーが大量に届いた。
 こんな窮状でありながら……、と怯(ヒル)んだが、強く肩を叩かれ、背中を押された。
「まず、女性が女性としてきちんと生きなくちゃいけない」
 このあたりから、少しづつ、活気が取り戻されたように思う。

 センター内にミニFMの放送局を造ったのも画期的だった。
 さまざまな情報が避難者全員の手元に配られたラジオに流され、安心の基となったばかりでなく、催事や慰問してくださる方々の情報も喜ばれた。
 夕刻にスタジオの生放送が始まると、ラジオを手にした方々がわざわざ、スタジオ前で聴いてくださるのは、不思議であり温かくもある光景だった。
 この放送局は『臨時災害FM』として、ここ郡山市の避難所で今も続けられている。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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