コラム

 公開日: 2013-10-12  最終更新日: 2014-06-04

利休の真剣勝負に思う ─変えられるものへの責任─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 ある日、利休が紹安(ショウアン)の掃除を眺めていました。
 紹安は我が子、場所は路地です。
 
 掃除の終わった紹安がホッとした頃、利休は叱りました。
「充分ではない」
 さらに二時(フタトキ…4時間)あまりもかかって再び念入りに掃除をした紹安は報告しました。
「父上、もう私にはこれ以上、何もできません。
 庭石は三度洗いました。
 石灯籠や庭木には、よく水を撒きました。
 苔も生き生きして緑色に輝いています。
 地面には、塵一つ、木の葉一枚、ありはしません」
 宗匠は威厳に満ちた表情で叱りました。
「ばか者、路地の掃除はそういうふうにやるものではない」
 そして、庭へ降り、一本の樹木を揺すりました。
 紅色の木の葉は、塵一つない庭一面に散り敷きました。

 利休の美意識がみごとに表れたできごとですが、私たち市井の民にとっても、考えさせられるところが少なくありません。
 見え、聞こえ、匂う私たちの外界は、生きものである人間が生を営む環境でもあります。
 ちなみに、仏教では、環境世界を器世間(キセケン)と言います。
 人間も、ネコも、キリギリスもすべて、生存を許された〈器〉の中で生まれ、死んでゆきます。

 人間以外の生きものたちと人間にとって、器のありようは大きく異なります。
 彼らは能力の許す範囲で器を選び取るしかありませんが、人間は自分の生存に合わせて器を造り替えることができます。
 渡り鳥も回遊魚も、生存に適した器が破壊されれば現れなくなり、器が地球上のどこにもなくなれば絶滅するしかありません。
 今日(10月12日)のシンポジウム「ガンの渡りとふゆみずたんぼ」のパネリスト呉地正行先生は、雄大な地球を器とし、人間とは異次元の尊厳に満ちた生を営むガンたちと、その器を無自覚に破壊し、生存を危うくさせて恥じない人間の愚かさに気づかれ、数十年の年月をかけて器の確保と改良に努めてこられました。

 さて、小さな路地といえども、そこは器世間であり、器世間から目や耳や鼻に届く情報は、私たちの心のありようを左右します。
 また、心のありようによって器世間の様態は変わります。
 利休にとって、器世間との関わりは常に、自分の心との関わりであり、二十四時間が真剣勝負だったのでしょう。
 なぜ、勝負なのか?
 それは、自分が変えられるもののありようは、自分に責任があるからです。

 作家村上春樹氏はよく、文筆家の「誠実さ」に言及します。
 ブログ「傷ついた日本人へ(その23) ─心の変容、たとえば村上春樹の場合─」に書いたとおり、久しく離れていたジャズについて『意味がなければスイングはない』を書く際、こう考えたそうです。
「僕は一人の誠実な──そう思いたい──音楽のレシピエントとして、また同時に一人の職業的文筆家として(ここでは誠実さは当然の前提条件になる)、音楽についてそろそろ真剣に、腰を据えて語るべきではないかと思いなすようになったのだ。」
 真の創造的行為から誠実さは欠かせません。

 利休が常に器世間と誠実に真剣勝負をしていたことが、まだ、紹安にはわかっていませんでした。
 しかし、この衝撃的な指導法によって紹安は目が醒めたのではないでしょうか。

 利休も、村上春樹氏も、自分が変えられるものについては自分に責任があるという誠実さを強烈に自覚し、誠実でない行為は断じて行いません。
 私たちも、学ぶべきところがあるのではないでしょうか。
 
 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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