コラム

 公開日: 2013-11-02  最終更新日: 2014-06-04

真智の開発をめざして(その3) ─五智の教え・教えること(その1…教育)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈ネット上からお借りして加工した橋本武先生〉

 真に優しくあるためには、「教える」ことが欠かせません。
 教えられるべき立場にある人へ教えずに優しくあることはできません。
 なぜなら、人はひとしく人という生きものとして生まれますが、人として社会生活を送るためには、人としてのありようを教えられ、育てられねばならないからです。

 狼に育てられたアマラとカマラの逸話があります。
 伝道師ジョセフ・シングがインドで発見した2人の少女は会話ができず、ほとんど野性のまま、短い生涯を終えました。
 シングは狼に育てられたと主張しましたが、研究の結果、現在では信憑性がほとんどなく、2人は深く精神を患っていたと思われます。
 それでも、放置され、誰からも言葉を教えられなければ、人は人として社会生活ができないという真実を示しています。

 私たちは、言葉を知らなくても現象界のありさまを感知しますが、それが心へ沁み入り、心の栄養となるためには言葉を要します。
 たとえば、空腹を訴えた子供が母親から何かをもらい、「ああ、おいしかった」と一息つきます。
 その時、母親がこう言葉を添えたならどうでしょうか。
「お前が今、食べたおにぎりは暖かな太陽や、きれいな水や、たくさんの人の手によって作られたお米が炊かれてできたんだよ。
 天地自然の恵みが滋養となってお前を育ててくれるんだよ。
 滋養の『滋』は草木が元気で育つという意味があり、自然には私たちを育ててくれる大きな力があるんだよ。
 お前は自分で育っているような気がしているかもしれないけれど、お前も自然の一部だから、草木のようにだんだんと育っているんだよ。
 滋養の『養』は、上が羊で、下が良いという字によってできているよ。
 牧畜が盛んな中国では昔から羊の肉が大事な食糧で、羊のおかげで人々は生活を営んできたんだよ。
 だから、おにぎりが滋養になるということは、天地自然のお恵みであるお米が、自分のいのちをお前のために差し出して、お前を養ってくれるということなんだよ。
 さっき、手を合わせて『いただきます』って言ったでしょう。
 合掌する左手は自分、右手は神様や仏様や自然といった小さな自分を超えた大きなものだよ。
 それがぴたっと一つになれば、神様や仏様や自然の力をいただいて、ちゃんと生きられる。
 本当にありがたいよね。
 それから、自然のお恵みであるお米を食べたよね。
 お米はお前のお腹に入って、お前はお恵みと一体になったんだよ。
 食べてから、また手を合わせて、今度は『ごちそうさま』って言ったでしょう。
 お米がごちそうになってお前を養ってくれたんだ。
 本当にありがたいよね。
 この感謝を忘れてはだめだよ」
 
 なかなか、ここまでは言えないかも知れませんが、「ほらっ!」のひと言だけでおにぎりを与えられた子供が、がつがつと貪ってそれっきりである場合と比べれば、子供の情操や知能の育ち方に大きな違いがあるのは明白です。
 灘中高の国語教師だった故橋本武氏は中勘助作『銀の匙(サジ)』一冊を三年間かけて読み込み、生徒たちを育てました。
 小説にでてくる言葉や場面の一つ一つを生徒へよく考えさせることによって、生徒たちの心は耕すように深く養われ、感じとり、考える自力がつきました。
 生徒たちの成績が上がったのは、あくまでも、こうした授業の結果として身についた自力によっていろいろなことがよく理解できるようになったからであり、成績を上げるための技術が功を奏したからではありません。
 そのことを橋本武氏は生前、こう言っていました。

「すぐ役立つことはすぐに役立たなくなる。
 本気でのめり込んだものは人生を豊かにする。」

 教育を通じて生徒たちへ豊かな人生をもたらしたいと願っておられた先生は、傍から見れば遠回りをしているような根気強い授業を通じて、揺るぎのない結果を出されました。
 本当に〈豊かな人生〉は、決して〈手軽に〉手に入りはしません。
 すぐにノウハウものへ走り、便利に、早く、とばかり望みがちな現代人は、ちょっと立ち止まる必要がありそうです。

 教え、導き、子供や生徒の人生を豊かなものにしてやりたいのなら、教える側がまず、学ばねばなりません。
 それは、言葉や知識や学問だけではありません。
 人として大切なことごとを、ひとりがりではなく、きちんと学んでいるかどうかが大切です。
 また、子供や生徒と共に学ぶという姿勢も重要です。
 そうした意味では、教えを受ける立場の子供や生徒は、親や先生へ学ぶ機会を与えてくれる存在でもあります。
 自分は優しくありたいと心から願うならば、教えること、教えられるような人になることをよく考えてみましょう。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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