コラム

 公開日: 2014-02-08  最終更新日: 2014-06-04

なぜ可愛さ余って憎さ百倍となるか ─仏性の力で憎悪を霧消させよう─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈早朝、玄関前で餌を探す小鳥〉

 なぜ、あれほど愛していたのに、これほど憎むようになるのか?
 深く持続する憎しみが起こると、憎まれ、攻撃される側が苦しむだけでなく、憎しみを持つ本人がよりいっそう、苦しむようになります。
 憎しみは三重の執着心が原因となっています。

1 自分への執着心

 相手から自分の思い通りに〈愛されない自分〉に我慢がならないのです。
 愛されようが愛されまいが、相手からやってくるものはすべて相手の側に属しているので、相手からの愛も憎悪も相手の側にある感情です。
 しかし、それを思うがままにコントロールしたいと思うのは、自分勝手というしかりません。
 もちろん、〈愛されるに足る自分〉になろうと努力するのは自分の側の問題なので、せいいっぱいやればよろしい。
 しかし、その結果、思惑通りに相手の心が動くかどうかは、自分の問題ではありません。
 だから、愛されればそれを喜べばよいし、無視されたり嫌われたりすれば、自分のどこが問題だったのかを考え、体験を今後の糧とすればよいだけのことです。
 自分の生き方は自分の問題、相手がどう反応するかは相手の問題です。
 それをごちゃませにして、期待通りの反応をしてくれないからと相手へ憎悪を持つのは、自分可愛さの独り相撲でしかありません。

2 相手への執着心

 愛している相手のために何もかも捧げられると思っている自分の心をチェックしてみましょう。
 本当にそうか?
 相手が自分の思い通りになっている間だけの独り善がりではないのか?
 相手への執着心は、自分の思い通りに応えてくれている間は愛となり、応えてくれなくなれば憎悪となります。
 いずれも、〈手放したくない〉心が主人公です。
 その証拠に、きれいさっぱり別れてしまえば、あれほどの熱愛も、あれほど真っ黒な憎悪の炎も、消えてゆきます。
 手放せばもはや、それまでなのです。
 手放したくないから、手放せないから、愛し、憎むだけのことです。
 この面で美しいのは渥美清演ずるフーテンの寅さんでした。
 心から「いいな」と憧れていても、執着せず、ただ、相手が幸せであれば嬉しい。
 実は少し淋しく、少しは悲しいけれど……。
 執着心の薄い独り相撲に彩られた寅さんの人生は、なかなかそうはできないけれど、心の底ではそうあるのもいいな、と気づいている私たちの心を清める秋風のような味わいを持っていました。



〈松井冬子氏『九想図』〉

3 憎悪への執着心 

 これは難敵です。
 憎悪のエネルギーが生きる力となり、生活の柱にまでなってしまう場合があります。
 まず自己愛から苦しみが始まり、相手への執着心が愛から憎悪へと変質し、やがては、相手がどうであれ、強い憎しみを感じて手紙を書いたりすることそのものが日々の〈生〉を支える最も大きな力になってしまう場合があります。
 たとえ10年前のできごとであろうと思い出すたびに新鮮で、あたかも昨日受けた仕打ちであるかのごとく憎悪という炎の薪となり、薪も炎も燃え尽きはしません。
 こうなると、精神に異常を来すところまで行くか、あるいは、とんでもない暴発をもたらすか、わからないのでとても危険です。

 さて、どうするか。

 まず、自分への執着心は慢心になっているので、自分の姿を省みて未熟さを確認し、慢心という名の勘違いを離れるのが最も大切です。
 もしも〈いい男〉と自負しているなら〈頭の中身〉はどうか?
 もしも〈お金持ち〉なら、〈品格〉はどうか?
 もしも〈秀才〉なら、〈思いやり〉はどうか?
 チェックポイントは無限にあります。
 いくつかまじめにやってみれば、きっと、もうごめんだと嫌になることでしょう。
 いくら考えても自分は完璧としか思えないならば、その方はもう、挫折か災厄というとてつもない爆弾を抱えた状態であると覚悟すべきです。

 相手への執着心については、古来受け継がれてきた対処法があります。
 画家松井冬子氏の『浄相の持続』を観れば一目瞭然です。
 いかなる美貌の持ち主であれ、一瞬後にいのちを落として何の不思議もなく、そうなれば、モノとして崩れ、腐敗し、やがては塵になってしまうしかありません。
 仏教では、その経過をたどる『九想図』を眺めて『九想観』という瞑想を行い、空(クウ)を悟る修行としてきました。
 チベット密教にある言葉です。

「骸骨ばかり見て、墓場を厭わしく思うなら、動く骸骨でいっぱいの街という墓場を、いったいどうして好むのか」

 とは言え、なかなかそうは思えないのが実情です。
 ならば、煩悶が起こった時、相手を一瞬でも〈モノ〉として眺める、あるいは相手の〈パーツ〉を特定して眺めるという視点を持ってみてはいかがでしょうか。
 正統な方法としては当然、般若心経などをきちんと学び、空(クウ)を正しく理解、納得することをお勧めします。

 三番目に陥った時は厄介です。
 憎悪に生きる本人には、自分で運命を転化させる力がないかも知れません。
 状況を理解し、かつ、悶着に直接関係のない方が、何かのきっかけを与えるよう、根気強く支えることです。
 あるいは、そうした幻にすがってなどいられないような生活環境の変化や、我が身に圧倒的な関心を持たざるを得ないような大病などが転換をもたらすかも知れません。
 憎悪の対象となっている方は、なるべく相手の土俵に乗らないようにしましょう。
 思いやりは保っても、道理をふまえたやりとりによる解決をはかろうと無理をしないことです。
 自分自身に憎悪や怒りを決して発生させないよう気をつけながら、時間の経過を待つしかありません。
 もちろん、いかなる場合でも、好転を願う祈りは不要ではありません。



 最後に『ダライ・ラマ 怒りを消す』より、法王の教えを記しておきます。

「意識は意識から生ずる、つまり意識とは生じては滅する瞬間瞬間の意識のつながりなのです。」

「意識のあるところ、無知や怒りも自ずと生じます。
 ネガティブな感情(煩悩)はポジティブな感情と同様に無始の過去より存在しているのです。」

「ネガティブな感情は実際のところ、無知から生まれており、しかるべき根拠をもっていません。
 ネガティブな感情がいかに協力であろうと、正統な根拠をもっていないのです。
 逆に慈悲や智慧といったポジティブな感情は正統な根拠をもっています。
 理にかなった、論理的な根拠のあるものです。」

「仏性はポジティブでもネガティブなものでもなく、ニュートラルです。
 ですからこうしたネガティブな感情をすべて取り除く、浄化することもできるのです。」

 般若心経や理趣経(リシュキョウ)百字偈(ゲ)などによって仏性の力を解き放てば、憎悪は本来の幻として消えて行くことでしょう。



 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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