コラム

 公開日: 2013-11-24  最終更新日: 2014-06-04

命の根・世の根

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈あの夏の日〉

 江戸中期、18世紀の全般に活躍した安藤昌益(アンドウショウエキ)に印象的な教えがあります。

○稲(イネ)は命の根

 稲を主食とする私たちにとって、稲はまさに命の根です。
 ご寄進いただいた『法楽農園』のうち田んぼ3枚で初めて稲作を行い、そのことが実感できました。
 カメムシはいましたが、農薬に頼らなくてもすくすくと育って行く稲の強さには圧倒される思いでした。
 炎天の中、午前から午後にかけて草取りをしてくださった80才過ぎの方もおられましたが、いかんせん、時期を逸したために、他のものたちは稲を追い抜く勢いで伸び、最後は「がんばれよ」と励ますしかありませんでした。
 大風などで2割以上が倒れ、残った稲をご寄進いただいたバインダーで刈り取った時、雑草の手強さを知りました。
 稲より長く伸びた雑草がからみつき、動かなくなったバインダーは5回以上、メーカーさんの修理を受けたのです。
 くい棒と竹で造った天日干しの柵は台風で倒れ、雑草も被ったままで干された稲の何割かは腐りました。
 おかげで、午前中で終わるはずのコンバインによる脱穀は夕刻までかかりました。
 それでも無農薬、無肥料という条件下、立派に米粒となった稲は、とても香ばしく、やや固めに炊いた時の味はたまりません。
 味噌汁と梅干しさえあれば、もう何もいらず、一汁一菜で人間は生きられる、つまり「稲は命の根」であると実感できました。

○米(ヨネ)は世の根
 
 昔は「米子」あるいは「よね子」さんという名の女性がたくさんおられました。
 宮城県には登米(トヨマ)市米山(ヨネヤマ)町があり、日本将棋連盟会長だった故米長(ヨネナガ)邦雄氏の名はよく知られています。
 私たちは知恵を絞り、汗を流して育てた稲から米をもらい、いのちをつなぎ、社会を営んでいます。
 山も森も川も田んぼを守り、田んぼを育て、そこで主食を得つつ生きる人々が集まって集落となり、里や村や町ができました。
 田んぼのない街には米が届けられ、日本列島は一つの文化圏として存在しています。
 
 私たちは、お金でモノが手に入るという意味では豊かになりましたが、一方で肝心なことを忘れがちにもなりました。
 買えるものが誰かの手と努力によって作られたという事実に思いをいたさなくなったのです。
 自分が稼いだお金を払い米を買って帰れば、自分の力で食事ができるとしか感じなくなってはいないでしょうか?
 米は自動的に店に並んでいると錯覚してはいないでしょうか?
 もしもお金という道具を介さず、苦労して獲った一羽の鳥と米を交換してもらったならば、自分と同じような苦労が農家にもあってこそ、今、米を手にできたのだという実感があるはずです。
 自分が「ありがとう」と言い、農家の方も「ありがとう」と言い交わせば、自然に〈お互いさま〉〈おかげさま〉の心になれたのではないでしょうか。
 お金は便利ですが、肝心な真実を観る心の眼を隠す魔ものという一面もあります。

 魔ものにやられないための方法は二つあります。

 一つは、人の世を無心に眺めることです。
 道路掃除をしているお婆さんはいませんか。
 新聞配達をしているお兄さんはいませんか。
 寒い日も工事現場で交通整理をする警備員はいませんか。
 そうした人々が皆、自分の生活を支えてくださっているのです。
 ちなみに私は、お墓ができあがる過程に関心を持ち続けています。
 土を掘る、鉄筋を組む、型枠を作りコンクリートを流す、養生シートをかける、こうした土台作りがあってこそ石が慎重に組み上げられ、美しく安定感のあるお墓ができあがります。
 過程をまったく見なかったならば、と思うと、ゾッとします。
 お墓を建てる皆さん、どうぞ、工事現場へ足をはこんでください。 

 もう一つは、想像力をはたらかせることです。
 湯気の立つ白い米粒たちを見ては、農村や農家を想い、虹のような光をチラリと放つマグロの一片を箸にしては、漁村や漁師を想うのです。
 そうすれば、自然に〈ご苦労様〉〈おかげさま〉という気持になることでしょう。
 昌益の言った「米は世の根」を忘れないはずです。

 最近、ある中国人から言われました。
「心ある中国人は日本人へ感謝しています。
 それは、日本人が中国から伝わった仏教を500年も守り発展させてくれたからです。
 今の中国政府も中国人も、毛沢東がいた乱暴な時代と違い、仏教を大切にする気持を持っています。
 かつて破壊された仏教の復活にかかわる人々の間では、仏教を守っていてくれた日本人へ感謝する人が少なくありません。
 私も日本の仏教文化へ感謝している一人です」
 実に〈文化圏〉はかけがえのないものです。
 それは、同じ文化圏で呼吸している一人一人の心によってつくられます。
 300年前に安藤昌益が指摘した「稲(イネ)は命の根」「米(ヨネ)は世の根」を忘れず、米に感謝し、お金を魔ものにさせない心で生きましょう。

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

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