コラム

 公開日: 2013-11-06  最終更新日: 2014-06-04

橋本武著『一生役立つ学ぶ力』を読む(その1)─すぐ役立つことは、すぐ役立たなくなる─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 9月11日、101才で逝去した元灘中高教師橋本武氏は『一生役立つ学ぶ力』を遺された。
 著者は言う。
「『銀の匙』の子どもたちをはじめとする、すべての教え子に本当に伝えたかった〝学ぶ力〟について、はじめて本格的に語り下ろしました。」
 上梓から一年を待たずして、著者はこの世での役割を終えられた。
 尊崇の念をもって、読んでみたい。

 氏は、中勘助著『銀の匙』を中学校3年の間中、じっくりと読み込む独特の指導法で、灘中高がトップクラスの学校へと飛躍するのに貢献した。
 ただし、それは結果論であり、氏は受験勉強という狭い発想での授業を行ったわけではない。
 むしろ、子供たちが学ぶ楽しさを知り、真の教養を身につけてゆく手助けをした。

「子供が遊ぶような感覚で学んでいけるよう仕向けること。」
「もちろん、『遊ぶ教育』の環境は、過程ならば親が、学校ならば教師がつくっていかなければなりません。」
「大事なのはテストの点数ではなく、日々の積み重ね。」
「すぐ役立つことは、すぐ役立たなくなる。」

 遊ぶときは夢中・無心になる。
 それは強い興味をもっているからである。
 ならば、勉強も、強い興味を抱ければ、遊ぶのと同じように夢中になれるはずである。
 だから、氏は、一冊の小説に書かれた言葉を題材として、そこから派生する無限の関心を子どもの心から引き出した。
 実際にカルタや凧揚げを行い、言葉を入り口とする生きた現実を体験させ、過ぎ去った時代への想いを導き、情操を育んだ。
 子どもたちは、遊ぶかのごとく、勉強に夢中になった。
 その結果、国語の成績がよくなり、国語の力がつけば当然、他の教科の理解力も増し、灘校は飛躍したのである。
 受験のために「すぐ役立つ」ノウハウに走らぬ授業は、子どもたちへ、広く関心を持ち根気強く学ぶという人間としての基礎力を植え付けた。
 当時の子どもたちの心には授業の足跡が確実に残り、半世紀を経てなお、師弟の交流は続いていた。

「長い間、国語教師を務めてきてはっきり言えること、それは、〝国語力〟がすべての学問の基礎になるということです。
「国語力イコール〝生活力〟なのです。
 相手のことを理解する、そして自分のことを相手に理解してもらうという人間関係の基本的、かつ、もっとも重要な場面において、国語の力や読解力はいやでも試されます。」
「私が読書を中心に据えた授業をしようと考えた理由は、何とか生徒の心に生涯残って、生きる糧となる授業がしたいという大きな願いがあったから。」
「一人の人生において体験できること、見聞きできることはおのずと限られている。
 しかし読書を通じて、そうした自分では体験できないことを知ることができるとともに、自分とは違う人間、生き方があるということも見えてくる」

 教師の現場から、国語という教科の重大さが明確に指摘されている。
 大学生になってすら中学生程度の漢字がわからず、小学生程度の文章しか書けない学生がたくさんいるという現実、若者たちの最大の悩みが意思疎通の不調などを原因とした人間関係の難しさにあるという現実を見れば、焦眉の急は国語力のアップであることが想像できる。
 国語の勉強により、読み書きの能力が上がるだけでなく、多様な人生への広く柔軟な視点が得られれば、人間関係の円滑化に役立つ。
 そもそも、邪慳な心、排他的な心、高慢な心、自己中心的な心は、他人の気持や人生へ対する想像力の欠如と密接な関係がある。
 本を読み、言葉を知り、想像力を膨らませることは、一人の人間が子どもから大人へと成長するだけでなく、社会がギスギスしたものにならないためにも不可欠である。
「自分とは違う人間、生き方がある」ことは、子どもたちへ何としても教えねばならない。
 自分が決して〈小さな王様〉ではないと、早めに知らせる必要があるのではなかろうか。
 我執を伴う邪心があまり育たぬうちに。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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