コラム

 公開日: 2013-11-07  最終更新日: 2014-06-04

橋本武著『一生役立つ学ぶ力』を読む(その2)─美人は遅れて暮れる─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 今日は「水はじめて氷る、地はじめて凍る」立冬です。
 30度を超えた夏の印象が、そして扇風機のある光景がまだ記憶からほんとんど薄れないまま、とうとう、冬支度となりました。
 故橋本武先生が100才で語り下ろした教育論を読み進めましょう。 

 氏は読書を出発点とし、次は書かせ、そして、よく考えるところまで導く。

「わからなくても読み通してさえおけば、次に細かく見ていくときに必ず役に立つ。」
「考える力を付けるためにゆっくりじっくり一冊の本を読みこむ。
 それと同時に、人の生き方、あり方の幅を知るために、まるべく多くの本を読む。
 この両輪がそろってはじめて、『真に国語力を養う読み方』と言うことになるのです。」

 文字の奧へ広がる世界を感得するためには、熟読が欠かせない。
 たとえば、「美人遅暮(ビジンチボ…美人は遅れて暮れる)」という言葉がある。
 美人は周囲の女性たちよりも長く美しさを保ち、遅れて老けるという意味だが、中国の詩人屈原(クツゲン)はこう詠んだ。

「日月は忽(コツ…たちまち)として留まらず、春と秋と、それ代わり序(ツ…続くものの糸口となる)ぎて、ああ、草木は零落(レイラク)す。
 恐ろしきは、美人の遅れて暮れんこと。」

(時はたちまちにして過ぎゆき、春がくれば秋が来て、季節はいつも続く季節の序章となり、草木は変化の中で滅んで行く。
 恐ろしいのは、心根の佳き人が雑事に気を取られ、周囲が変化しても気づかず、ずれた人になってしまうことだ)
 憂国の詩人屈原は、楚の国が滅ぶ前夜、入水した。
 この一句は、大国秦に翻弄され、権謀術数(ケンボウジュッスウ…はかりごとを巡らすこと)の戦いに乗り切れず、真情を保ったままで滅び行く人々の思いを詠んだものと思われる。
 いつの時代も、〈うまくやれない心麗しき人々〉はいる。

 一方、魯迅はこう詠んだ。

「私は、あの、去って行った、悲しいとりとめもない青春を追い求めたい。
 だがそれは身の外にでもよい。
 というのは、身の外の青春まで消えたなら、私の中の遅暮も凋(シボ)んでしまうからだ。」

 魯迅は、若い人々を眺め、自分の胸にある歳不相応な残り火を確認している。
 それができるのは、明々(アカアカ)と松明(タイマツ)を掲げる人々や、文字どおり遅春を生きている人々がいるからであって、もしも枯れ野に立つならば、残り火はたちまち消え去ってしまうことだろう。

 故橋本武先生は、還暦を過ぎてから宝塚歌劇のファンになり、「病気で見に行けなくなるまでの20年間中、月に何十回、年間150回、ほぼ2日に一度は見たという年も」あったほど熱中された。
 魯迅に相通ずる面がおありになったのだろうか。

 小椋佳氏は『しおさいの詩』にこう書いている。

「汐さいの浜の岩かげに立って
 汐さいの砂に涙を捨てて
 思いきり呼んでみたい 果てしない海へ
 消えた僕の 若い力 呼んでみたい

 青春の夢にあこがれもせずに
 青春の光を追いかけもせずに
 流れていった時よ 果てしない海へ
 消えた僕の 若い力 呼んでみたい

 恋でもいい 何でもいい
 他の全てを捨てられる 激しいものが欲しかった

 汐さいの浜の岩かげに立って
 汐さいの砂に涙を捨てて
 思いきり叫んでみたい 果てしない海へ
 消えた僕の 若い力 呼んでみたい」

 氏の青春はそもそも、残り火のようなものだったのだろうか。
 人ではなく海へ向く希求の思いは叶うのだろうか。
 それとも、氏は青春時代の〈もどかしいような飢渇感〉を失ってはいないのだろうか。
 ならば、69才の氏もまた、「遅暮」のまっただ中におられるのかも知れない。
 
 今はアンチエイジングのかけ声が昼夜を問わず鳴り響き、老いた人が若さを競い合う時代になった。
 そうであればこそ、老化の激流に逆らう「遅暮」とは何であるか、いったい何を目的として「遅暮」へ精力を注いでいるのか、立ち止まって考えてみたい。
 熟読は、明らかに、その手助けとなる。

 ただし、それだけではなく、多様な人生や万華鏡のように変化する心に想いをいたし、心を広く深いものにするための多読も欠かせない。
 深い井戸の水にも、流れる河の水にも、それぞれの味わいがあるように、熟読と多読が双方そろって初めて、読書は人生に対する真の力を発揮するのだろう。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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