コラム

 公開日: 2013-12-31  最終更新日: 2014-06-04

ありますよ 秘密の一つは お墓まで ─『シルバー川柳 第三弾 一期一会編』─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 12月30日、地方紙「みやぎシルバーネット」が、『シルバー川柳 第三弾 一期一会編』を発行されました。
 編集発行人の千葉雅俊氏は、高齢者向けフリーペーパーに毎月寄せられる1000句近い作品を読み込み、「十八年分の膨大な入選作を読み返して埋もれた名句を見つけ出し、本の熟成度を高め」ようとしておられます。
 数句を抜き出してみました。
 年末に肩の力を少々、抜いてみましょう。

「お婆さん 振り向かれたら お爺さん」

 最初、何のことかわからず、三度目でようやく、ああそうかと理解できました。
 老いるとは、種を保存する役割を終え、性が抜けて行くことでもあります。
 言葉にくくれば「寂しさ」や「安心」となりましょうが、まつわる思いには際限がありません。

「絵手紙を 描く手震える 老いの恋」

 64歳の女性が詠まれました。
 性は残り火となり、残照ともなって、老いの世界を彩ります。
 生きてこそ観られる世界です。

「財産は 年金だけよ 死なないで」

 文字どおり、互いが杖となって生き延びる日々です。
 文字面は現実的な打算ですが、心には無限の感謝や思いやりや祈りや叫びがあります。
 こうして伴侶を送り切られた方々の清らかな涙と、やり抜かれた達成感がもたらす神々しさの前では、いつも、黙って頭を垂れるしかありません。

「惚けじゃない 老にもあるの 反抗期」

 自覚しておられるご本人の心に何があろうと、目をかけ、手をかける周囲の人々の心には〈丸ごと認める〉優しさがあることでしょう。
「あるの」と言い切ってしまうところに、たやすくは崩れ去らない人間の強さも、切なさもあります。
 私には、可愛さまで感じられてしまうのですが。

「ありますよ 秘密の一つは お墓まで」

 いつだったか、たまたま目にした昼間のテレビで、レポーターがお婆さん(74歳)へ「ご主人に何か、言えない秘密がありますか?」と訊ねたところ、お婆さんは破顔一笑、答えられました。
「おほほ、そりゃありますよ!そもそも結婚した時、わたしゃ、バージンでは。おほほ」
 ここで突然、横にいたご主人(68歳)が笑いながら、「ばーか」と言わんばかりに平手で上から奥さんの頭を叩き、連れ去りました。
 若い頃は悩みであり、苦でもあった秘密が、老いによって潤いとなり、笑いともなる人生とは、生きてみなければわからないものです。

「夫婦仲 残る不満は 時効とす」

 別々な人生を歩んできた男女が共に暮らせば、互いに「こんなはずではなかった」となり、不満のないケースは希でありましょう。
 しかし、いかなる形であろうと、相手の存在そのものが自分の存在と切って切り離せないところまで来てみると、そして、自分が相手にとってどうだったのかを客観的にふり返られるところまで来てみると、不思議や不思議、不満や文句は限りなく意識から遠のき、すべては感謝に包まれます。
 だから、最期は「ありがとう」となるのです。

「妻が留守 納豆たまご カップ麺」

 多くの男性はこうなるか、こうなっても仕方がないと思っていることでしょう。
 私の場合も、妻が入院中は、本や新聞に囲まれた一枚の布団の上で〈生活〉していました。
 生きて行くという根っこのところで工夫する意志や能力が、男性は薄いのではないかと実感しています。

「初恋の 人と出会った 墓石ツアー」

 なんともはや、と言うしかありません。
 モジモジしようと、ガッカリしようと、もう〈ここまで来てしまった〉のです。
 事実から余韻の生まれるところに、人間と他の生きものとの決定的な違いがあるのではないかと思わされます。

「段差ない ところで転ぶ 人生譜」

 肉体が衰え、つまらないきっかけて転びやすくなり、初めて転ぶという実感を得ます。
 ここで〈そう言えば……〉とふり返ったところに、この句がただ「うまく作られた」だけではない深さを生んでいます。
 転び、呻き、歯を食いしばって立ち上がり、生きてきてみれば、あれほどの大ごとだった蹉跌も、さしたることのない〈段差〉でしかなかったと感じられるとは……。

「我が家には 姿の見えない 方もいる」

 こうして「姿の見えない方々」と住む人の生活にも、お人柄にもきっと、ある種のゆかしさが伴っていることでしょう。
 すべての人は見えない世界からやってきた旅人であり、そこへ還って行く宿命にあります。
 見えない世界を大切にする方は、その故郷の気配がある分、存在が平板的でなく、しっとりしておられるものです。

「妻の通夜 数珠や喪服が 見つからず」

 かつて、托鉢の日々を送っていた頃、お婆さんが玄関へ出てこられると話になるのに、お爺さんが出て来られると「婆さんがいなくてわからないから……」と断られるケースが多いことがなかなか理解できず、〈男は何てだらしなくなるんだ、情けない〉くらいにしか思えませんでした。
 しかし、もうすぐ70歳になるところまで来てみると、着替えのありかを知らないだけでなく、寺務所にあるはずの事務用品がどこにあるかわからず、大騒ぎするようになりました。
 でもきっと、男は昔からこうだったのだろうし、未来もあまり変わらないのではないでしょうか。

「幸せな 時が続いて いる怖さ」

 91歳の男性が詠まれました。
 この怖さが何であるかはよくわかりませんが、失う恐怖感でないことだけは確かでしょう。
 どこかに畏れ多いといった感覚がおありではないかと感じるのですが……。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

消えた因縁 ─心の檻(オリ)から脱した話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

「みやぎシルバーネット」20周年おめでとうございます ─無私の編集長につながる方々─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

平成28年12月の行事予定 ─護摩・書道・寺子屋・お焚きあげ─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 行事・お知らせ ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ