コラム

 公開日: 2013-10-27  最終更新日: 2014-06-04

生きる悲しみを希望や勇気へ ─辛抱を見せてくれた高倉健の受賞─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈昭和53年作『冬の華』より〉

 文化勲章を受章した俳優高倉健氏(82歳)はコメントを発表した。
 全文である。

「映画俳優として五十八年、二〇五本の映画に出演させていただきました。
 大学卒業後、生きるために出会った職業でしたが、俳優養成所では『ほかの人の邪魔になるから見学していて下さい』と云われる落ちこぼれでした。
 それでも『辛抱ばい』という母からの言葉を胸に、国内外の多くの監督から刺激を受け、それぞれの役の人物の生きざまを通して社会を知り世界を観ました。
 映画は国境を越え言葉を越えて、〝生きる悲しみ〟を希望や勇気に変えることができる力を秘めていることを知りました。
 今後も、この国に生まれて良かったと思える人物像を演じられるよう、人生を愛する心、感動する心を養い続けたいと思います。
 映画俳優・高倉健を支えて下さった多くの方々に、深謝申し上げます。
 どうもありがとうございました。
 平成二十五年十月吉日 高倉健」

 涙した。
 銀幕で、やや顎を引き、目線を下げ、奥歯を噛みながら沈黙するシーンに私たちがなぜ惹かれてきたか、今さらながらに、よくよくわかった。
 高倉健は、私たちに代わって〈辛抱〉してくれたのである。
 彼の辛抱には、私たちのようなごまかしがない。
 私たちは辛抱に耐えられず、どこかで気を抜き、忘れてしまう時間を必要とするが、銀幕の彼にはそうした緩みがない。
 逃げず、ごまかさず、黙ってとことん受け容れてしまう。
 底なし沼のような、あるいはブラックホールのような、限界のない受容力。
 とてつもない大きさと深さを持った容器いっぱいに辛抱が溜まり、世間の不条理や悪が極まった時、辛抱によっていつしか鋼鉄のような固さを帯びていた意志力が、鍛え上げられた名刀の一閃をもたらす。
 破邪の剣と一体になった彼には保身のひとかけらもなく、保身の弱さを持った相手は必ず倒される。
 以前、ブログ『不安の克服』へ、江戸時代の逸話を書いた。
 ある因縁で浪人者と立ち合わねばならなくなった茶坊主が、「剣を抜いたならまっすぐ上段に振りかぶって目をつむり、相手の剣が自分の体に触れた瞬間に剣を振り下ろせ」と伝授を受け、実践した。
 鍛えに鍛えた茶坊主が石のようになった時、浪人はたじろいで降参した。
 腕に覚えのある浪人が斬り込めば勝敗の行方はわからないが、保身の我執は足を踏みとどまらせた。
 保身のない究極の姿勢が勝利をもたらした。
 現実の世界ではそこまでゆけない私たちにとって、銀幕の高倉健は、究極の実践者だった。

 彼は、「生きる悲しみ」と言う。
 その悲しみは「哀しみ」でもあり、「切なさ」と言い換えることもできそうである。
 熱い思いや清らかな心があっても、それが命ずるがままに生きられず、時として大きな過ちをも犯してしまう愛すべき人間。
 正邪善悪を知ってはいても、義理人情という別な道理にもまた強く動かされる人間。
 成功と失敗をくり返し、得意と失意、笑いと涙の間で喜怒哀楽をくり返す人間。
 人間としての生の現実は、あまりにも切ない。
 切なさに悲しみの色が濃くなる時、私たちは生きる力を失いかける。
 そこで支えてくれるのが希望や勇気である。
 希望や勇気は生まれた時に小さくても、抱きられ続けることによって必ず成長し、やがては生きる柱となる。
 彼は「役の人物」に成りきり、それを見せてくれた。

 82歳になり「この国に生まれて良かったと思える人物像」を見せてくれるという。
 銀幕の彼は、養い続ける「人生を愛する心、感動する心」を私たちへ感じさせ続けて欲しい。
 感謝し、期待したい。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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