コラム

 公開日: 2014-01-24  最終更新日: 2014-06-04

人間が起こしたことは人間が解決できる ─諦めず、規律を守り、希望へと向かう道─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 ダライ・ラマ法王の『傷ついた日本人へ』を読んでいます。

○人間が起こしたことは人間が解決できる

「それでも、自分たちの行いを見つめ直し、よい方向へと自分を奮い立たせていく。
 それこそが大事なことなのです。
 どれほど苦しいことが起きても、どれほど困難な問題が起きても、人間はきっと乗り越えられる。
 私はそう強く信じています。
 なぜなら、人間に降りかかる物事の元をたどれば、ほとんどの原因は自分たちで生み出したものだからです。
 人間が生み出したものが因となり、廻りめぐって果となり、そしてまた人間を苦しめているだけなのです。」

「自分たちが生み出した問題だからこそ、それを解決できるのも人間です。
 私たちはそれを解決できる力を既に持っている。
 もう私やあなたの手の中にもあるのです。」

 因と縁と果の糸をすべて結ぶことができない私たちは、これが因だからこの果が出た、と必ずしも論理的に納得できないものごとに囲まれ、不条理感を持ちつつ生きています。
 たとえば、勤勉で善意にあふれた人々の手を経て児童たちへ届けられたおいしい給食にノロウィルスが混じっているケースを考えてみましょう。
 児童たちの空腹を楽しく嬉しく満たし、成長させる養分となりますが、ノロウィルスは、誰一人、五官で察知できません。
 そして、異常を訴える児童が現れてウィルスが発見され、感染経路がたどられた結果、誰一人意図せず、しかもほとんど不可抗力的にウィルスが入り込んでいたというケースは珍しくありません。
 誰かが何かを行ったからこそ、結果が出ているのは確かですが、私たちは、同様な因果関係が再び起こらないよう努力することのみであり、その努力がすぐ、完璧に実るとは限りません。
 それでも私たちは因果を判断し、因果律を信じ、努力します。
 誰しもが望まないことを〈すぐに〉なくせなくても諦めず、起こる確率を下げつつ生き、誰しもが望むことを〈すぐに〉達成できなくても諦めず、実現する確率を上げつつ生き、向上の歴史を編み続けます。
 ダライ・ラマ法王の「解決できる力を既に持っている」とはこのことです。
 
「たとえば、日本で過去に起こった困難を思い浮かべてください。
 第二次大戦では空襲で街が次々と焼け野原になり、ついには原爆まで落とされました。
 大都市が一日にして完全に破壊されてしまうという、それはとてつもない悲劇でした。
 しかしながら、日本はその絶望の淵から立ち上がりました。
 焦土の灰から新しい国家を再び築き上げたのです。
 今の発展したこの日本は、決して、空から降ってきたものではありません。
 当時の日本人が決してくじけず、本当に勤勉に働き一生懸命努力したからこそ成し遂げられた結果です。」

「こうして復活を遂げた日本の皆さんですから、今回も同じように復興を遂げ、さらによい国づくりをなさる力がある、そう私は信じています。
 かつての戦争を知らない若い方には特にそれを信じて欲しい。
 かねてより、日本人は大変勤勉な国民性と強い精神力を持っているのです。」

 1月8日、ミランへの入団会見に臨んだ本田圭佑選手はイタリア人記者から「サムライスピリットとはどういうものか」と訊かれ、「サムライには会ったことがない」として軽妙に受け流した後で慎重に言葉を選び、答えました。
「日本人は決して諦めない。
 規律を守る。
 自分にもそういう部分があると思う。
 そうした精神をピッチで見せたい」
 深く碧い湖のような静けさを漂わせた闘士の姿はきっと、イタリアの人々に〈サムライ〉を感じさせたことでしょう。
 テレビで観た私は、よくぞ言ってくれたと心中で合掌しました。
 これこそが、ダライ・ラマ法王の指摘「かねてより、日本人は大変勤勉な国民性と強い精神力を持っている」そのものだからです。

「震災を元に戻すことはできません。
 悲しいことですが、すでに起きてしまったことです。
 もちろん震災に限らず、みなさんの周りにはたくさんの苦難や困難があふれているでしょう。
 でも、その事実に悲しんだり起こったりし続けるのではなく、この苦難を必ず乗り越えようという意志に変えていってください。
 そしてその決意や自信をもって苦難に立ち向かってください。
 その姿勢によって現実的なビジョンを見通すことができ、問題解決の糸口にたどりつけるでしょう。」

 仏教の目的は、意欲を〈煩悩(ボンノウ)の我欲(ガヨク)〉から、〈菩薩(ボサツ)の大欲(タイヨク)〉へと転換させることにあります。
 迷った意識をみ仏の智慧へ転ずるのが修行であり、それを転識得智(テンジキトクチ)といいます。
 お大師様は説かれました。
「因位(インニ)には識と名づけ、果位(カイ)には智という」
 凡夫の意識があればこそ、菩薩の智慧がもたらされます。
 そのことは「迷いの苦しみが救いの安心へ転換するお話http://hourakuji.blog115.fc2.com/blog-entry-3016.html」へ書きました。
 ダライ・ラマ法王の「この苦難を必ず乗り越えようという意志に変えて」という過程は、呻きから意欲への転換であり、そこが私たちの出発点ではないでしょうか。

「また、一生懸命努力して再び立ち上がることができたならば、それはみなさんの強い自信になるはずです。
 人はよき方向、正しい理由に基づいて行動しているときに強い信念を持つことができます。
 これは悪い行いをしているときには決して生まれないものです。
 そうして、日本が国家としてよりよく、より強くなったとき、同時に日本のみなさん一人一人の心も前より正しく強くなっているはずです。」

 私たちは半世紀前、すでに首都の焼け野原から、原爆の惨禍から「立ち上がることができた」のです。
 私たちは「決してあきらめない。規律を守る」人々です。
 必ず、信念を持って行動し、「再び」よき未来を拓けるはずです。

○これからも日本のみなさんと

「日本を初めて訪れてから四十年あまり。
 最近では毎年のように日本を訪問させていただいています。
 特に今回は、高野山という神聖な場所で講演ができたことを大変光栄に思っています。
 ここで長らく弘法大師の教えを守り、受け継ぎ、そして実践してこられたみなさんには、改めて深い敬意を持ちました。
 また行く先々で多くの僧侶や仏教徒のみなさんにお眼にかかりましたことも、心に残ることの一つです。
 ここには三十年前に一度来たことがあったのですが、これほど長く滞在し、集中的に講演を行うことは初めてでした。
 講演の間には、高野山真言宗の松永管長に連れられて奥の院にお参りをすることもでき、いい思い出となりました。」

「また、日本で公演を行うたびに、日本のみなさんとの間に友情や信頼関係が生まれるのを感じています。
 今回も一つ一つの講演時間はそんなに長くありませんでしたが、共に笑い合ったり色々な問題を考えたりしながら同じ時間を共有すると、それだけで友情のようなものが芽生えるのを感じました。
 もちろん私はチベット人、みなさんは日本人という違いはあります。
 それぞれ社会的背景や歴史は大きく違うものです。
 でも私は一人の人間としてみなさんに会うことに決めています。
 一番大事なことは、人と人があたたかく交われるかどうか、優しい心と親しみを持てるかどうかだからです。
 地球全体からみれば、同じ人間同士というのはもはや兄弟のようなものでしょう。
 本物の家族のように心を開き、何でも語り合い、本当の信頼関係を築いていきたいと思っています。
 私たちはこの惑星に一時的に滞在しているに過ぎません。
 ここにいるのはせいぜい九十年か百年のことでしょう。
 その短い時間に何かよいこと、役に立つことをして他の人々の幸福に寄与できたなら、それが人生の意味であり、本当のゴールだといえます。
 今回の講演が、みなさんにとって生きる意味を見つめ直すきっかけとなり、『心の平和』を築く手立てになったらと願っています。」

 ダライ・ラマ法王が説く「何かよいこと、役に立つことをして他の人々の幸福に寄与できたなら、それが人生の意味であり、本当のゴール」は『大日経』の「百字偈(ゲ)」という五箇条にあります。

・他への思いやりを忘れず、自分だけの安楽に憩わない
・智慧と適切な手立てによって自他共に煩悩から解き放つ
・地獄などへも行きかねない自他の意欲を正しく制御する
・蓮華のような人間本来の清らかさに生きて他を利する
・大欲は清らか、大安楽は豊かであり、自在に他を利する

 人類共通の大切なこと。
「一番大事なことは、人と人があたたかく交われるかどうか、優しい心と親しみを持てるかどうか」
 人生の目的。
「他の人々の幸福に寄与」
 この二つを忘れず、諦めず、規律を守り、確かな足どりを進めようではありませんか。
 同時に、チベット人が100万人も殺され、今も弾圧へ抗議する僧侶などの焼身自殺が相次いでいる現実を〈他人ごと〉とせず、地上から消し去られようとしている仏教の兄弟国チベットへ手を差し伸べようではありませんか。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

消えた因縁 ─心の檻(オリ)から脱した話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

「みやぎシルバーネット」20周年おめでとうございます ─無私の編集長につながる方々─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ