コラム

 公開日: 2013-12-18  最終更新日: 2014-06-04

仏教は〈信じる〉だけのものではない

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈『みやぎ四国八十八か所巡り道場』において大震災で犠牲になられた御霊をご供養するお塔婆とお地蔵様〉

 ダライ・ラマ法王著『傷ついた日本人へ』を読んでいます。

○瞑想の効果で脳細胞が変わる

「私たち仏教徒は、自分の心と対話したり、人の経験を分析したり、論理的な思考法を積み上げたり、仏教の経典と照らし合わせたりしながら、仏教という自分たちの方法で、科学者のみなさんと共に真理に迫りたいと思っています。
 これは決してどちらが正しい、どちらが優れているという問題ではありません。
 むしろ異なるアプローチを重ねあわせて、ひとつの真理を追究していくべきです。」

 こうした面において、ダライ・ラマ法王は、現代の傑出した仏教者であると考えています。
 病気や環境や福祉の問題によって、科学がようやく精神そのものへメスを入れ始めた今、道理という尺度で精神そのものと向き合い、研究し、錬磨してきた仏教にとって、科学という強力なパートナーと共に、新たな可能性を模索する姿勢を最も強く持ったリーダーだからです。
 仏教は宗教として多様な面を持っているので、教団もまた、多様です。
「~だけを拝みなさい」と信じる力を伸ばそうとするタイプや、「~だけを唱えなさい」「~だけを読みなさい」と読誦する力を伸ばそうとするタイプや、心を分析と集中に向けて意識をコントロールしようとするタイプなど、方法はさまざまに主張されています。
 しかし、道理と思いやりを二本柱とする仏教は、道理という尺度をもって科学や芸術などと通じ合える客観的視点と、決して排斥という方法を用いない包容性を失ってはなりません。
 この仏教が仏教たる根本原理に立ち、科学者との真剣な対話と研究を自分の信者だけでなく、広く公開しているという点においても希有の存在と言えるのではないでしょうか。
 少なくとも仏教の聖職者は、すべからく、こうした姿勢に学び、精神がより精緻な道理と深い思いやりをもってはたらくよう、柔軟性をもって信仰を深めるべきであると信じています。
 
 ダライ・ラマ法王は、25年間も世界中の科学者たちと研究を続けてこられました。

「特に物理学的な分野や生物学的な分野の中には、われわれがアプローチできない事実が多くあります。
 進歩や発達も早く、新しい発見が多いのでとても楽しみにしています。」

 お大師様はかつて、綜藝種智院(シュゲイシュチイン)という文字どおり開かれた総合大学を創られました。
 その理想です。
 北尾克三郎氏の現代語訳を「エンサイクロメディア空海」(http://www.mikkyo21f.gr.jp/)より転載します。

「『儒教』(人としての徳性と、家族と社会における人間関係の教え)、『仏教』(人はなぜ生きるのかと、人々の幸福に奉仕するための諸行為の実践の教え)、『道教』(自然の道理にしたがって生きると身体と精神の教え)の三教科を兼ねそなえて学べる総合学院にしたいと願っていた。」

「わたくしは校名を考え、『綜藝種智院(しゅげいしゅちいん)』と命名した。
(この意味は、この学園でもろもろの学問を総合的に学ぶ機会を得た若者たちが、自らの教養の畑を耕し、そこに知恵の種を蒔き、その種がよく耕やかされた土壌によって、りっぱな芽を出すことを願っての名である)」

「過去においても、現在にあっても、未来にわたっても、知恵のある仏教者は世間のあらゆる学芸を学びそれらを修得するとともに、仏教の教えによって慈悲のこころによる他者への施しを自覚し、その屈託のない行動力と学芸による人文・自然の(今日でいう科学)技術を用いて、善導のための各種施設を築き、土木・治水事業を行ない、田畑の恵みのために気象をとらえ、医療と福祉により人々を救い、その言葉と声により人々を癒し、言語力により異国の文化を導入し、論理力によりまちがった考えを論破する。」

「『論語』にいう、『人はおもいやりの美風のあるところに住むべきであり、わざわざそうでないところを選んで住むことは、賢い人のすることではない』と。
 また同じ書に、『人はおもいやりのあるところに住み、よき人間関係を築き、さらにすぐれた人格を形成し、学問に励まなければならない』と。
『大日経』では、『仏教者として人々を導く師になるには、まず、あらゆる学問と芸術を学び、その知識を高めるべきである』と。
『十地論』では、『知恵のはたらきを実践する者は、まず、五明のあらゆる学芸を学び、それらの真理に通じていなければならない』と説いている。
 だから、善財童子(ぜんざいどうじ)は、真理を求め、南インドの百十の都市を巡り歩き、教師となる五十三人の人々を訪ねて教えを乞い、常諦菩薩(じょうたいぼさつ)は、一つの都市の中で人々のおもいやりに助けられ、その慈悲の施しに常に涙しながら真理の道を求めつづけたという。」

 要は、心の探求者であり、精神的救済をその存在理由とする宗教者には、世界と人間をより深く知ることが欠かせないのです。
 全人格を捧げて役立とうとするのが菩薩(ボサツ)への道です。

 ダライ・ラマ法王へ戻ります。

「最近では科学者の中にも、仏教に興味を抱く方が増えてきました。
 みなさんは、仏教が精神や感情をどのように解釈しているか、熱心に尋ねてこられます。」

「仏教の力を、科学によって裏付ける研究も行われています。」

 ダライ・ラマ法王は、注意力や集中力や脳の柔軟性が上がったという科学者の研究結果を紹介されました。
 瞑想によって脳細胞に変化が生じたというデータすらあります。

「たしかに心を穏やかに保つことは、肉体の健康にも大きく作用します。
 ストレスなどマイナスの感情は、心身のバランスを崩し、様々な病気の原因にもなっているからです。
 うつ病や高血圧などは、この代表と言えるでしょう。
 こうした意味でも、仏教が続けてきた心のコントロールには効果があると言えるでしょう。」

「また、スターフォード大学やウィスコンシン大学などでは、仏教の教えそのものを実践すると、感情や心情にどのような結果が出るかを研究しているそうです。
 これには破壊的な衝動を持つ者への対策や、倫理観の高い人間の育成法など、具体的な目標があるとも聞いています。」

 ヨーロッパやアメリカにおける仏教の研究は、日本の比ではないと言われています。
 最近のアンケートによると、最も大切なものの第一位は、日本人もアメリカ人も、家族と子供ですが、第二位は日本人はお金、アメリカ人は宗教でした。
 アメリカは、国の成り立ちからして宗教的意識が強い国民性であり、よきにつけ悪しきにつけ宗教が持つ力を実感しているからこそ、仏教の研究にも熱心なのでしょう。
 ただし、日本人の場合は、仏教と神道が個別の信仰というよりは言葉や習俗や生活そのものとして日常生活へ溶け込んでいる面が強いので、特定の宗教について云々という感覚が薄いのではないでしょうか。
 いずれにせよ、仏教的な思考法や心の傾向が「破壊的な衝動」とは正反対であり、客観的に通用する「倫理観」を高めることは確かです。
 医学や社会学や環境学やなどによって、仏教がよく研究されるよう願ってやみません。

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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