コラム

 公開日: 2013-10-18  最終更新日: 2014-06-04

高貴なものと神聖なもの ─被災地で出会った焚き火、炊き出し、古老のこと─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 津波に襲われた海辺の町へ人を探しにでかけた時、人々は体育館や神社などで暮らしていました。
 それぞれがミニ集落のようで、どこか粛然とした気配がありました。
 皆さんはそれぞれ、凄まじい心の沈み込みや動揺を抱えておられるはずなのに、急に出現した小さな社会は静かに統一が保たれています。

 ある体育館では、入り口の履物が揃えられていました。
 ボランティアとおぼしき方々が忙しそうにたちはたらき、小さな子供たちもいるのに──。
 こちらが襟を正させられる思いでした。

 ある神社の境内地には、移動中の集団が野営でもしているような雰囲気がありました。
 男たちは手にした道具で降った雨など水路をつくり、薪を集め、女たちは掃除や炊き出しに精を出していました。
 長老格とおぼしき数人が目を配る様子は、まるで映画の一コマでした。
 
 Aさんの安否を尋ねました。
 長(オサ)とおぼしき古老と数人が一言二言やりとりをし、たちまち判明しました。
 道路が寸断され、電話も公共交通機関もマヒしている人口数十万人の町で、都市部で暮らしていた家族の避難先がわかることは小さからぬ驚きでした。
 やがて数十年ぶりで巡り会った知人と握手した時の感触は、自分の右手を眺めると今でもよみがえる思いです。

 最近、手にした原広司氏著『集落の教え100』にこんな一節を見つけました。

「高貴なるものと、神聖なるものとを峻別せよ。
 集落には、高貴なるものは必要としないが、神聖なるものがなかったなら集落は成立しない。」

 たちまち、曇り空の下にあった焚き火と炊き出しと古老たちを思い出しました。
 天災で〈失った人々〉が素(ス)のままで肩を寄せ合った時、自然に発生した秩序や協同などを支えていたのは、まぎれもなく〈神聖な何ものか〉でした。
 お互いが失った者同士であり、着ものをまとってはいても、裸同然であるのは同じです。
 そこになぜ、混乱と正反対の状況が生まれたのか?
 少なくともあの境内地においては、古老の存在が決定的な意味を持っていたように思われます。
 尋ね人が見つかったことで推測できるとおり、普段、町内会などの組織がはたらき、お互いに顔の見えるおつき合いが成立していたことも、もちろん、大きなポイントです。
 しかしそれは、必要条件ではあっても、十分条件ではないと思われます。
 あの場における古老の叡智は、ご先祖様や神々や自然につながる神聖な何かを含んでいたのではないでしょうか。

 津波の被災地では、家々が建ち並ぶ前に、手作りの御輿などを担ぐお祭が早々と復活しました。
 都市部で企画された子供たちの御神輿担ぎが、信教の自由を妨げるからと潰されてしまうような〈さかしらな心〉がはたらく余地などありません。
 人が集まり一体となって生を営む時、きっと「神聖なるもの」は欠かせないのです。
 それは人に宿り、自然に宿り、社寺に宿っています。
 私たちは、原広司氏の言う「成立しない」はずの空間で生きる時、心身にさまざまな障りが発生するのではないでしょうか?
 高貴なものと神聖なもの──。
 よく考えてみましょう。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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