コラム

 公開日: 2013-10-10  最終更新日: 2014-06-04

東日本大震災 ─東北関東大震災・被災の記(第143回)「仮設住宅では死にたくない」(2)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 10月7日夜、福島県郡山市において、福島県富岡町の社会福祉協議会にある生活復興支援センター『おだがいさまセンター』から来られた青木氏のお話を聴講させていただいた。
 そのおりのメモである。

 今、富岡町民の13・5パーセントは仮設住宅、54・5パーセントは借り上げ住宅、32パーセントは県外に住んでいる。
 東京には最多の800人、次いで神奈川県の400人というふうに、町民は全国すべての都道府県に分散して住んでいる。
 普段の行政は行政区ごとに全てが行われており、それが完全に崩れたのは過去にない異常な状況である。

 平成24年、町民の電話帳を作った。
 1万5千人、8千世帯すべてへ紹介したが、電話帳記載を承諾したのは2千世帯のみだった。
 ただプライバシーを守りたいというだけでなく、避難先で始まっている実際の生活との関係において、さまざまな問題もあった。
 現在、第二版を作成中だが、拒否した人から、なぜ載せてくれないのかという苦情が入ったりもしている。

 25年3月25日、富岡町は、避難指示解除準備区域、居住制限区域、帰還困難区域に三分割された。
 前の2区域は9時~15時までの間は自由に入れるが、水道は止まったまま、ゴミも出せない。
 最後の区域は立ち入り禁止のままである。
 道路は一時的に歩けても、自分の家は線引きの向こう側なので玄関も開けられないといった状態である。
 いろいろ言われるが、町の実態は、政治家がポロッと口にしたとおり「死の町」である。
 見える家や道路は、あの時のままに在るが、人影はない。
 野生化した牛や豚やイノブタなどが町を闊歩している。
 仔牛を産んだ母牛が死に、仔牛が明らかに他の牛から乳をもらっている光景を見た。
 牛は本来、自分の子供にしか乳を与えない動物である。
 それなのに……。
 死の町に日々、増え続けているのは汚染土である。
 人はおらず、汚染土は堆(ウズタカ)く積まれている。
 どの家もネズミにあふれている。
 除染したからといって、いったい、誰が、家を元通りに使い、住むことができようか。

 あの後、田んぼはセイタカアワダチソウに占領された。
 翌年、増えすぎたアワダチソウは、ものの見事に消え、今年は柳の根がしっかり張っている。
 たとえ除染されても、田んぼを元どおりに使うことはいつ、できようか。

 2時間だけの帰宅が初めて許された時、笑うに笑えない悲喜こもごものできごとがあった。
 平等に与えられた袋に入るだけのものしか持ち帰れない。
 CDを入れようとする夫や、生活に役立つものを入れようとする妻や、あるいは位牌を入れたい人もいて、混乱した。
 ようやく家の前までたどりついても、巨大な牛が玄関前にいたり、動物の糞があったりしてどうにもならないケースもあった。
 だから、帰宅できて掃除した人も、せいぜい、家を倉庫として使うしかないのが実情である。

 今、生活復興支援センターである『おだがいさまセンター』を解散しようという声もある。
 しかし、阪神淡路大震災では、3年経過してからの孤独死が目立った。
 まだ、町民は皆、不安を抱えたままであり、解散できない。
 避難所で始まった「生きがい教室」もまだ続いている。
 新たに「語り部事業」も始めた。

 最も気がかりなのは子育て中の家庭である。
 センターの職員が訪ねても出てこないケースが多々、ある。
 周囲から特別な目で見られたくないから、そっとしておいて欲しい、という声がある。
 これからは、次の人生を歩むしかないから構わないで欲しい、という声もある。
 しかし、もしも何かにつまづいた時、親や祖父母や友人から離れており、どこへ相談に行くのか、自分たちを追いつめてしまわないか、本当に心配である。

 郡山市にある学校で暮らす富岡の子供たちの悩みは、家がせまい、自分の部屋がない、友だちと話せないなど、深刻である。
 しかし、富岡の学校へ戻りたいと願っている子供たちは、わずか、15パーセントしかいない。
 震災から1年後に子供たちは詩を作った。
 切れ切れのメモである。
「あの日から1年 私たちは大好きなふるさとから離れてしまった」
「今やりたいことは おいしい給食が食べたい」
「富高は一つの合い言葉」
「私たちにあるのは希望です」
 富岡高校はサッカーとバドミントンとゴルフが強い。
 プロサッカー選手や、女子サッカー選手やプロゴルファーを輩出している。
 全国に散った選手たちは、肩身の狭い思いをしつつがんばっている。
 バドミントンの桃田賢斗選手などは、ハンディキャップをものともせず、世界チャンピオンになった。
 しかし、富岡高校の校舎へは入れない。
 校舎内には、何もかもが、あの日のまま残されている。

 青木氏は訴える。

「何も解決してはいません!
 何も終わってはいません!
 とにかく知っていただきたい。
 福島は今も特別な状態です。
 何一つ手つかずで、どうしようもない人々が今も日本のあちこちで生きているのです!」

 お寺も墓地も使えず、亡くなった方々のお骨は住職のマンションにある。
 お墓参りもできず、お年寄りは呻く。

「こんな状態では死ぬに死ねない」
「仮設住宅では死にたくない」

 こうした結果となり、2年半経ってなお、膨大な数の被災者たちが辛い状況に置かれたままである。

 質問の時間となり、お訊ねした。
「富岡町民の方々は今、原発に対してどうお考えなのでしょうか?
 最大公約数的なところで結構ですので、お教えください」

「アンケートをとったりはしていませんが、恐らく、原発を再稼働してもらいたい人は、一人もいないでしょう。
 浜通りには大学が一校もなく、大きな地元の産業もなく、若者たちの就職先にも恵まれてはいません。
 だから、多くの若者は地元に残らないのです。
 そうした地域に原発ができて、学校で10番以内といった優秀な生徒たちが東電へ就職し、地元に定着しました。
 とても嬉しかったのは確かです。
 しかし、東電からのお金は県へ入り、富岡町へ直接入るのではありません。
 町民には、一年に一度、電気料の中から1万円前後が戻されるだけです。
 確かに原発は雇用の場ではありましたが、私たちが受け入れたのは、安全の保証という交換条件があったからです。
 町民の間では『何かあったら、東電へ逃げろ』とまで言われていました。
 何があってもだいじょうぶであるという町民への〈安全教育〉は実に徹底していました。
 今、町民の怒りは、何かあったらどうするのかということを東電も国も、事実上、起こりえる現実としてほとんど考えてこなかったことに対して向けられています。
 事故の終熄や、安全の確保などが大きな声で宣言されていますが、多くの町民は、こう思っています。
『そう主張するなら、国会議員がまず住んでみたらどうか』
 私自身は、他国のことはいざ知らず、地震の多い日本に原発は要らないと思っています。
 確かに電気料は上がりましたが、すべての原発が稼働していないのに、あれほどの酷暑となった真夏でさえ電力の使用制限は必要なく、今日も、日本中に電気が届いているではありませんか」

 重い機材を持ち、人気(ヒトケ)のない駐車場までお送りした。
 車へ乗り込みつつ顔だけをこちらへ向け、きっぱりと言われた。

「──これは大きな罪ですよ」

 白く薄い照明の下で目にした青木氏の強張った表情と会場では見せなかった深い眼光は忘れられない。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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