コラム

 公開日: 2013-10-25  最終更新日: 2014-06-04

NHKテレビ「うつ病 ~防衛本能がもたらす宿命~」を観て(その5)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 これまで、ストレスが発生し、うつ病に至る4つのポイントを考えてきた。
 天敵・孤独・記憶・言葉である。
 私たちは、進化の結果、こうした問題に対処でき生き延びられる者として、一方では、対処法としてのメカニズムが暴走して傷つく者となって今、存在している。
 そして、神ならぬ身である以上、自分でメカニズムそのものを変えたり、あるいは先々の世で進化してゆく方向を変えたりすることはできない。
 ならば、うつ病を避ける方法はただ一つ、メカニズムが暴走するきっかけを限りなく少なくするしかない。
 そして、最後にたどりついたのが〈平等の回復〉である。

 ここまで何度もとりあげたとおり、実験によって、ストレスホルモンが動く場合と動かない場合が確認されている。
 持ちものに不平等感があれば、自分が多く少なく持っていようが少なく持っていようが動き、不平等感のない状況では動かない。
 また、観察によって、ストレスホルモンを傷つく方向で動かさずに生きている人々がいることが確認されている。
 食べものが平等に配分され、不平等感のない生活では、ストレスホルモンの暴走は起きず、うつ病もない。

 つまり、私たちが平等感を持ち、社会に対して不平等という不公平感をあまり感じずに生きられるならば、うつ病は克服できるし、今のところ、そうする以外に罹患を防ぐ手立てはないことは明らかである。
 世界中で3500万人以上、日本だけでも100万人を超える人々がうつ病で悩んでいる文明的原因は不平等感にあり、このままでは確実にうつ病患者が増え続けるであろうし、過剰なストレスホルモンが今後、うつ病だけでなく、いかなる形で心身を破壊するようになるかもわからない。
 打つべき手は一つ、不平等感の払拭に尽きる。

 今の社会はいかにして私たちへ不平等感を抱かせ、無用のストレスホルモンを発生させているか?
 固定した視点を少しだけずらしてみれば、あるいは色眼鏡を外してみれば、どなたにもすぐ観えるはずである。
 視点とは、色眼鏡とは、自由が一番という先入観である。

 あらゆる生きものにとって、自由に生きられること以上、快適なものはない。
 人間の歴史も、個人個人それぞれの自由の獲得をめざして進んできたのではないか。
 私たちにとって、自由に勝るありようはなかろうとさえ思われる。
 そして、平等は、平等に自由でありたいという考え方に吸収され、さらには、自由競争ができる〈機会の平等〉に限定された観念になっている。
 この思考によって社会の仕組みをつくってきた日本はおそらく、世界でもっとも平等に競争ができる社会になったのではないか。
 その一方、うつ病の患者数はここ20年でほぼ、2倍になった。
 うつ病発症の仕組みと競争社会の進展、そしてさまざまな格差の拡大を見れば、〈平等に競争した結果としてもたらされた不平等な状態〉が患者の倍増につながっていると考えられる。
 打つべき手は一つ、不平等の是正ではないか。
 
 ところで、ハートクリニック(町田市)さんのHPによれば、世界における精神疾患の状態は以下のとおりである。

○不安障害・気分障害・衝動制御障害・物質使用障害合計の人口に対する占有率
アメリカ合衆国   26.4%
ウクライナ     20.5%
フランス      18.4%
コロンビア     17.8%
レバノン      16.9%
オランダ      14.9%
メキシコ      12.2%
ベルギー      12.0%
スペイン      9.2%
ドイツ・中国の北京 9.1%
日本        8.8%
イタリア      8.2%
ナイジェリア    4.7%
中国の上海     4.3%

 日本はまだまだだいじょうぶ、ここでさらに叡智を結集して自由と平等のバランスをとれば、必ず、うつ病に悩む人々を救い、罹患者を減らせるはずである。
 そして、こうした現代文明の方向性へ一つの理想的モデルを示せるかも知れない。
 さらに言えば、生まれ変わり死に変わりするうちに、いきものとしての進化の方向が変わるかも知れない。

 自由とモノ金を相対的にたくさん持っている〈持てる者〉がさらに豊かになれば、相対的に〈持たざる者〉も、結果的に自由とモノ金に恵まれるようになり、〈持てる者〉へ近づけるという理論は怪しい。
 10を持っている者が100を持つようになった時に、1を持っている者が2を持てるようになったからといって、公正な社会と言えるのか?
 そうなる過程で生じる不平等感によって心身を病む者が生じる社会的マイナスは、どう評価されているのか?
 心身を病む人々の苦しみを放置しながら得られる豊かさとは何か?
 さらに言えば、実験でわかるとおり〈持てる者〉にもストレスが発生している。
 優越感・高慢心・無慈悲さ、あるいは怠惰や堕落はないか?
 これらはすべて煩悩(ボンノウ)であり、モノ金が無くても有っても煩悩ははたらく。
 だから、お釈迦様もお大師様も、王と民とへひとしく教えを説かれた。

 ここから先は宗教の世界へ入ってしまいます。
 今回は、科学が解明したうつ病発生のメカニズムに触発され、私たちの社会のありようを考えました。
 社会は仏法で言う器世間(キセケン…環境世界)の一部であり、そのありようは心のありように密接に関連しているので、つい、宗教者が出すぎたマネをしてしまいました。
 最後に一つ、うつ病対策としてつけ加えたいのは、〈自然への心身の解放〉です。
 作家C・Wニコル氏は、リチャード・ルーブが言い出した「自然欠乏症」に関する警告を盛んに発しておられます。
 10月22日付の河北新報は「自然に触れる教育 必要」において氏の言葉を紹介しました。

「自然とふれあう機会が少ない子どもには、成長過程で思わぬ障害が現れることがある。
 じっとしていられない、集中力がない、友だちとうまく遊べない、がまんができずかんしゃくを起こす。
 こうした症状を総称して『自然欠乏症(症候群)』と呼ぶ。」

 自然欠乏症を予防する心構えや行動は、ストレスが発生する状況に対して強い人格や、発生したストレスをうまく解消できる人格の形成に役立つような気がしてなりません。
 それは、祈りに通じているのではないかという感覚もあります。
 いずれにしても、NHKテレビが指摘するとおり、うつ病は、社会全体で考えねばならない病気なのだと思っています。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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