コラム

 公開日: 2014-01-04  最終更新日: 2014-06-04

仕事とは「事(コト)に仕(ツカ)える」こと ─勝手?滅私?─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈「みやぎ四国八十八か所巡り道場」にて〉



〈お仕えする方々〉

 去年は、仕事に関する人生相談が多く、また、仕事についての感激や失敗や落胆などのできごともたくさん見聞きしたので、仕事始めになるこの時期に、仕事ついて考えてみましょう。

 仕事の第一義は、生きるための手段ではなく、ましてやお金儲けの同義語などでもありません。
 仕事は「事(コト)」に「仕(ツカ)える」と書きます。
 では、事とは何か?

 生きている限り、事は無限に続きます。
 時間は、事の連続です。
 では、その中の何が事か?

 この面で、大いなる勘違いがまかり通っているように思われてなりません。
 子供たちは、自分の未来へどういったイメージを持っているでしょうか?
 自分の〈好きなこと〉をやって生きたいと思ってはいないでしょうか?
 大人たちは、「一生懸命に打ち込める好きなことを探しなさい」と教えはしないでしょうか?

 確かに、野球の選手になりたい、のも、介護士さんになりたい、のも、〈好きなこと〉を選んでいる状態です。
 では、なぜ、そうなりたいのか?
 言い換えれば、なぜ、選手も、介護士さんも、子供たちの目に輝いて見えるのか?

 それは、観客に感動を与え、介護の必要な人から感謝されているからです。
 選手も介護士さんも、自分のパワーだけで輝いているのではありません。
 パワーを受けた人々からやってくる感動や感謝のパワーをも鏡のように受け、反射させているからです。
 その証拠に、彼らは必ず「ありがとうございます」という心を持ち、そう、口にもします。
 観客を楽しませ、救いを求めている人の杖になっていながら、相手のためにはたらく人がなぜ、自分からありがとうと言うのか?
 それは、相手からもらうありがとうの心が、選手や介護士のパワーとなっており、そのことによくよく気づいているからに他なりません。
 このように、はたらき、人間として本当に輝いている人は謙虚です。
 高慢な人は、決して「あの人のようになりたい」とは思われません。
 いかに有名であろうと、いかに実績を積もうと、いかにお金を貯めようと尊敬されず、理想のモデルにはなり得ません。
 これまで何度も言及したとおり、『仕事の流儀』(日経BP社発行)を書いた高任和夫氏によれば、インタビューした一流の仕事師たちは例外なく、謙虚さと志を持っていたそうです。

 では、なぜ、彼らは相手からありがとうと言われるのか?
 なぜ、ありがとうの心をもらい続けられるのか?
 それは、信頼されているからです。
 信頼なしにありがとうが続くことはあり得ません。
 その証拠に、イチローは、たとえ三振しても「次はきっと打ってくれるだろう」と期待され、田中将大投手は、「きっとまた、勝ってくれるだろう」と期待されます。
 この「信頼を得る」ところにこそ、真に「事(コト)に仕(ツカ)える」姿があります。
 信頼は、「事(コト)に仕(ツカ)える」真剣さが生むのです。

 ここまで来れば、野球の選手や介護士さんの〈好き〉が、〈好き勝手〉ではないという事実が明らかになります。
 イチロー選手は、いつも、数字に表れる実績は結果であり、選手としての目標はチームの勝利と優勝であると言い、決してぶれません。
 むしろ、〈勝手〉の反対である〈滅私〉へ近づく過程にこそ、信頼は積まれてゆきます。
 
 このように、周囲から信頼という宝ものを与えられるほど、我を忘れて真剣に集中できる対象、それが〈事〉ではないでしょうか。
 その〈事〉に仕えてこそ、仕事をやっていると言えるのです。
 だから、お給料をもらったり、儲けたりする行為だけが仕事ではありません。
 家事も、育児もすべて、心がけ一つで本当の〈事〉たり得るのです。

 さて、〈仕〉もまた、〈勝手〉の反対である〈滅私〉を含んでいます。
 仕という字の成り立ちからすると、そもそもは、天子や君主の命によって従うことを「仕える」と言います。
 つまり、自分よりも尊いもののために自分を投げ出す〈滅私〉がなければなりません。
 たとえば僧侶は、み仏と仏法へお仕えする者を指します。
 自分のためにみ仏や仏法を利用するなどということはあり得ません。
 だからこそ、み仏と仏法と仕える行者のためにできることを行おうとする尊い心を持った在家の方々をも含めて「僧宝(ソウボウ)」と呼ばれます。

 だから、「好き勝手をやって生きる」というイメージの先には、自分をかける仕事が待ってはいません。
 いくら探しても、不満と挫折の連続になることでしょう。
 反対に、「誰かの何かのためになりながら生きる」というイメージの先にこそ、自分をかける仕事が待っています。
 抜きん出た才能があるごくごく一部の選ばれた人にしかイチローのような栄光は待っていませんが、人間として仕事に邁進し、信頼を得つつ生きる道は、万人に開かれています。
 根本的な問題は、好きなことを見つけようとするのではなく、ことに応じ、時に応じて役割を果たせる人間になれるかどうかにかかっています。
 そうした人間には、ありとあらゆることが〈事〉となり、それを行えばすべてが仕事としての輝きを持つことでしょう。
 その人の黙々と行う徳の輝きは周囲の人々へ届き、ありがとうの心がもたらされ、徳はますます輝きを増すことでしょう。

 心から〈仕事〉を求めるのなら、好き勝手をやって生きようとする考えを捨てましょう。
 社会の中で生きている今の自分に必ず与えられている〈事〉を見つけ、邁進しましょう。
 見つけるには、「誰かの何かのためになりながら生きる」心になること、たったそれだけです。
 誰かに心からありがとうを言う言葉の布施(フセ)行も、その一つ、嫌な作業や辛い役割を黙ってこなす忍辱(ニンニク)行も、その一つなのです。
 きっと、その先に、本当にやりたいことと、やるべきことが一致する仕事の妙味を感じられる時期が訪れることでしょう。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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