コラム

 公開日: 2013-12-24  最終更新日: 2014-06-04

狼の声そろふなり雪のくれ ─新年を迎える時間の境目で─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈「ウサギ野仙哉」君〉

 松尾芭蕉の門人内藤丈草の一句である。

「狼の声そろふなり雪のくれ」

 一読して何の変哲もないが、「ウワーオー」と鳴くオオカミの遠吠えが重なり重なりして、降りしきる雪の向こうから凩(コガラシ)のように聞こえる薄暮を想像すると、穏やかではいられなくなる。

 そもそも、狼の遠吠えは、気まぐれでやっているのではない。
 いなくなった仲間へ必死に呼びかけているのである。
 ドクター・サイモン・タウンゼント(チューリッヒ大学)の説である。

「元の群れに戻そうとするのは当然であるが、仲間との友情が絡むときも同じ現象が起こる。」
「『群れ』というコミュニティーを形成して暮らしているオオカミには、人間と同じような感情があり、社会的、社交的要素を持っている。」

 ホリー・ルート・ガターリッジ(トレント大学)も、狼の情緒を指摘する。

「オオカミは愛する仲間がいなくなり、一緒にいたいと思うから、遠吠えという行為を選んでいる。」
「自ら判断して、複雑な社会的相互関係を考慮し、相手を思う気持ち (尊敬や愛情) が遠吠えという行動に変わっているということなのかもしれない。」

 遠吠えに喪った者の悲しみが感じられるのはそのためなのだろうか。
 喪うとは、単にいなくなっただけでなく、〈世界から失われてしまった〉という根元的な無に立ち会うことであり、足元に不安が兆し、とどめられなくなるできごとである。

 こうした遠吠えが重なり合って一つになった時、雪に閉ざされた一軒の家の中にいる者はどうなるか?
 尾張犬山藩士の身分から出家し、俳人となった内藤丈草ならば、備えの心をあらたにしたかも知れない。
 狼は、状況次第で人間や家畜を襲ってくる自然界の脅威に数えられていたからである。

 ただし、問題は、「そろふ」と詠んだところにある。
 切実さで親近感を覚え、ケダモノの気配で恐怖を覚えるだけでなく、幾匹もの声が揃うことによって抗いようのない異次元の不気味さが生じている。
 それは鬼神が厳寒の吹雪をも、ものともせず、まっすぐに狼煙を上げているようなものではないか。
 内藤丈草の心中に、警戒だけではなく、畏怖も宿ったであろうことは容易に想像できる。

 そもそも、あまりにも揃った状態には不気味さが漂う。
 制服に包まれ姿勢を緊張させた何千人もの視線がまっすぐに金正日へ注がれている大会堂の光景は、血の通った人間が集まっているという気配を感じさせない。。
 左右非対称になっている人間の顔写真を真ん中から切り、反転させた片方と貼り合わせてできた写真は、いのちある人間のものとは思えない異様さを醸し出す。

 雪の舞う「くれ」は、「暮れどき」であり、「年の暮れ」でもありそうだ。
 新しい年を迎える時間の境目は、一瞬、非日常的世界へ通じる。
 そこを縁として、ご先祖様方の御霊だけでなく、招かれざる異界のものたちも訪れる虞(オソレ)がある。
 溜め放し、後回しにしてきた懸案を片付け、家も身体も心も清浄にし、畏(カシコ)む姿勢で新年の訪れを期待するのが、私たちの自然な心性である。
 もちろん、「去年(コゾ)今年貫く棒の如(ゴト)きもの」と詠んだ高浜虚子の例はあるが、それはそれである。
 新年の神聖な扉が開く時を、慎んで待ちたい。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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