コラム

 公開日: 2013-10-19  最終更新日: 2014-06-04

水に溶け、土へ還る人間 ─縄文土器と自然墓─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 当山の自然墓は深い穴になっており、底が空いている。
 上に墓石はなく、穴は土に覆われ、土は植物たちに包まれている。
 左側に立つ山桜がやや覆い被さり、右側には常緑の高野槇が天を目ざして立つ。
 正面で合掌すると、草むらの向こうには七つ森の主峰、笹倉山が横たわっている。

 酒井健氏が「縄文のコスモロジー」に書いている。

「何百年か前に人間の遺体が納められたはずの大きな甕を開けてみたら、中には静かに水が漲っていた。
 底の方に透きとおった水があるばかりで、骨も髪もみな溶けて、遺体を思わせるものは何もなかった。
 人体は最終的には水に帰る。
 数年前にかなり年配の方から聞いた話だ。
 真偽のほどをあれこれ考えるより、いい話だなと率直に受けとめたのを覚えている。」

 氏は、長野県茅野市の尖石縄文考古館で縄文土器の説明を受けた。

「縄文時代の住居跡から、あるいは集落中央の広場らしきところから、大ぶりの甕が発見された。
 とば口の面が当時の地面と同じになるようにして垂直に埋められていた。
 逆さの恰好で、つまり底が上にくるようなかたちで、埋められていたものもある。
 いずれの場合も甕の底部は欠落していた。
 完成品の底部を切断したらしい。 
 底なしの深鉢型の甕だった。
 地面から甕のなかへ、そして土のなかへ、文字どおり筒抜けの状態だったわけだ。
 ただしそのとば口には、あるいは上向きにされた底なしの底部には、しばしば平たい石で蓋がされていた。」

 遺骨などはまったくないが、この甕には嬰児や幼児の遺体が何体も納められたと考えられている。
 氏は思う。

「水を含んだ大きな土器の土、その下の土が、遺体の肉を、骨を髪を、水へ帰していった。
 何百年かして縄文人たちは、その水を恵みの水として口に含んでいたはずだ。
 彼らは自然界の大きな循環をよく知っていたし、自分たちがそのなかに置かれていることに自覚的だった。」

 この時代の土器には、水煙や水紋の装飾が多く、縄文人が水へ畏敬の念を持っていたことがうかがわれる。

 晴れた日に自然墓の前に立つと、笹倉山は限りなく優しい。
 どっしりした姿が安心感をもたらしてくれる。
 雨の日に自然墓の前に立っても、笹倉山は限りなく優しい。
 植物たちへ降りそそぎ、土へ染み込む雨が、無限の受容を感じさせてくれる。

 人間の胎児は、体重の90パーセントが水である。
 生まれてまもない頃は75パーセント、大人は60~65パーセント、年をとれば50~55パーセントになるとされている。
 何のことはない、身体は水を蓄えた器なのだ。
 こうした視点で考えると、火葬とは、それまではたらいていた水を腐る前に天地へ還し、器も腐る前にいったん水から分離し、自然の水によって溶かされて土へ還る準備をするようなものである。
 腐敗を見るに耐えられないのは人間の情である。

 降った雨が生きとし生けるものを潤し、地上を流れ、地中へ浸透し、地上や川や海から蒸発して雲となり、また私たちの頭上から降りそそぐ大いなる水の循環の中に生きているというイメージ。
 そして、頭や手足などとしてはたらいてくれている骨格が白いお骨となり、還って行く大地はどっしりした笹倉山の一部でもあるというイメージ。
 こうした想像はどれほど私たちの心に穏やかなものを生じさせることか。

 形あるお墓へ思いを託すのも一法、自然へ溶け込み消えてゆくままに任せるのも一法、ここに文化がある。

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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