コラム

 公開日: 2013-10-16  最終更新日: 2014-06-04

寺子屋の教え『実語教・童子教』を考える(その63)─いのちの神聖さをつかむ母親─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 寺子屋などで江戸時代まで用いられていた『実語教・童子教』を読んでいます。

「白骨は父の淫
 赤肉(シャクニク)は母の淫
 赤白(シャクビャク)二諦(ニタイ)和して
 五体(ゴタイ)身分(シンブン)と成る  
 胎内に処すること十月(トツキ)
 身心(シンシン)恒(ツネ)に苦労す」
  
 骨格も血肉も、父親の精子と母親の卵子との結合によってできあがります。
 白は父親の精液、赤は母親の経血を象徴する色です。
 諦は真理や真実を意味し、男性の精子と女性の卵子という絶対的なものの合体によってしか、いのちは生まれません。
 液体の中にいる数億個の精子と数十万個の卵子のうち、一対一の和合がたった一組だけ生じ、新たないのちが育まれることは途方もないできごとです。
 ここで説く「諦」と「和」の二文字の持つ意味をよく考えましょう。

 五体とは、身体を頭・首・胸・手・足の五つの部分に分ける考え方です。
 だから、頭まで地面につける五体投地(トウチ)という礼拝は、身体のすべてを地へ伏すことにより、身心のすべてをみ仏へ捧げる誠心の表現法です。
 身分の「分」は「分際」であり、ここで言う「身分」とは、一つの分量を持ち、他から独立した確固たる身体という意味です。

 母親の胎内にいる期間は十月十日(トツキトオカ)と称されます。
『父母恩重経(ブモオンジュウキョウ)』は説きます。

「はじめ胎(タイ…母胎)に受けしより、十月(トツキ)を経(フ)るの間、行・住・坐・臥(ギョウ・ジュウ・ザ・ガ…歩いても止まっても座っても寝ても)、ともにもろもろの苦悩を受く。
 苦悩休(ヤ)む時なきがゆえに、常に好める飲食(オンジキ…飲食物)・衣服を得るも、愛欲の念を生ぜず、ただ一心に安く産まんことを思う。
 月満ち、日足りて、生産(ショウサン…出産)の時いたれば、業風(ゴウフウ…因縁が熟した力)吹きて、これを促し、骨節(ホネフシ)ことごとく痛み、汗膏(アセアブラ)ともに流れて、その苦しみ耐えがたし。
 父も身心戦(オノノ)き恐れて、母と子とを憂念(ユウネン…心配)し、諸親眷属(ショシンケンゾク…近親者や家を手伝う人々)みな悉(コトゴト)く苦悩す。」

 今でこそ、安産はほとんど〈普通〉のできごとと受け止められていますが、わずか2、3世代前までは、母子共に、文字どおりいのちをかけた大事業でした。
 妊娠から出産に至る大変さは当事者にしかわかりません。
 それでも、周囲の人々がおもんばかり、無事を祈る心はいつの時代も変わりません。

 世の母親たちは、こうしたところを通ってきているので、自分のいのち、我が子のいのち、そして生きとし生けるもののいのちに関する感性が強いのではないでしょうか。
 滅ぼされたインデイアンの酋長が言い遺した『酋長シアトルからのメッセージ』にある言葉です。

「母は、わたしにこんな話をした。
 この大地にあるものはみな、わたしたちにとって神聖です。
 松の葉。砂浜。暗い森にたちこめる霧。
 草地も、羽音をたてて飛んでいる虫たちも。
 みんな、わたしたち一族の思い出のなかに、
 神聖なものとしてあるのですよ。」

 苦しみに耐え、いのちがけで新たないのちを生み、育んだ母親がつかんだ「神聖さ」という感覚──。


〈豪雨にもめげず、濡れネズミになって玄関前へ朝食を摂りに現れたミケ子〉

「胎内に処すること十月(トツキ)
 身心(シンシン)恒(ツネ)に苦労す」
 この一節を忘れないだけでも、人の道から逸れずに生きるための強い導きとなるのではないでしょうか。

 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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