コラム

 公開日: 2014-01-09  最終更新日: 2014-06-04

喫茶店の上質な孤独 ─落合恵子氏と『さぼうる』に想う─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈一曲目の「イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド」が上質な孤独への誘いとしては打って付け 〉

 1月7日付の河北新報は、落合恵子氏の『香りと上質な孤独 堪能』を掲載した。
 神田神保町にある喫茶店『さぼうる』の紹介記事である。

 同店は今年、開店から60周年を迎える。

「神保町という地名を唇にのせただけで、わたしの心は酸っぱい懐かしさでいっぱいになる。
 四十数年前に学生時代を過ごしたのがこの街であり、酸っぱさはわが青春を象徴する味である。
 一杯のコーヒーで数時間粘った喫茶店。
 水ばかりお代わりをしていた。
 古書店でようやく見つけた一冊の本を抱えて飛び込むのも喫茶店。
 もちろん『ドトール』も『スターバックス』もなかった。
 愛唱歌は、抗いを歌った海の向こうのフォークソング。
 J・Dサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』が翻訳刊行されて、わたしたちのバイブルになった頃のことである。」

 私も神田の古書店には通ったが、喫茶店で過ごす習慣はなかった。
 買ったならアパートへ帰り、寝るまで読むだけのことだ。
 会話をするのは「早稲田大学国策研究会」の同志のみ。
 そしてほとんど酒になる。
 もちろん、「海の向こうのフォークソング」を口にする漢(オトコ)は誰もいない。

「それよりもさらに10年前から『さぼうる』はここでこうして店を開いていた。
 れんがと木でつくった山小屋風の内装も当時と変わっていない。
 座り心地のいい椅子はどれほど多くの人々の疲れた身体と心を休ませてきたことだろう。
 どれほど多くの会話と沈黙、時にため息をこのテーブルは聞いてきたことだろう。」

 喫茶店は確かに「疲れた身体と心を休ませ」る機能を果たすのだろう。
 だから、そうして休みたいと思わぬ私のような人間には、縁がなかった。

 店主の鈴木文雄氏(80歳)は言う。

「どうにかやっているうちは、道は自然と開けるものです。」
「60年間、ほんとうにいい夢を見させてもらってきた。」

 落合恵子氏は、こうしめくくる。

「いやいや、『いい夢』を見させてもらってきたのは、わたしたちの方である。
 今度は、古書店を廻った後、香り高いコーヒーと上質な孤独の時空を味わうことにしよう。」

 たった一言「上質な孤独」で、落合恵子氏と私の距離は一気に縮まった。
 今、私が年に数度、喫茶店のドアを開けるのは、まさにこれを求めるからである。
 出張してたまたま、時間があき、近くに期待を持たせる喫茶店があれば嬉しいが、もちろん、そんな僥倖(ギョウコウ)はほとんどない。
 駅前にある『ドトール』や『スターバックス』は利用する目的が違う。
 コーヒーとトーストを注文するのは空腹を満たすためであり、いらっしゃいませを言われた瞬間から、客は、後からやってくる客の邪魔にならぬよう飲食後は早々に立ち去ることを求められている。
 もちろん、決して「早く帰ってください」とは言われないが、ドアを開けた瞬間に感じる空間の時間的リズムがそうなっているのだから仕方がない。
 それは、回転率が死命を制する空間だからである。
 そこには〈個〉として放り出されている無機質な孤独はあっても、それをしみじみと確認することが何ごとかであるような「上質な孤独」はない。

 では、何が上質さをもたらすのか。
 一つは、時間を占有できる贅沢さである。
 帰れと求められないから、沈潜できる。
 もう一つは、干渉しないが不満も与えないという究極のもてなしである。
 独善的でうるさい店主も、気配りが薄い粗雑な店主も落第だ。
 だから、上質な喫茶店は成り立たなくなった。

 しかし、このあたりにはまだ、そうした「上質な孤独」で時間を過ごせる喫茶店がある。
 大和町宮床の『モカモアコーヒー』と、大崎市岩出山の『英国茶房森栖(モリス)』がお勧め。
 前者の定休日は水・木曜(祝日は営業)、後者の定休日は月・火曜。
 ただし、「法楽寺のブログを読んで来たよ!」と報告しても、何かサービスしてもらえるかどうかは保証できない……。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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