コラム

 公開日: 2013-10-24  最終更新日: 2014-06-04

NHKテレビ「うつ病 ~防衛本能がもたらす宿命~」を観て(その4)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






〈小雨の中、『法楽農園』をお守りくださる守本尊様周辺の整備は日々、続けられています〉

 NKHの番組に学び、うつ病発症のメカニズムを考えてきた。
 明らかになったのは、生き延びるための防衛本能としてスタートした扁桃体の仕組みが、集団生活をするほ乳類になり、言語を用いる人間になり、農耕によって安定的に生を営む文明社会を構築するに至って、過剰なストレスホルモンを生み、生命力を摩滅させる諸刃の剣となってしまったという事実である。
 もう一度、〈過剰〉となる状況を復習してみよう。

 第三の敵である記憶についてはどうか?

 人間は危険な目に遭ったできごとを記憶する力が高まり、二度と同じ場面に遭わないように気をつけることによって、より安全に生き延びる力をつけてきた。
 私たちは、幼子を熱いモノや切れるモノへ近づけないだけでなく、むしろ、早めに「あっ、熱い!」「あっ、痛い!」という体験をさせ、危険を察知する力が身につくよう導く。
 また、東日本大震災の後、古老から言い伝えられた犠牲や被害の記憶に照らし合わせて行動し、助かった方々がおられる。
 東日本大震災で被害に遭った建造物などを災害遺構として保存し、後世への教訓とする動きがあちこちにある。
 もしも記憶力が弱かったなら、何度でも同じ天敵や災害などにやられ、生まれてから一人で生きられるようになるまでの時間が長い人類は生き延びてこられなかったかも知れない。

 記憶がこうした〈同じ過ちを繰り返させない〉ための強大な助っ人なのに、恐怖や不安や悲しみや苦しみといったものが伴うできごとを思い出しすぎてストレスホルモンの攻撃を受けてしまうとはどういうことなのだろうか?
 確かに、前述の災害遺構に関しても、「目にするとフラッシュバックが起こって辛いから勘弁して欲しい」という立場がある。
 残すか、それとも残さざるか、現実は一つでしかあり得ないのに、私たちはこうありたいと正反対の希望を抱く。
 しかも、正当な希望を強く……。
 どうすればよいのだろうか?

 まず、「人は傷ついた記憶をよみがえらせることによって再び傷つく場合がある」という事実についての知識をなるべく広く共有することが大切なのではなかろうか。
 危機に反応する扁桃体も、記憶を司る海馬も種を保存するためにせっかく発達し、進化してきた一方で、私たちはその高性能なメカニズムをコントロールするための高度な知識と繊細な言動が求められている。
 皆が学ばず、無神経であれば、敏感な人から傷つき、足どりが重くなり、やがては共に生きて行くことが難しくなる。
 人類はすでに絆の中でしか生きられず、絆の中でこそ人間たり得る生きものとしてここまできた。
 私たちは、諸刃の剣を使いこなせるかどうか、試練の場に立たされている。
 
 知識、知見と思いやりがあれば〈内容のある話し合い〉ができる。
 我慢は欠かせないが、相手の我慢を想像する心さえあれば、やがては必ず折り合いがつくことだろう。
 報道のありようにも一孝が必要ではないか?
 より現実感を伴った画面やセリフを流したいと努力するのは当然だが、ものには限度がある。
 報道関係者も視聴者も双方に思いやりと想像力がはたらけば、これもまた、そこそこのところが見つかるに違いない。
 そうした〈ほどほど〉へたどり着くための良識を、私たちはまだ、失ってはいないはずだ。

 第四の敵である言葉についてはどうか?

 私たちは言葉によって情報を共有し、危機を乗り越えてここまできた。
 言葉を用いて考え、ブローカ野(ヤ)が性能を高めつつあらゆる文化を創ってきた。
(ウィキペデイアによれば、ブローカ野は「人の脳の領域の一部で、運動性言語中枢とも呼ばれ、言語処理、及び音声言語、手話の産出と理解に関わっている。ごく単純に言えば、ノド、唇、舌などを動かして言語を発する役目を負っている。」)
 言葉は人間を人間たらしめている最も貴重な道具である。

 しかし、「危険な目に遭った」と聞かされた時、「ああ、そうか。じゃあ、気をつけよう」と考るだけとは限らない。
 その恐ろしさに身震いし、あたかも現場にいるかのように扁桃体がはたらき、強いストレスホルモンが生じる場合もある。
 そして、ストレスホルモンの強さがあるレベルを超えればうつ病へと傾斜してゆく。
 私たちは実に高性能な生きものとなったが、性能をやや、持てあます面もある。
 この事態は、環境世界である器世間(キセケン)にも鏡のように表れている。
 便利な機械を作り、機会を動かす時、いのちを保つ空気が汚れる。
 道具を用いた意志の実現を望みながら、はからずも、道具によって傷つき、弱らされ、場合によってはいのちにもかかわる。
 環境汚染、原発事故など、問題はすべてこの二面性がもたらしている。

 対応としては、前述の〈記憶〉と同じではなかろうか。
 事実、実態と向き合い、知識、知見と思いやりを総動員するしかない。

 最終回の次回は、「平等」の問題を考えたい。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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