コラム

 公開日: 2013-12-07  最終更新日: 2014-06-04

苦から離れるための道具は二つ ─他のために煩悩を脱しようと願う心─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 ダライ・ラマ法王は説かれました。

「大乗仏教や密教では、悟りの境地に達するには二つのものが必要だと考えます。
 一つは動機となる『菩提心(ボダイシン)』を持つこと。
 そしてもう一つは『空(クウ)の智慧』を持つことです。」

○菩提心

 菩提心とは「煩悩(ボンノウ)を断滅し、輪廻(リンネ)から抜け出して悟りの境地へ達したいと願う動機」です。
 自分が抱えている〈ままならなさ〉を何とかしたいと切に願い、謙虚に、思慮深く自分自身を省みる気持がなければ、自分の苦も、この世の苦も解決に向かいはしません。
 消し去られない焚き火が埋もれ火となり、常に周囲を燃やす機会をうかがっているのと同じように、苦の大元である煩悩を処置しない限りすべてはその場しのぎでしかなく、自他にまといつく四苦八苦から抜け出すことはできません。

 しかし、菩提心にはもう一つ、欠かせない要件があります。
 それは「自分だけでなく、命あるもの全てを救いたい、全ての苦を取り除きたいと思うことこそ『菩提心』なのです。」
 法王は「自分だけ救われればいい、自分だけ苦から脱出できればいいというのでは煩悩の域を出ません。」と説かれます。

 芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』はそれを明らかに示しています。
 深い地獄の底にいるカンダタは、哀れとおぼしめしたお釈迦様のお慈悲によって垂らされた糸にすがりつきます。
 お釈迦様は、かつて、カンダタが道をはっている蜘蛛を踏みつけようとし、思い直して助けたことを知っておられたのです。
 しかし、カンダタは、自分の後から無数の亡者たちが同じ糸にすがり、はい上がってくるのを見て糸が切れるのではないかと恐れ、叫びます。
「こら、罪人ども。
 この蜘蛛の糸は己(オレ)のものだぞ。
 おまえたちはいったいだれにきいて、のぼってきた。
 おりろ。
 おりろ」
 その瞬間、糸は切れました。
 カンダタはそもそも、殺人、放火まで行った大泥棒でした。
 それを忘れて、他の罪人へ「こら!」と言います。
 私たちはどうでしょう。
 自分がやってきたこと、やっていることを忘れて他を誹謗することにばかり励んではいないでしょうか?
 また、自分が手にしているものを、〈自分だけの力〉で得た〈自分だけのもの〉と勘違いし、「己(オレ)のものだぞ」と肘を張ってはいないでしょうか。
 カンダタが、「己(オレ)のものだぞ。おまえたちはいったいだれにきいて、のぼってきた。」と喚いたように。
 食べものをはじめ、ありとあらゆるものは天地自然のお恵みであり、社会からのお恵みです。
 自分自身が自然の一部であり、社会によって生かされているという真実が観えていれば、得るための自分の汗も又、〈おかげさま〉と流させていただいていることに気づくはずです。
 一年間の激闘を制し、あれだけのはたらきをしたプロ野球楽天の田中将大選手をはじめ、選手も監督も皆、ファンなどの〈おかげ〉と感謝しました。
 名医ほど、患者さんの自己快癒力を大とし、自分の力を小とする謙虚な心を持っておられるものです。
 また、カンダタが、恫喝して糸を独占しようとしたように、他を蹴落とし、得たものを自分だけのものにしようとしてはいないでしょうか。
 この心を邪慳(ジャケン)といい、慳貪(ケンドン)といいます。
 権力であれ、財力であれ、何であれ、人は持っているから偉いのでも尊いのでもなく、必要としている人々へ与え、手放すことができて初めて偉く、尊い存在になります。

「もともと『大乗(ダイジョウ)』は、他者を救うために仏陀を目指して修行する人の仏教です。」

 私たちは仏教に関心を持ち、お寺巡りをし、四国八十八霊場へでかけたりもしますが、そもそも「他者を救うため」という気持はどれだけありましょうか。
 お寺巡りをする時間やお金や体力がなくても、誰かのためになりたいと願い、自分ができることをする人は、智慧がはたらき、布施(フセ)をおこなっているので、立派な仏教行者と言えます。
 こうした智慧は、灯明のようなみ仏の智慧であり、布施は、菩薩をめざす修行の第一番目に挙げられている水のようにわけへだてなく他を潤すみ仏の心だからです。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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