コラム

 公開日: 2013-12-03  最終更新日: 2014-06-04

消えた幽霊 ─実体視のワナ─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 幽霊の逸話である。

 仲の良い夫婦がいたが、難産で母子共に亡くなった。
 妻は、悲嘆に暮れる夫の元を毎晩、訪れてくる。
 当初は喜んでいた夫も、毎夜となれば、やがて苦しさや気味悪さを感じ、成仏していないのではないかと可哀想にもなって寺を訪ねた。
 和尚はザルの豆を掴んで男に渡し、指示した。
「もし、今夜も現れたならば、豆を掴んだままで、幽霊に問いなさい。
『これは何ですか?』
 豆だと答えたならば、また、問いなさい。
『何粒あるか?』
 答えられない幽霊は消えるでしょう」
 半信半疑で帰宅した夫は夜を待った。
 そして、和尚の指示どおりにしたところ、幽霊は消えた。
 以来、幽霊は現れない。
 不思議でならない夫は和尚を訪ねた。
 和尚は微笑みながら応えた。
「幽霊は、あなたの哀れみや不安によって現れていたのです。
 あなたは、妻子の死を悲しんだだけでなく、『可哀想に、きっと浮かばれないだろう』と哀れみ、心のどこかで不安にも思っていたはずです。
 その思いが幽霊という形になりました。
 そして、今度は、幽霊を『ああ、やはりそうだ』と強く実体視しました。
 幽霊は思いを更に強め、思いと幽霊はお互いを確認し合う関係になり、あなたの夜は占領されたのです。
 幽霊はなぜ、消えたのでしょう?
 それは、あなたの心が〈知っている状態〉から〈知らない状態〉へ切り替わったからです。
 あなたは手に握っているものが豆であると知っていました。
 だから幽霊は、何か?という問いへ豆だと答えました。
 しかし、何粒か?という問いに答えられなかったのは、あなたが何粒あるかを知らなかったからです。
 この時点で、幽霊があなたの外にいるのではないことが明らかになり、外から消えたのです。
 何ごともすべては、あなたの心が生み出した心の影です。
 あなた自身がしっかりし、亡き妻へ、しっかりやっているから俺はもう大丈夫だぞ、と安心させてやることが、一番の供養なのです」

 私たちは、〈もう、ない〉と知っていながら、この世のどこにもないものの記憶に苦しめられる場合がある。
 うつ病発祥の歴史にも、猛獣などに襲われた恐怖体験の記憶が海馬(カイバ)へ溜め込まれ、猛獣はいないのに何かのきっかけで記憶と連動する扁桃体(ヘントウタイ)が強くはたらいて危険信号を発し、ストレスとしての苦しみが生まれるという段階があった。
 本来、はたらく必要のないメカニズムだけが、不要の際にもはたらいてしまうところに、心の奥深さも、錬磨の必要性もある。
 暗い道端に落ちている縄を見て「ヘビだ!」と逃げ出したり、風にサワサワと動く柳の陰の暗がりに幽霊を見て小走りに逃げるのも、そうした心のなせるわざである。

 この話の夫は、幽霊が豆粒の数を答えられない状況にあって、それは自分自身だと気づいた。
 幽霊は〈いない〉のである。
 だから、ハッとする気づきはとても大切である。
 しかし、すべては空(クウ)であるという真実を知っておくことはもっと大切である。
 直接的原因と間接的原因によってありとあらゆる現象が起こり、それらはすべて、いつ消えてもおかしくなく、また、いつも絶えず何かが新たな現象として誕生していることを肝に銘じていれば、そもそも幽霊は出ないか、出ても、ゆとりのある対応ができる。
 幽霊を実体視しないからである。
 この夫は、妻恋しさのあまり、嬉しくて〈いる〉と実体視してしまった。
 それがすべての始まりである。
 実体視しないためには、心の訓練が必要である。
 経典を学び、読誦し、写経し、祈りを持って暮らすことは実体視へ陥らないための方法の一つである。
 当山では共に学び、問題が起こった時は共に考え、祈る。
 例祭も寺子屋もご祈祷もご加持も人生相談もすべて、真実を観て真実世界に生きることをめざし、行っている。

 私たちはともすれば、幽霊に会う。
 あるいは、亡き人のいる光景に立つ。
 そんな時は、一呼吸おき、ゆとりある懐かしさで対応したいものである。 

 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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