コラム

 公開日: 2013-12-12  最終更新日: 2014-06-04

手を携える宗教と科学 ─ダライ・ラマ法王と茂木健一郎氏─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈十一面観音様の大笑面〉

 ダライ・ラマ法王著『傷ついた日本人へ』を読んでいます。

○科学は精神を捉えられていない

「ここまで、心をどのように整え鍛えるかについて、仏教の教えに基づいて説明してきました。
 しかし、自分は仏教徒でないから関係ない、非科学的だ、そう思われる方がいるかもしれません。」

「これほど科学が進歩した今でも、解明できないことがまだたくさんあります。
 最先端の技術や知識をもってしても、発見できない現象や説明できない現象が山のようにあるのです。」

「私たち仏教徒ははるか昔より、精神のはたらきや意識のありようを考えてきました。
 たくさんの人間がこれを研究し、議論し、実践し、少しでも真理に近づこうと多くの時間が費やされました。
 数多くの経典やテキストが書かれ、仏教徒たちがこれを日々勉強しています。
 これまでお話ししてきた空の本質や精神を高める方法も、こうしたプロセスの末にあみだされたものです。」

「この分野に関しては、たとえ最先端の科学でも、私たちほど追究や解明ができていないのではないでしょうか。
 科学者よりも仏教の学者のほうが、教えられること、知っていることが多いかもしれません。
 実際に一部の科学者たちは、仏教のことを『心の科学』と呼んでいます。」

 ご縁となった科学者の方々とお話をすると、どなたも、当山の教えや修法について非科学的であるとは言われません。
 当山もまた、科学が発見した真理や、病気の治療など問題解決の科学的方法を尊びこそすれ、宗教のみが救済の担い手だなどと思い上がりはしません。
 ある時、密教の研究会で提案しました。
「密教をめざす行者の総合的学習方法の一つへ物理学の勉強を入れてはいかがでしょうか?
 心理学の勉強も欠かせないはずです。
 これからの宗教は、科学的思考法や科学的知識もある程度、持ちながら深めてゆくべきではないでしょうか?」
 私たち行者自身が『なぜ』という根元的問いを発し、自分なりの納得と世間様に通用する説得力を得ていなければ、救いを求める方々が抱えておられる問題の本質を見極められず、確信を持った法話も修法もできません。
 そのためには知性と感性のすべてを動員し、あらゆる視点から世界を観て人の世を知り、人の心を知らねばなりません。
 現実を総合的につかまえられなければ世間様や他人様の苦のありようはわかり得ず、法話も修法も充分に役立たないのは、診察ができなければ治療ができないのと同じです。
 それに、普通の生活をしている方々は、科学的思考法に慣れ、科学的知識はたくさん持っておられても、宗教的思考法に慣れておられないのはもちろん、宗教的知識もあまり持っておられず、科学をふまえた対応は欠かせません。
 宗教者が科学を忌避したり無視したりしたままでは、社会的役割を果たしきれないのです。
 その点、宗教と科学が手を携え、私たちが苦から脱し世界の平和をめざすべきであると主張し、積極的に科学者と交わっておられるダライ・ラマ法王は、現代宗教の旗手というべきではないでしょうか。

○脳科学者たちも意識が何かわからない

 脳科学者の茂木健一郎氏は、ダライ・ラマ法王へ質問されたそうです。

「実はわれわれ脳科学者はとても大きな問題を抱えています。
 それは『意識』の問題です。
 科学者はこれを全然解明できていないんです。
 たとえば、私たちはいま光を感じたり、音を感じたり、あるいは体のだるさや疲れを感じたりしています。
 この現象を科学的に解明すると、脳内にある約百億個の神経細胞やニューロンが外部刺激に反応している、ということになるでしょう。
 でも、この解釈に従うと、いわゆる『意識』というものは存在していないことになります。
 脳のシステムは大変複雑ですが、意識はどこにも見当たらない。
 神経細胞の内部はさらにたくさんの分子で構成されていますが、この一つ一つを取り出したところで、どこにも意識は発見できないのです。」

 仏典『ミリンダ王の問い』が思い出されます。
 在家の行者であるナーガセーナ長老は、ミリンダ王との問答の中で、髪や歯や血液や脳髄など、どれもが「ナーガセーナ」そのものではないと指摘します。
 さらに、車軸や車輪や車台なども「車」そのものではないと例示し、さまざまなものが依存し合って成立する関係性のあるところにしか「ナーガセーナ」も「車」もないことを説きます。
 意識も又、同様に、五蘊(ゴウン…感受作用や認識作用など5つのはたらき)がかりそめに和合し、危うく成立しているものであることは、仏教の行者や聖者によって把握されています。

 茂木健一郎氏は続けます。

「たしかに二十一世紀は、科学の力をもって脳を全て解明できると思っていました。
 脳の分子の動きをコンピューターでシミュレーションすれば、意志や感情といった問題もすべて理解できる、そう信じられてきたのです。
 ところが現在、最先端の科学をもってしても、『意識』について全然解明できていない。
『意識を持つとはどういうことか』『意識は存在しているのか』、これをどう説明するべきか、どう調べていいのか、見当すらつかない。
 全くの無力なんです。
 科学的な見地、科学者の立場で言えば、もはや意識は『存在してはいけないもの』なのです。」

 この「意識は『存在してはいけないもの』」という部分は重要です。
 それは、科学を絶対視する方々は、〈前世〉も、〈輪廻転生する何ものか〉も、そうして『無いもの』としてきたからです。
 一方、仏教行者たちは、それらなくして自分の心も、この世も成り立たないと感じ、考え、信じてきました。
 しかし、明治以後の日本においては、学者は別として、仏教徒や仏教教団ですら、科学に傾斜しすぎる姿勢によって、こうした重要な問題と正面から向き合わないできた傾向があり、一行者としてはとても残念に思っています。

 茂木健一郎氏は続けます。

「私は北米神経科学学会に参加していますが、そこにいる三万人以上の脳科学者も、みな意識についてはうまく説明がつかないでしょう。
 とはいえ、私たち自身も『意識はある』と認識しています。
 意識については、これから一番真剣に考えなければいけないことの一つだと考えています。
 一方で仏教の方々は、長い伝統の中でずっと意識の研究を重ねています。
 そこで、仏教では意識をどのようなものと捉えているか、ぜひお伺いしたい。」

 この先にこそ、仏教の存在理由が明かされます。
 盲信や狂信ではなく、ものの道理を柱とした普遍的宗教であることが示されます。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

消えた因縁 ─心の檻(オリ)から脱した話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

「みやぎシルバーネット」20周年おめでとうございます ─無私の編集長につながる方々─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

平成28年12月の行事予定 ─護摩・書道・寺子屋・お焚きあげ─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 行事・お知らせ ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ