コラム

 公開日: 2014-01-19  最終更新日: 2014-06-04

過去にあったものしか作れない創作者 ─家具職人増野繁治氏との対話─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈『法楽の会』会員の皆様及び、護摩木へ願いをかけられる方々のおかげで、睦月の例祭は無事、終了しました〉

「私は、過去にあったものを作っているだけです」
「制作を申し込まれる方は最初、自分で求めているものの姿を想像できません。
 そこで、作品にして『こうでしょう』とお示しすると、『これが欲しかったんです』ということになります」

 ギョロリとした目で話す家具職人増野繁治氏(『木香舎』主宰)から意外な話を聴いた。
 氏は、新しいものを創ってやろうなどという気はさらさらない。
 過去にあったものだから、〈自然とそのように作られる〉のだと言う。

 氏は平成14年、林野庁より「森の名手・名人100人」に選ばれ、宮城県芸術協会会員、宮城県デザイン交流協議会会員でもあり、東京南青山根津美術館などから作品を求められている名手である。
 それでいて、「独創」といった思考は持っていない。

「どんなに新しそうな形でも、必ず、過去のどこかにあったものです。
 私はそれを引き出して形にしているだけです」

 たとえばお客様がテーブルを求められた場合、その方の言葉を聴き、目を見ているうちに、テーブルの形が脳裏に顕れる。
 その時点で、ほとんどのお客様はもちろん、設計図を持っていたりはしない。
 しかし、氏は、「お客様はわかっている」と言う。
 その証拠に、作品を届けると、お客様は「これが欲しかったんです」と懐かしさめいた感慨をもって喜ぶ。
 決して、今までになかったものを手にしたから感激するわけではない。
 
 氏は慎重に言葉を選ぶ。
 新しいものづくりを標榜したり、新しさを競ったりする人々へ対して、勉強不足だとか、謙虚でない、などと軽々に批判はしない。
 氏は、過去のどこからか受け継いだものがあるから、それに導かれて作っているとしか言わない。
 また、見たことも考えたこともないものが出る夢に強い関心を持っている。
 そして斬新かつ独創的な超一流の作品が生まれる。

 私はユングの「原型」と密教の「伝識」を思い出した。
 人間の共有する根元的イメージが、いつからか、表面的には意識されない深い意識の世界でずっと伝えられている。
 何かのきっかけで、ある時はそれが夢に現れ、またある時は現実の世界にあるものへ対して強い関心を引き起こし、創造的行動につながったりもする。
 氏はそうした世界でお客様と向き合い、共有している世界から共有しているものを選び出す。
 だから、氏にとっては「過去にあったもの」であり、お客様にとっては「欲しかった懐かしいもの」として作品ができあがるのだろう。

 当山は仏教以外の宗教を信じておられる方々からご葬儀を申し込まれるケースが少なくない。
 A氏は敬虔な宗教者であり、信心を固く保っておられたが、あるできごとをきっかけにして、ご自身の死後を当山へ託された。
 お子さんもまた親と同じ信者だが、親子揃っての願いとして、A氏のご葬儀は当山が行った。
 斎場で火葬炉の蓋が閉まり、控え室へ向かうお子さんから涙を含んだ笑顔で告げられた。
「父の『ありがとう』という声が聞こえたような気がしました。
 ご住職さんの気合(引導を渡す瞬間に発する)がとても好きだった父はきっと、本望だったのでしょう」

 これほど力をいただいたことはない。
 当山のたどたどしい歩みへのありがたい肯定もさることながら、宗教宗派を超えた次元に広がるいわば〈霊性の根元〉といった清浄で揺るぎない世界が共有できた、できる、ということを再確認できたからである。
 いかなる神を信じていようが、いかなる仏を信じていようが、あるいは信じていまいが、〈霊性の根元〉を共有しているという真実を感得し、そのことが認識し合えれば、この世の不毛の対立や争いや殺し合いを克服できるのではなかろうか。

 増野繁治氏の仕事ぶりと、ご葬儀を通じて、私たちが救済される可能性を持っているという事実はより、明確になった。
 人間が共有する霊性へ蓋をしたり汚したりする自己中心的で我欲にまみれたことごとにばかり身体と言葉と心を用いず、あらゆるものをきっかけに霊性を開きたい。 
 平成15年、増野繁治氏は宮城県環境生活部自然保護課が発行するメールマガジン『みやぎの自然』へ書いた。
「自然の美しさやありがたさと文化の関係に気付かない人は、いくら技術があっても感動の名作が作れない」
 自然は、霊性を開かせるありがたい〈きっかけ〉に満ちている。
 そこには神々も、ご先祖様方も、守本尊様方もおられる。
 神仏を尊び、自然を尊び、人間同士の信頼を尊びつつ進みたい。 

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

消えた因縁 ─心の檻(オリ)から脱した話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

「みやぎシルバーネット」20周年おめでとうございます ─無私の編集長につながる方々─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

平成28年12月の行事予定 ─護摩・書道・寺子屋・お焚きあげ─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 行事・お知らせ ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ