コラム

 公開日: 2013-10-22  最終更新日: 2014-06-04

NHKテレビ「うつ病 ~防衛本能がもたらす宿命~」を観て(その2)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 当山の人生相談やご加持において最も多いのは、心の病気に関する問題である。
 ご自身がうつ病などを抱えてご来山される場合もあれば、ご家族が来られる場合もある。
 修法し、皆さんから個別具体的なお話をお聴きすると、原因についておおよその見当はつく。
 しかし、社会的現象として、なぜ、これほどまでに心を病む方、特にうつ病に罹る方が多くなったかについては釈然としなかった。

 専門家は「ストレスの多い社会になったから」と指摘する。
 では、半世紀前はストレスが少なかったか?
 どうしても、そうは思えない。
 中学校を卒業して間もなく、若者たちは「金の卵」と称せられつつ右も左もわからない東京へとかり出され、流れ作業のような仕事に就いた。
 営業担当者が根性を強める合宿にぶち込まれ、駅前で大声を上げさせられたりした。
 受験戦争も楽ではなかった。
 しかし、心の根を弱らせてしまった人々があちこちで苦しんでいたという印象はない。
 学校や企業に心の問題に対応する専門家が待機してはいなかった。
 学校では担任の教師が生徒と家庭の様子をよく把握し、学校で起こる問題のほとんどは、学校と家庭の信頼関係がベースとなって解決された。
 企業においては同僚や先輩や上司と語り合い、酒を飲み、脱落は防がれた。
 もちろん精神科はあっても社会に病人は少なく、病気になられた方々は、むしろ少数者であるがゆえに差別的な眼で見られる場合があり、家族の方々にも、できれば事実を隠しておきたいという気持があった。
 托鉢でお訪ねしたお宅に心を病んだ方がおられる様子はときおり眼にしたが、ほんとんど例外なくそこは孤立し、隔離された空間特有の湿り気を感じさせられた。
 半世紀前もストレスはあり、中には負けてしまう方々もおられたが、ごく少数でしかなく、心の変調を病気の段階まで行かせないための何かが、個人にも社会にもあったのではないかと思われる。

 NHKの「うつ病 ~防衛本能がもたらす宿命~」は、うつ病が発症するメカニズムを、素人にもわかりやすく解明してくれた。
 天敵に負けず生き延びるためのシステムが、作動する条件の多様化によって本来の目的以外の場合も作動してしまい、生き延びるという目的と反対の結果へと招きかねない状況になっている事実は、衝撃的である。
 人間は、叡智によってここを突破すれば、また進化の階段を一段、上れることだろう。

 NKHは、うつ病と無縁に暮らしている人々の存在を挙げ、メカニズムが作動する余分な条件を排除する方向について示唆はした。
 キーワードは「平等」である。
 平等に生きることが空気を吸うように当然と思われ、社会が公正に機能しているならばストレスは生じることなく、うつ病も発症しない。
 これは、今現在、地球上に現前している事実でる。
 一方、〈穀物を作り蓄える〉技術によって、メソポタミア文明の昔から貧富の差が生じ、それは工業や商業の発達に伴って拡大し、自由こそが最大の価値と考える世界観によって自由競争の原理はほとんど神格化されている。
 さらにグローバル社会は世界を股にかけた競走を激化させ、貧富の差は、個人的レベルで、集団的レベルで、国家的レベルで拡大の一途を辿っている。
 たとえば、貧しい国の医師が富んだ国へ移住すれば数倍もの収入を得られるため、優秀な医師の静かな大移動が起こりつつあるEU諸国の中では、深刻な医療格差が進行している。

 狩猟生活では〈蓄えられない〉以上、獲物は分け合って食べるしかなく、自ずから平等になる。
 しかし、農耕生活ではなまじ〈蓄えられる〉ために、蓄える意志と力のある権力者が生きる糧を独占する方向へと進み、あまり蓄えられない人々の生殺与奪の権を握るようになった。
 穀物を育てることによって人間がより安定的に生きられるようになるに従い、皮肉なことに心の平安をもたらす「平等」がどんどん失われてきた。
 そして、人間が生き延びるための脳のシステムは今や、激しい不平等によって恒常的に作動し続け、心から平安を奪うだけでなく、生き延びる力さえ奪おうとしている。
 何という逆理だろうか。
 しかし、私たちは、自分も自由競争によって勝者になれる可能性があるというニンジンを目の前にぶら下げられたからといって、敗者や弱者を見捨て切れるほど良心が摩滅してはいない。

 敗者となる可能性への不安と、一旦敗れた者へ事実上再チャレンジを許さない世間の酷薄さへの絶望が、最も厚い暗雲となって社会を覆いつつある。
 良心の灯火とそれを消し去ろうとする暗雲との戦いにどうすれば勝利できるか……。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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