コラム

 公開日: 2013-10-21  最終更新日: 2014-06-04

NHKテレビ「うつ病 ~防衛本能がもたらす宿命~」を観て(その1)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 10月20日、NHKテレビは、「病の起源 第3集」として「うつ病 ~防衛本能がもたらす宿命~」を放映した。
 生まれ変わったなら、今度は科学も本格的に学びたいと願っている身としては、理性の眼を覆っていた薄膜が科学のメスによって切除され、埋もれていた新眼が開いたという思いだった。
 以下、メモにより、番組を復習してみます。

 今、世界中で3500万人以上、日本だけでも100万人を超えるうつ病患者がいる。
 現代人の宿痾(シュクア)とも言うべき病気は、およそ700万年前の人類誕生まで、起源が遡(サカノボ)られる。
 人類は進化の過程でうつ病の原因を抱え込んできたが、今現在、うつ病とまったく無縁に暮らしている人々がおり、今は、〈かつて行っていた暮らし〉を生活に採り入れれば病気の克服が可能であることまで解明されている。

1 第一の原因は天敵

 うつ病にかかった人は、脳の一部が萎縮している。
 その原因は扁桃体(ヘントウタイ)にある。
(ウィキペデイアによれば、扁桃体とは、「アーモンド形の神経細胞の集まりで、ヒトを含む高等脊椎動物の側頭葉内側の奥に存在する。扁桃体は情動反応の処理と記憶において主要な役割を持つことが示されており、大脳辺縁系の一部であると考えられている。」)
 扁桃体の活動が強まると、恐怖や悲しみや不安が引き起こされる。

 今からおよそ5億2000万年前、人類の先祖である魚類は節足類を天敵とし、厳しい生存競争をくり広げていた。
 節足類は神経細胞が全身にばらけているが、魚類は身を守るために神経細胞が集中する脳を発達させ、扁桃体が生まれた。
 敵を察知すると扁桃体がはたらいてストレスホルモンを分泌し、全身の筋肉が活性化し、結果的に鋭い動きで敵から逃れられるのである。
 ここで天敵に対する防衛本能のはたらきが確立された。
 
 ゼブラフィッシュを天敵がいる水槽へ入れておくと、うつ病に罹る。
 入れた当初はさかんに逃げ回っているが、ある時期を境にしてほとんど動かなくなる。
 ストレスホルモンの分泌が止まらなくなると、脳の神経細胞がダメージを受け、うつ状態が生まれる。
 扁桃体が過剰にはたらく→全身へ過剰なストレスホルモンが分泌される→脳に及ぶとダメージを与えて栄養不足となる→脳が萎縮する→意欲や行動が低下する。
 つまり、扁桃体の暴走によってうつ病が発症するのである。

2 第二の原因は孤独

 魚類からは虫類、そしてほ乳類へと進化をたどる過程において、人類は扁桃体のおかげで生き延びたが、扁桃体は天敵以外にも反応するようになり、うつ病の新たな原因が生じた。
 
 チンパンジーは集団で暮らし、子供を育てるのも、敵と戦うのも、集団の力による。
 病気になったチンパンジーを長い間、群れから離しておいたところ、一日中室内で過ごすようになった。
 飼育している担当者は、「まるで幽霊のようです」と言う。
 孤独になると不安や恐怖が生まれ、扁桃体が激しく活動してしまい、うつ病になる。
 孤独がストレスを生じるのは、仲間との絆が強いタイプの生きものの宿命となった。

3 第三の原因は記憶

 およそ370万年前、アフリカのサバンナにいた人類は、猛獣に襲われるようになった。
 そこでは、恐怖の記憶が生き延びるために欠かせなかった。
 たとえば、ライオンの縄張りへ入り込み殺されそうになったことを覚えていればこそ、二度とそこへ近づかないようになる。
 扁桃体が激しく活動すると、記憶をつかさどる海馬(カイバ)もはたらき、記憶が生まれる。
 何度も恐怖の記憶がよみがえるうちに、現実は繰り返されていないにもかかわらず扁桃体が連動してストレスホルモンを生み、うつ病になる。
(ウィキペデイアによれば、海馬とは、「大脳辺縁系の一部である、海馬体の一部。特徴的な層構造を持ち、脳の記憶や空間学習能力に関わる脳の器官。」)

4 第四の原因は言語

 およそ190万年前、人類の脳にはブローカ野(ヤ)という言語をつかさどる部位が生じた。
 声を用いて情報を伝え合ううちに、他人から恐怖の体験について聞かされただけでも扁桃体が強く活動するようになった。

5 うつ病と無縁な人々の存在

 人類は、天敵+孤独+記憶+言葉とうつ病の原因を抱え込んできたが、かつてはうまく対応し、うつ病に罹らなかった。
 アフリカのタンザニアに暮らす「ハッザ族」の人々は、今でもうつ病と無縁である。
 彼らは、暮らしぶりへの質問に答えた。

「朝起きたなら、それだけで幸せです」
「不眠の体験はありません」
「私は家族にとって価値のある人間です」(老婆の回答)

 狩猟を生活の糧とし、獲物を必ず平等に分け合う暮らしでは悩みもストレスもなく、うつ病は発症しない。
 彼らは言う。

「どんなに空腹でも、獲物を独り占めすることはありません」

6 うつ病の文明的原因は平等の消失

 およそ40万年前、集団の結束で狩りを始めた人類は平等だった。
 平等に生きる「ハッザ族」の人々は、いまだにうつ病を発症していない。
 お金を分け合う実験によると、自分のものと他人のものとが不平等であれば、損をしても得をしても扁桃体は激しくはたらくが、平等(公平)であれば、扁桃体は反応しない。
 人類はもともと、〈平等の精神〉を持っていたのでうつ病に罹らなかったが、それが失われてから発症するするようになった。
 不平等な社会になり、扁桃体を暴走させない仕組みもなくなった。

7 不平等社会の出現

 ペンシルベニア大学のミッチェル・ロスマン博士によれば、狩猟生活から農業を中心とした社会への大転換により貧富の差が生まれた。
 それは、穀物を権力に応じて分けるようになった遥かメソポタミア文明の遺跡にも明らかである。
 農耕を主とする文明社会によって平等が崩れ、人類は再び、うつ病への道を歩み始めた。

8 うつ病の克服法

 現代では職業の違いも、うつ病の発症と関係がある。
 専門職や技能職に就いている人々と、営業・事務や非技能職に就いている人々とでは、うつ病の発症率に2倍以上の違いがある。
 社会的立場によって、受けるストレスの強さがまったく異なる。
 人類自らが生んだ文明によって平等を崩し、うつ病を生む社会をつくってしまったのである。
 格差と不平等が広がる社会、人間関係の薄いたやすく孤独になってしまう社会では、恐怖、妬み、孤独感が蔓延し大きなストレスとなる。

 世界では、薬による治療法だけではなく、進化の観点からさまざまな治療法が用いられ始めている。
 ドイツの脳深部刺激法(DBS)では、ペースメーカーからの電流で扁桃体のはたらきをコントロールしている。
 生活改善療法であるセラピューティック・ライフスタイル・チェンジ(TLC)では、分け隔てのない仲間との付き合いなどによって著しい快癒が見られている。
 定期的な運動は萎縮した脳の神経細胞を再生させる。
 太陽と共に生きる規則正しい生活は、ストレスホルモンの分泌を正常化する。
 こうした〈人間本来の暮らし〉を採り入れることによってうつ病は克服されつつある。
 
 回復過程に入った患者Aさんは言う。

「人とのふれ合いにおいて挨拶はとても大切です」
「絶対トンネルから抜けられるはずです」

 うつ病は、社会全体で考えねばならない病気なのである。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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