コラム

 公開日: 2014-01-13  最終更新日: 2014-06-04

人形が道案内となるこの世とあの世の風遊び ─傀儡(クグツ)師奥山恵介氏のこと─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



〈以下の二枚共々、『風の旅人』からお借りして加工しました〉





 いまだに傀儡(クグツ)師はいる。
 傀儡は「かいらい」とも読み、繰り人形のことである。
 だから、「かいらい政権」などとは言うが、誰も「傀儡政権」とは書かない。
 当用漢字の呪縛により、文化からほとんど追い出されたに等しいこうした漢字はもはや、大多数の人々に読まれなくなり、本来、そう書かれねば表現され得ない肝腎の内容物は、深い湖のような忘却の彼方へと押しやられてしまった。

 傀は、字通(ジツウ)によると「人に鬼が憑依(ヒョウイ)する状態」である。
 儡は、やぶれ、つかれ、おちぶれ、そして、うれい、おちつかぬ様子である。
 この文字が重なって操り人形となっている。

 さて、東日本大震災があった年の6月、『風の旅人』へ写真家内山英明氏の「傀儡師」が掲載され、〈あやし〉の世界に出入りする稀人(マレビト)同様の芸術家奥山恵介氏について知った。
 以来、越中八尾における「風の盆」へ対する憧れに似た感情を抱いてきた。
 彼岸へ向かう魂の道案内をする羽首(ハクビ)人形などにつかの間、現世(ウツシヨ)を離れさせてもらう時間を夢見ていたが、どうも叶いそうになく、書き記すことにした。

 奥山恵介氏の人形作りは徹底している。
 以下、内山英明氏の文である。

「彼の人形作りは独特で、人形に魂を吹きこむため顔を作る卵の殻に経文を張り、その上に粘土を指で塗り重ねて表情を作っていった。
 顔の裏の目に見えない場所にも朱色の塗料を刷毛で丹念に塗ってゆく。
 これは魔除けのためであった。
 それらの所作は、印や呪文を唱えて仏の加護を祈る、あの密教の加持祈祷に少し通じるものがあった。
 人形の体の骨格造りにも独自な工夫が凝らしてあった。」
 
『雨月物語』においても経文は力を持っていたし、当山の加持祈祷においても紙で人形(ヒトガタ)を作り、法をかける。
 身代わりの人形には悪業を吸い取り浄化する役割がある。
 形に精神を映し込めば、何ごとかになる。
 原因のあるところに必ず結果は伴う。

 たびたび、人形の館に泊まらせてもらった氏は、金縛りに遭う。

「体中の気の流れが突然止まり固まったような、あの譬えようのない息苦しい恐怖を今でもまざまざと思い出す。
 私を感化させた、これらの闇を養分として育った、カリスマ的なエネルギーに満ちた人形(ヒトガタ)とはいったいどのようにして生まれたのか。」

 人形というモノと、傀儡師との濃密な交感が重ねられた〝場〟に、エネルギーのないはずはない。
 
 そして、舞う現場である。

「人々の多様な心の深層と記憶に深く入りこみながら、さまざまにくねる人形たちの自在な肢体(カラダ)に限りない愛おしさを私は覚える。
 それは彼の人形のもつ大きな特質でもあった。
 この乱調をひめた人形たちがいったん宙を舞うと、そのもう一つの精霊としての真の姿が顕わになる。」

 形ある人形は、形のない精霊と一体である。
 それは、魂入れの修法を行い、善男善女に拝まれているご本尊様が只のモノでないのと同じであり、お位牌が御霊の依り代となるのと同じである。
 
 奥山恵介氏は、日本古来の『白塗り』を継承する化粧師でもある。
 舞妓さんなどが塗るあの『水化粧』の白さは、み仏の世界に通じる。
 氏は修業時代、「白の世界をより白く見せることの難しさ」がわかり、「〝白〟のイメージを自分のものにしたい」がゆえに人形という形を求めたという。

 奥山恵介氏の言葉である。

「魂の世界に遊べば現実(ウツツ)はこの世のものならぬばかりに際立って見える。
 現実の陰画と申してよい人形(ヒトガタ)を作っている私は人形に魂を抜きとられてきた。
 そのつど私のなかに業が重なり積もった。
 そんな自分の救済を願う心がいつしか人形と同行して、一寺一寺に業をほどき魂を結びながら八十八ヶ所を廻る遍路へと出立したらしい……それは新しく私の誕生をねがう一輪の花を育む魂遊びでもある。」

 こうして氏は遍路となった。

 内山英明氏は記事を結ぶ。

「彼はずっと糸繰りを基本にして人形を作ってきた。 
 チベット密教の世界では糸は風の象徴であり、肉体は糸でつながっているという。
 それを知ったとき、それにふさわしい人形を作り、そして〝風の舞い〟を見せればいいんだと思ったという。
 彼の繰る人形の舞いを見ていると、正に今ここに在る世界にも息吹を与えてくれる創造的で根元的なエネルギーを膚で感じる。
 自然と神々と人間を結ぶ糸という架け橋を通して、見る者の心と体を一陣の風のように癒してくれる。
 私にはこの目にうつるすべての世界が、新しくそして懐かしかった。」

 当山には、お大師様と結ばれる糸がある。
 四国遍路の途中で、糸を手に大師堂で祈った際、確かな〝風〟を感じ、一山を開基したなら必ずこうした祈りの糸を用意しようと決心し、叶った。
 法がかかり、祈りの込められた糸は不思議な風を伴っているのである。



「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。


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