コラム

 公開日: 2014-02-14  最終更新日: 2014-06-04

自殺(自死)という極限的行為 ─「ダライ・ラマ『死の謎』を説く」を読む(4)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 平成6年、ジャーナリスト大谷幸三氏は、インドのダラムサラにおいて、ダライ・ラマ法王への質問を数日間かけて行い、回答をまとめた。
 それがテキスト「ダライ・ラマ『死の謎』を説く」である。

3 自殺と殺人(その1)

○人はなぜ、自殺をするのか

「死を恐れつつも人は自殺を遂げることがある。
 ふつうの人間にとって、死が何よりも恐ろしいものであることはよくわかる。
 では、いったいどうして人は死の恐怖を超えて自らの命を断つことができるのか。」

 最近、自殺を自死と言い換えるようになった。
 確かに、人間の尊厳を考えて「殺」の文字を避け、ご遺族や関係者の気持も忖度(ソンタク)すれば、一理ある。
 また、「自らを殺す」のなら「人を殺す」「殺人」と同じく「殺自」となるべきだが、「自らが(自らを)殺す」「自殺」となっている以上、それは「自ら死ぬ」ことと同意であり、「自死」として違和感のあるものではない。

 ただし、考えておきたい点はある。
 かつて、牛の脳や脊髄などを原料とした餌による狂牛病(キョウギュウビョウ)がイギリスなどで蔓延し、世界的大問題となった。
 狂ったような牛の姿は、草食動物である牛へ動物を与えるという暴挙、それも、同類を食べさせてまで早く成長させようとする現代文明への鋭い警鐘だった。
 この牛海綿状脳症(BSE)は、いつからか「狂牛病」ではなく「BSE」と表記されるようになり、私たちは言葉から実態や実像を想像しにくくなった。
 人間のしわざによって苦しむ牛を憐れみ、畜産家の心情をおもんばかってのことと推測するが、言い換えによって現実へ薄膜がかけられた場合、それは誰がいかなる目的で行っているかとチェックする注意深さを失いたくないものである。
 為政者や、情報を飯の種にしている人々にとって都合の悪いものが、国民から見えにくくされる場合がないとは言い切れない。

 さて、自死という言葉は極めて適切と考えるが、ここでは、平成6年に発売されたテキストのまま、自殺という記述にしておきたい。

「もし、あなたが、自分の人生を心底から耐え難いと思うようになったとしよう。
 その感情がいかに募ろうとも、死への恐れは厳然として存在する。
 だが、耐え難いと思う心の動きが、ときには死の恐怖を凌駕(リョウガ)しうるということだ。
 そういう瞬間があるということだ。
 そのとき、人は自殺する。」

「その瞬間においては、人としての自然の感情は、もちろん、死を恐れている。
 しかし、それにもかかわらず、その恐怖を圧するだけの力が人をして死を選ばせる。」

 私は自分自身が一歩手前まで行った体験を持ち、身近な人々が同じく一歩手前から引き返したり、引き返せなかったりする姿を見てきた。
 身近な人に行かれてしまい、残された方々とも数多く接している。
 ほとんどの方々が、事実を前にして動機には思い当たっても、実行してしまった〈その時〉の気持のほどはわからない。
 だから、答のない「──なぜ?」が必ず生じる。
 なぜ踏み切ったのか?
 法王が言われる「その恐怖を圧するだけの力」は、当人にしかわからないのだろう。
 わからないけれど、わからないでは済まされない気持が、「なぜ」を繰り返させる。

○感情の暴発は、恐怖心をも打ち負かす

「人が自殺という手段に訴える事実に関して、仏教的な観点に立って考えてみよう。
 人がこのような決断を下す理由は、唯一つの事柄によるわけではない。」

「仮にわれわれが《心》というとき、そこには何千もの心の動きがあり、思いがあり、思惟がある。
 一つの心の中で、ある考え方は他の考え方と相矛盾し、互いに打ち消し合うこともあるだろうし、ある考え方はひじょうに含蓄(ガンチク)に富み、思慮深く理性豊かである場合もあるだろう。
 なぜなら、それらはすべて感情のなせるわざだからである。」

「たとえば、慈悲心や愛情といったものは、愛すべき対象へのよき感情の発露である。
 親密なる他者へのすばらしい働きかけである。」

「一方、憎しみはどうか。
 人を憎む心は否定的な感情だろう。
 愛と憎しみ、これらは相対立する感情である。
 互いに矛盾する心の動きである。
 しかしながら、こうした対立する感情でさえ、一つの心の中に同時に両立することがある。」

「たとえば、あなたが誰かにたいへん親密な感情を抱いているとしよう。
 その誰かを愛していると。
 すばらしき友であり、愛すべき相手であると。
 そうした善き感情が厳然として存在するにもかかわらず、ときに、何らかの事件なり、悪いしらせなりが、あなたと相手との関係に大きな影響を与えることがあるだろう。
 極端な場合には、その愛する相手自身があなたをひじょうに立腹させることもありえるわけである。」

「そんなとき、愛情や親密感、友情などが依然としてそこにあるにもかかわらず、悪しき感情、憎しみの感情が、あなたの心の中を支配してしまう。
 怒りや憎しみが、愛情や親しみに打ち克つ状態を作り出す。」

 法王は、愛情と憎悪というまったく反する感情すらも一人の心の中に共存し得るのであり、どちらがより強くはたらくかによって、行為という一つの結果が生じると説かれた。

「さて、話を自殺に戻すとしよう。
 死への恐れ、恐怖は依然としてある。
 にもかかわらず、それと対立し矛盾する心の衝動が生じ、それが恐れを凌駕(リョウガ)する瞬間が、人が自ら命を断つときなのだろう。
 恐怖といえども、感情の爆発によって打ち負かされることがあるということだ。」

 死への恐れと、死を求める気持という相反するものが共存する中で〈その時〉が来てしまう。
 逝ってしまった友人たちを思い出すと、笑顔しか浮かんでこない。
 吉田松陰は処刑される場所へ悠然と足を運び、役人へご苦労様と声をかけて端座したというが、まだ、それほどの胆力は持ち合わせていなかったであろう彼らは、やはり「感情の爆発」に遭ったのか……。
 心にあるさまざまな渦を整理し、対応し切れなかったのか……。
 浮かぶ笑顔によって思い出す私が救われるように、彼らも向こうで救われていて欲しいと願い、祈るしかない。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。!==㲮

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