コラム

 公開日: 2013-10-28  最終更新日: 2014-06-04

真智の開発をめざして(その2) ─五智の教え・認めること─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 当山はかつて、寺子屋の目標の一つとして「真智の開発」を挙げました。
 それは、人生の真実に基づいた智慧を磨きだしてゆくことです。
 それは、「おかげさま」と心底から思えない妄知(モウチ)と、「万事我がため」でしかない邪知(ジャチ)をはたらかせない道でもあります。
 どのようにしてそれは可能になるか?
 これから、師の伝授による五智の教えを25回に分けて記しておきます。
 
 師が説かれた「五智」とは、優しさ・厳しさ・正しさ・優雅さ・尊さであり、その五光により、妄知も邪知も消え失せます。

 前回、「〈信じる〉〈認める〉〈教える〉〈与える〉〈守る〉という五つの行為」と書いたところ、ご質問がありました。
「心に思うことも行為なのですか?」
 いのちがはたらき、後に結果をもたらす原因になるという意味で、行為です。
 身体に拠る行為を身業(シンゴウ)、言葉による行為を語業(ゴゴウ)、心による行為を意業(イゴウ)と呼びます。
 なぜ「業(ゴウ)」と呼ぶかと言えば、煩悩がある私たちは、善き結果をもたらす善業(ゼンゴウ)も、悪しき結果をもたらす悪業(アクゴウ)も行いますが、いずれもが迷いの六道(ロクドウ)を経巡る原因となるからです。
 以前、大日如来様のご加護に関する故事を書きました。

 昔、ある所に愚かな女性がいた。
 因果の道理を知らず、仏神を信じず、50歳を過ぎてから7つの病気に罹り、亡くなった。
 ところが、6日後に甦り、ハラハラと涙を流しながら己の愚かさを懺悔する。
 周囲の者たちは驚き怪しみ、どうしたことかと訊ねた。
 女性の話である。
「私は、実に不可思議な体験をしました。
 死んで逆銃火獄へ行きましたが、閻魔王(エンマオウ)が一巻の書物を調べて言うには、
『汝は、昔、巧言和尚のところへ参詣したおり、金剛界のマンダラをかけた伝法道場を礼拝した。
 そうした大きな功徳のある者は、まだ死すべきではない。
 速やかに人間界へ還そう』
 こうした成り行きでこの世へ戻ったのです。」
 女性は因果を知り、仏道を志したという。

 このように、私たちは、自分の好みや損得などを第一にして生きる場面が多く、道徳としての善悪を頭で知ってはいても、何が本当の善業か、何が本当の悪業であるかは、判然としない中で右往左往しがちです。
 善業と悪業が入り交じった生活の結果として、最も悪業が重なって行く地獄界から、最も善業が重なって行く天界までの六道(ロクドウ)から出られません。
 ちなみに、こうしたぐるぐる巡る輪廻(リンネ)の感覚は、仏道に限ったものではなく、インドはもちろん、ギリシャの人々も広く持っていました。
 ピタゴラスの定理で有名なピタゴラスに率いられた一団も又、死後、〈なくならない何ものか〉である霊魂が汚れた肉体へ再び還ってくることなく、救済の世界へと脱してゆくことこそを理想と考えていたのです。

 こうした業(ゴウ)に対して、悟りの世界におられるみ仏のおいのちのおはたらきには当然、穢れがないので、それを身密(シンミツ)・口密(クミツ)・意密(イミツ)の三密(サンミツ)といいます。
 密は秘密の意味であり、秘密と称する理由は、私たちの日常生活とは次元が違うからであり、それを如来秘密といいます。
 また、私たちに、如来のおはらたきを感じとる能力が充分に具わっていないからでもあり、それを衆生(シュジョウ)秘密といいます。
 仏道修行は、凡夫の三業(サンゴウ)を清め、如来の三密(サンミツ)へと転じて行く道です。

 以上の意味で、行うことだけではなく、思うことも、語ることも皆、結果をもたらす〈行為〉なのです。

 さて、今回は優しさに欠かせない「認める」について考えてみましょう。
 これは、子育てや部下育てなどを行った経験のある方なら大方、おわかりになっておられるはずです。
 どなたも「長所を伸ばし、欠点を克服させる」ことを目標としますが、それには大前提が必要です。
 長所も短所もひっくるめて、相手の全人格を一つの尊いものとして〈認める〉ことなしにはこうした指導が十分にできません。
 たとえば、大きな大会に出場すると、緊張感に耐えられず失敗してしまう選手へ「お前のようなやつは当校の恥だ」と叱りつければ、長所は伸ばせません。
 選手が持つ人間としての弱さへ深い共感を覚えた上での厳しい指導であれば、目的は達せられることでしょう。
 たとえば、「お前のようにケンカばかりしている奴は、一族の恥だ」と叱りつければ、短所は克服させられません。
 すぐに手を出してしまわないではいられない性格、あるいは心の病気への深い理解があってこそ、目的は達せられます。
 子供も、選手も、部下も、まず、一人の人間として丸ごと受け容れられてこそ、心を開き、信頼し、指導に従うすなおさが出てきます。
 そうでなければ、たとえば前の例では、「どうせ、先生は、学校の名誉が欲しいだけなのさ」と下心を見透かされます。
 後の例では、「どうせ、僕は兄貴と違って厄介者でしかないのさ」とひねくれてしまうかも知れません。
 
 こうして、人を丸ごと認める優しさは理解できるのですが、本当に、「誰にでも優しくありたい」と願うならば、ハードルは極めて高くなります。
 なぜなら、落ちこぼれの子供でも、無能な部下でも、優秀な子供や有能な部下であるのと同じく接することは、決して楽でないからです。
 落ちこぼれの子供を世間様に恥ずかしいと思ったり、無能な部下を邪魔だと思ったりしてしまいがちなのが人情です。
 酷い思いや辛い思いをさせ、怒らせたり悩ませたり、苦労をかけたりする子供や部下を持って嬉しい人は一人もいません。
 だから、親も上司も本当に優しくあるためには、楽や苦労、好きや嫌い、損や得などを超えた心になるよう努力することが求められます。
 そのためには、「丸ごと、ありのままに認めないと、魂は通じ合えないのだ」と悟る必要があります。
 言い換えれば「まず、丸ごと、ありのままに認めれば、きっと〈よかれ〉と願う私の気持は通じる」と信じる必要があるのです。
 それが実践される時、親も、上司も必ず人間的に向上します。
 親の向上も、上司の向上も、子供や部下によき影響を与えないはずはありません。
 ここに、真の優しさが発露し、指導する方も指導される方も、同じ人間同として互いに霊性を高め合う可能性が大きく開けます。
 落ちこぼれの子供だからこそ、無能な部下だからこそ、親も上司も鍛えられ、向上させられるのであることを肝に銘じたいものです。

 もちろん、〈言うは易(ヤス)く、行うは難(カタ)し〉です。
 私自身、自分がろくでもない子供だったこと、手をかけさせた弟子だったことをふり返り、感謝と懺悔の思いを抱きつつ、この文章を書いています。
 師から「認めよ」との伝授をいただいてなお、充分に実践できないままにここまできたことを慚愧と思い、心の苦さと恥ずかしさに耐えてもいます。
 み仏の優しさをめざし、好きだから、嫌いだから、あるいは、相手と接して楽だから、相手と接して苦労だからという煩悩(ボンノウ)を、共に、超えてゆこうではありませんか。

 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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