コラム

 公開日: 2013-11-20  最終更新日: 2014-06-04

昭和初期の童話「燕と子供」を読みましょう(2)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 菊池寛編集の「日本文藝童話集(上)初級用」から『燕と子供』(作:北村寿夫)を書き出しました。
 現代文にするなど、若干、手を加えました。
 親子で読み、子供が書いた感想文を親が添削し、もう一度書かせてみるといった用い方ができそうです。
 全文を掲載しておきます。

「星をおくれ。靑い星がほしいよう!」
 燕は、思わず目をあげて深い深い夜の大空(オオゾラ)を見あげました。
 そこには、ほんとうに淸らかな淸らかな神の瞳(ヒトミ)のような、美しい星がありました。
 子供はあれをほしがっている。
 星だろうか、あれはなんという崇高(ケダカ)いものだろうか。
 燕はこう考えました。もし、寂しい子供が、ただひとりこの世から離れていくにしても、あの美しい光をもっていたら、恐らく迷い易(ヤス)い道でも、迷わずに行けるだろう。
 あの光が子供のはかないこれからの行方(ユクエ)を導いていってくれるだろう。
 おお、しかし、あの星のあるところまで、いったいどのくらい遠いのだろうか。
 もし行きついても、持って帰ることが出来るだろうか。

 燕はふと、そのとき物語――子供といっしょに聴(キ)いた子供のお母さまの尊い美しい澤山(タクサン)のお話を、思い出したのでありました。
 熱い愛のこころ、世の中にこれほど高い、これほど美しいものがどこにあるのでしょう?
 そうだ、あの物語に澤山(タクサン)出てきた勇敢(ユウカン)な人々のように。
 ――燕は心をきめると、お窓の外から子供に云いました。
「坊(ボッ)ちゃん、お待ちなさい。
 わたしは靑い星を、とってきてあげましょう。」
 燕は出来るだけ羽をひろげて、ひろい夜の大空へと飛びました。
 鳥は夜になると、それほどによく目の見えないものです。
 けれど、燕は、そんなことは考えずに、高く高く出来るだけ、高く飛びました。

 初めは、まず、冷たい電信(デンシン)の針金に頭をうちつけて、いやと云(イ)うほど痛い思いをしました。
 それから、あつい壁(カベ)のような雲に迷いこんで、いくたびも途方(トホウ)にくれました。
 しかし、どうして、この心の淸い感心な燕は心を落としましょう。
 一つの困難がやってくると、燕の心はさらに雄々(オオ)しく張りきりました。
 一つの苦しみがやってくると、燕の小さい心臓は、嵐のような烈(ハゲ)しい勇気にふくれるのです。
「星まで! 輝く緑の星のある所まで……」
 深淵(シンエン)のように靜かな夜空、はてしのない水のような夜の大空は、じっと、抱き入れるように寂(サミ)しい孤獨(コドク)の鳥をかい抱きました、
 上へ上へ、空のつきる所まで……

 夢中で飛んでいると、いつの間に、これほど高く上ったのでしょう?目をおろすと、はるかに星明かりに浮いている下界(ゲカ)の姿も、今は見えません。
 そして、目をあげてみると、まだ星は高く高く、靑白い優しい光を投げています。
「では、もう、ひと飛び……」
 燕は飛びました。
 矢のように飛びました。
 しかし、小さい翼はもう疲れきって、あまりに高い空の寒さに堪(タ)えられないほどになっていました。
 可哀想(カワイソウ)な子供のことを思い、燕は心かぎり、勇気をふるい起こしたのでした。
 でも、傷(イタ)める翼、それは遂(ツイ)に、寒く冷たく永遠に凍えてしまったのであります。

 あくる日の朝、ここのお家の人は、子供の寝ているお窓の外に、一羽の燕の動かない姿を見いだしまた。
 ちょうど、子供も靜かにこの世を去ったのでした。
 ですから、誰もその混雑(コンザツ)にとりまぎれて、屋根の上の燕のことは、ひとりとして気にかけるものもありません。
 お屋根には、何ごともなく靜かな日がさして、何ごともなく、その上に、黒い燕が横たわっておりました。
 誰が知りましょう。昨夜のことを誰が知ってましょう?

 その日の晩(バン)、人間の目にはつかない二人の天使が、ひとりは、かわいい子供を、ひとりは小さい燕の骸(ムクロ)を抱いて、ここのお屋根から天の方へ飛んでいきました。
 その途中(トチュウ)で、ひとりの天使は云(イ)いました。
「ゆうべ、あたしはこの燕を、わざと、子供のそばへ落としてやったのです。
 いじらしい燕の心……この心は神さまのいちばんおほめになる心です。
 この燕はお空へいって、花園をまもる番兵になるのです。
 あたしはこの閉じた翼を、唇であたためて抱いていってやりましょう。」
 も一人の天使も、嬉しそうにほほ笑みました。
 そして云(イ)いました。
「ええ、わたしも知っています。
 この小さい胸が、どんなに大きい尊いものを抱いていたか、天へ行ったら神様は、きっと喜んでほめてやって下さるでありましょう――」
 美しいお月夜の下を、天使たちは、靜かに靜にかに上へ昇っていきました。

 なぜ、こうした童話が子供の心を、そして大人の心をもうつのでしょうか?
 それは、損得を離れ、自分のいのちよりも尊いものにかける姿が美しいからです。
 私たちは、損得だけで生きるのが尊い生き方ではないことを知っています。
 自分のモノや自分のいのちがこの世で最も守るべきものではないことを知っています。
 しかし、大人になると常に損得勘定を先にし、言いわけをしながら自己中心で生きがちです。
 それだけに、こうした物語に接すると、子供ならずとも、心へ清風が流れこみ、心で温かなものが広がります。
 一流の童話が持つ力は偉大です。

 高橋鍵彌先生(江戸川学園取手中・高等学校校長)は、人間に必要な三つの要素である知情意(チジョウイ)について、明確に図式化されました。
「人が人間らしくあるためには、まず確固たる意志の力(C)、そして豊かな情操(B)が必要です。このBとCの部分が人格をつくります。
 知識(A)は、このB・C部分に支えられて成り立つ。
 BやCがしっかりしていなければ、Aは支えを失い、たちまち力を失ってしまうのです。」



 そして、図に従った実践によって教育の荒廃や崩壊と戦い、「日本を救う」人材の育成に全力をそそいでおられます。

 私たちが「燕と子供」に感動するのは、小さな燕が、へこたれない意志力と、我が身を忘れて人を思いやる情けにかけて行動したからです。
 その〈人格〉のすばらしさがまっすぐに伝わってくるからです。
 大人も子供も何が大切かを教えてもらえる芸術作品の力は偉大です。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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