コラム

 公開日: 2013-11-10  最終更新日: 2014-06-04

統合失調症の体験 ─千差万別の心象風景を生きている私たち─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



〈黎明〉

 11月6日付の朝日新聞は「統合失調症の症状知って」と題する記事を掲載した。
 大阪西区社会福祉協議会が開催した疑似体験の取材である。

 今や100人に1人が発症する統合失調症とはどういう状態なのか?

 照明を落とした部屋に20~70代の男女32人が集まった。
 精神保健福祉士の藤井健さん(43)が統合失調症の症状や治療薬などを説明する。
 すると、どこからか男性の声が聞こえてきた。
《ふふふ……ふはははっ……うーん》
《薬のんでるで》
《あかん、あかんて》
 低くつぶやくような声。
 意味の分からない会話。藤井さんの説明に集中できない。
「ラジオか何かの声がうるさい。
 止めて下さい」。
 参加者の1人が声を上げた。
「これが統合失調症の症状です」とスタッフが明かした。
 実は、げた箱の中に入れたり布をかぶせたりして隠したスピーカーが部屋の四隅に設置されていた。

 スクリーンに、えんま大王が描かれた地獄絵が映し出された。
 映像がガタガタと揺れる。
 何の意味があるのだろうと思ったら、映像がパッと替わり、現れたのは聖徳太子の肖像画。
 続いて、画面の右から石像の首が飛び出し、コロコロと転がって左へ消えた。
「24時間365日幻聴が聞こえる人もいる。
 スクリーンに映っているような映像が視界全体に広がり、幻だという自覚がない人もいる」と藤井さんは言う。

「周りの人に見えていないものも、本人には見えている。
 それを『ありえへん』と言ってしまっては人格否定につながる。
 本人にとって、信じてもらえないことはしんどい」

 参加した人々はイライラし、頭が痛くなったという。
 そして、ようやくこれが患者にとっての現実であると理解できた。
 当山にも患者さんやご家族が人生相談やご加持に来られる。
 ほとんどが、いっときの安堵でしかないが、潤いを取りもどした表情でお帰りになられると、ささやかな役割を果たさせていただいたという思いと、〈これしかできない〉自分の非力さに合掌してしまう。
 患者さんとの対応で最も大切であり、かつ、難しいのが、患者さんにとっての現実をリアルに想像し、患者さんは今、〈その中〉におられるという事実と向き合うことである。
 そこからしか、対話も、ご加持の修法も始まらない。
 きっと、そのことは、医療の現場にあっても、あるいは障害者作業所にあっても同じだろう。
 もちろん、家族や同僚にとっても。

 第三者は患者さんの五感六根が生み出す世界へは入れない。
 しかし、実は、そのことは、健常者同士にとっても同じなのである。
 私たちは決して、一つの世界を同じように見ているのではない。
 たとえ恋人と並んで富士山を眺めていたとしても、実際に見えているのは別々の富士山であり、観ることによって起こる心の動きもまた、まったく異なっている。
 自分は頂上付近へうっすらと降り積もった雪に目を奪われていても、恋人はきりりとした稜線全体に見とれているかも知れない。
 自分は恋人と富士山と一体になった幸せな気持でいても、恋人は、以前、別な相手と来た時のことを思い出し、苦い思いをしているかも知れない。
 私たちは、〈同じものを同じように見ていることにして〉日常生活を送り、会話が成立している。
 しかし、実際は、その前提は幻でしかなく、私たちは、無意識のうちに幻を共有して社会生活を営んでいる。
 共有が可能なのは、誰にも一定の想像力が備わっているからである。
 このことを認識すれば、患者さんの世界を共有することもできるはずである。
 もちろん、そこで起こっていることごとは心身へダメージを与え、他人と共有しがたく、社会生活を難しくするからこそ、病気とされるわけだが、それぞれが異なる心象風景を抱きつつ生きているという真実の範囲内であることは、健常者も患者も変わりない。

 藤井健氏の言葉は重要である。
「『ありえへん』と言ってしまっては人格否定につながる。」
 私たちは、自分が人格を否定されない環境にあって初めて安心な生活を送られる。
 だから、まっとうな人は、軽々に他人様の人格を否定したりはしない。
 ならば、患者さんに対しても同じに接して当然ではなかろうか?
「本人にとって、信じてもらえないことはしんどい」
 これは、例外なく、誰にとっても真実なのである。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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