コラム

 公開日: 2013-10-15  最終更新日: 2014-06-04

お祖母ちゃんの建墓

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 秋晴れの日、お墓の開眼と納骨の修法を行いました。
 ご近所にある仙台市営いずみ墓園では時折、鋭い鳥の声がするだけです。
 陽射しと気温にはまだ、充分過ぎるほど夏の気配が残っているのに、ふと、音も立てないでやってくる風には晩秋の爽やかな冷気を感じます。
 夕刻となった園内に人の気配はなく、結界の九字を切る声が明確な木霊となって返ってきます。

 眼前に黒々とそびえ立つ堂々たるお墓は、まさに、あの世の〈家〉そのものです。
 すべてが終わり、ご夫婦へ「ご安心されましたね」と声をかけたところ、津波の被災地から来られた方々でした。
 家はすっかりなくなり、お墓は何とか残ったけれど、とうとうこうした決断をされたとのこと。

 それまで拝んでいた墓石を一部だけでも移動する方が結構おられるので、イスに腰掛け、しゃがんだ石屋さんと話し込んでおられるお祖母さんを目の端に入れながら、尋ねてみました。
「よく、すっかり新しくされましたね。
 津波に負けなかったものを使おうということにはならなかったですか?」
 ご主人の答は意外なものでした。
「お祖母ちゃんが、すっかり新しくしなさいと言ったのです。
 そして、スポンサーになってくれました。
 とても私たちだけでは造れませんでした」
 寄り添った奥さんが感に堪えないような目をしながらウンウンと頷いておられます。
 お墓を守り、先祖供養を後代へ伝えて行こうとするご夫婦へ、この建墓がどれほど大きな安心と喜びをもたらしたことか──。
 そして、ご先祖様を守ってきたお祖母ちゃんが、新天地での新たな出発に気持を切り替えて臨もうとしていることは、若い世代へどれほど勇気を与えたか。
 また、若い世代の負担を少しでも少なくしてやろうと相当の資金を出されたであろうお祖母ちゃんは、無言のうちに「この先は、しっかりおやり。私はお前たちを信じているよ」と語りかけておられるのではないか。

 帰り際、何の曇りもないカラリとした表情で腰掛けているお祖母ちゃんにしゃがんでご挨拶しました。
「お天気もよかったし、今日は、本当に安心されましたね。
 どうぞ、お元気で過ごされますように」
 私をやや見下ろす形で、こちらの目を覗き込むようにしながら言われました。
「おかげさまで。
 私の時も、和尚さん、お願いしますよ」
 そして、破顔一笑されました。

 昨日読んだ新聞の記事を思い出しました。
「子供たちの体力は落ちてきている。
 若い人たちの収入は伸びない。
 わりあいゆとりのあるお年寄りの体力も寿命も延びている」
 無我夢中ではたらいた世代が家やお金を残すだけでなく、建墓によって若い世代へ手を差し伸べ、同時に心もつないでゆくことができるならば、はたらきづめだった人生に消えない充実感が一つ、加わるのではないか。
 そう思いつつ車を回し、近くのお墓へお約束していた塔婆を立て、まだ若くして逝った方の御霊へ祈りました。
 棹石のてっぺんにトンボが止まり、微音で唱える般若心経を聴いています。
 私が踵を返すと同時に、彼女も又、どこかへ消え去りました。
 視力に限界があるというのは面白いものです。
 トンボは煙になったのではありませんが、まるで、突然、空から降りて来て、空へ溶け込んでしまったように見えます。
 もしも、人間の目が高性能なロボットのように今の何千倍もの視力を持ったなら、神経はとうてい、ついてゆけないことでしょう。
 ほどほどに見聞きしつつ生きていられるのはありがたいことです。

 目にも足にも自分の老いを感じる機会が増えたことに心で苦笑しながら、思いました。
「さっきのお祖母ちゃんの目や耳はどんな具合かな」
 
 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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