コラム

 公開日: 2014-01-07  最終更新日: 2014-06-04

四苦八苦を生きて ─高校卒業後の半世紀─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 昨年、酸素吸入器を着けつつ集中治療室から生還されたAさんが、「紅白しだれ桃の木 平泉寺」と題する版画の年賀状をくださった。
 涙が出るほど、嬉しかった。
 Aさんは精魂込めた作品をお送りくださった。
 Bさんも、Cさんも、Dさんも……。
 そうした方々に対して私はたった一行である。
 詫びつつ、仏神のご加護を祈り、書く。
 あまりに粗末ではあるが、何とか松の内に届くよう努力する。
 大変、申しわけないけれど、もう私には、いただいた年賀状にお返事を書くことしかできない。
 年賀状による心の便りは、一年に一度、一年間続く安心を与えてくれる宝ものである。

 さて、高校で同期だった仲間が文集を作ることになった。
 半世紀をふり返ってみた。
 以下、駄文である。
 なお、四苦八苦とは、以下のとおりである。

・生苦(ショウク)…生まれ、生むことに関する苦、ままならなさ。
・老苦(ロウク)…老いに関する苦、ままならなさ。
・病苦(ビョウク)…病気に関する苦、ままならなさ。
・死苦(シク)…死に関する苦、ままならなさ。
・愛別離苦(アイベツリク)…愛しいものとの分かれに関する苦、ままならなさ。
・怨憎会苦(オンゾウエク)…怨み憎むものとの出会いに関する苦、ままならなさ。
・求不得苦(グフトクク)…求めても得られない苦、ままならなさ。
・五蘊盛苦(ゴウンジョウク)…生きて、感じ、想うはたらき全般に関する苦、ままならなさ。

 仙台二高を卒業して半世紀経ったとはとても実感できない。
 しかし事実として、肉体は老いさらばえた。
 どう繕おうが実態は無惨である。
 精神はどうか?
 物忘れをするようになり、計算能力は落ち、意識のはたらきと言葉を発することが〈即〉とつながらず会話に躓く。

 一方で、あの頃はまったく想像すら出来なかった人間の宿命について些か、わかってきたことは確かである。
 何よりも意識の落差が大きいのは「老い」についてである。
 いかに小説を読もうが映画を見ようがお年寄りと話をしようが、老いによる生命力の全般的な減衰はまったくと言っていいほど想像も感得もし得なかった。
 また「病気」についても然りである。
 風邪をひいたり盲腸がやられたりはしても、当時における病気は治ってあたりまえの一時的災厄でしかなかった。
 自分の死への一里塚であるという意味での病苦など、どこにもなかった。
 また、愛するものとの永久の別れや、憎悪せずにいられない相手との巡り会いなど、自分の非力がまったく役立たぬ現実に打ちのめされ心身が立てなくなる体験もまだ、乏しかった。
 たとえ豊かではなくても、砂漠で乾いた喉が水を欲して得られぬような、あるいは、不治の病気に罹り子供の成人までいのちが保たぬような求不得苦(グフトクク)は知らなかった。
 もちろん生まれる苦は、妻や子の出産においてやきもきする程度しか、未だにわからない。
 そして、肉体や現象界、感受作用、想起作用、意志作用、自分という意識、それぞれが盛んにはたらき、コントロールしかねるがゆえの苦があるなど、思いもよらなかった。
 二千万人いる各種依存症は、この五蘊盛苦(ゴウンジョウク)が行きついた姿である。

 我が身の体験として、あるいは家族や他人様に起こったできごととして徐々に四苦八苦を知った。
 ここまで生きてきてようやく宿命を観たような気がする。

 最近、独り暮らしのAさんが家の中で転び、腰を痛めて動けず救急車も呼べないので、飼い犬に付き添われたままじっと二時間過ごした体験をお聞かせいただいた。
 それは大変だったでしょうと言葉をかけたところ、「住職さんにはおわかりにならない」と言われた。
 娘にいかなる時も携帯電話を離さぬよう厳命されている私には、手さえ動かせない状況を想像してみても現実性がない。
 だから、早朝の本堂でやってみた。
 微動だにせず厳寒の中で過ごしたのは僅か三十分。
 それはまるで永遠のように長い時間だった。
 いつまでそうした状況が続くかわからないAさんにとっての二時間は文字どおりの永遠であり、死へつながる可能性も考えさせる心細く怖ろしい時間だったことだろう。
 やがて私へも訪れる死苦はいかなる相貌をとって顕れるのか?

 半世紀かけて、釈尊の説かれた四苦八苦を教えられつつ生きてきたが、この道は死ぬまで、更には来世まで続く。
 転生(テンショウ)のおりには、中森明菜の「恋も二度目なら」ではないが、自他のため、「少しは上手に」対処ができるようになっていたいものだと願っている。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。A

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